設計思想
「X」の年に生まれた開かれたスケルトン
2019年1月のSIHHで、ユリス・ナルダンは「X」を冠した2本の新作を同時に発表した。フリークの普及版であるフリークXと、本機を含むスケルトンXである。当時のブランドは、パトリック・プルニエCEOの下で製品構成の見直しと若い世代への訴求を進めており、スケルトンXはその戦略を体現する1本だった。
出発点は2016年のエグゼクティブ スケルトン トゥールビヨン(Ref. 1713-139)にある。角張ったケースと大胆な開放骨格で注目を集めた同作から、トゥールビヨンを省き、ケースを再設計したのがスケルトンXだ。トゥールビヨンを外したことで構成は簡潔になり、スケルトン トゥールビヨンで示した意匠を、より幅広いラインへ展開できるようになった。複雑機構を外しながら、開かれた構造美という核は手放さない。この引き算が本機の本質である。
UN-171からUN-371へ
搭載するCal.UN-371は、スケルトン トゥールビヨンのUN-171を基に全面的に再設計された手巻きムーブメントである。大きな見どころは、2018年のフリーク ヴィジョンで開発された超軽量シリシウム製テン輪の採用だ。ニッケル製フライウェイトと安定化マイクロブレードを備えた大径テンプが、文字盤6時側で大きく振れる。輪列のミニッツギアトレインにもシリシウムを用い、パワーリザーブは96時間に達する。残量表示は表ではなく、シースルーバックの香箱窓から読み取る設計とした。手巻きを選んだことでローターが存在せず、骨格は裏側まで遮るものなく見渡せる。
チタン×ブルーという基準点
発表時のラインアップは、チタン×ブルー、チタン×ブラックDLC、ローズゴールド、カーボニウム・ゴールドの4仕様。本Refはこのうちチタン×ブルーのラバーストラップ仕様であり、アリゲーターストラップの3713-260/03と並行して展開された。海洋とともに歩んだブランドの象徴色である青をまとい、軽いチタンケースとラバーストラップで日常の装着を想定した本機は、スケルトンXの事実上の基準点といえる。
派生と再編
2019年6月にはカーボンと赤い樹脂を積層した43mmのスケルトンX マグマが加わり、同年11月にはチャリティオークションOnly Watch向けのユニークピース、エキソスケルトンXが製作された。2021年にはダイヤモンド装飾のスケルトンX スパークリングも登場する。2020年にブランドが新コレクション「ブラスト」を立ち上げて以降、カタログは再編され、本機は公式サイト上「ブラスト スケルトン X」としてブラストファミリーの中で扱われている。
意匠分析
スケルトンXのケースは、先代スケルトン トゥールビヨンの45mmから42mmへと縮小された。単なる小型化ではなく、直線基調だった輪郭は丸みを帯び、リューズとそのガードはケースに溶け込むよう一体化され、ラグは先細りの形状に改められた。サテン仕上げのチタンは軽く、左側面には個体番号を刻んだプレートが付く。これはユリス・ナルダンの伝統的な意匠である。本RefではベゼルリングのみブルーPVD処理とし、グレーのチタン地に細い青の輪郭線を与えている。
文字盤側の構造は入れ子の幾何学で組まれる。円形の開口部の中に長方形のフレームが浮かび、その四隅から伸びる4本のインデックスがXの字を描く。3時と9時にはローマ数字のIIIとIXだけが残され、外周のミニッツトラックが時刻の読み取りを支える。配色はブルーとグレーの2色に統制され、針とインデックスにはスーパールミノバが施される。スケルトンの弱点である視認性を、色数の抑制と夜光で補う構成だ。
ムーブメントの見せ方も本機固有である。輪列は縦方向に整列し、それを保持するブリッジがX型に展開する。直角を多用した機械の造形は伝統的なスケルトンの曲線装飾とは対極にあり、設計図をそのまま立体化したような印象を与える。50m防水は、開放的な構造を持つ時計としては日常使用に十分な水準といえる。ストラップはケースと同色系のブルーラバーで、チタン製ピンバックルで留める。アリゲーター仕様の3713-260/03に対し、ラバーを選んだ本Refはスポーティな性格をより明確にしている。
系譜と歴史
2019年1月、ジュネーブで開催されたSIHH 2019において、スケルトンXは発表された。当初のラインアップはチタン×ブルー、チタン×ブラックDLC、ローズゴールド、カーボニウム・ゴールドの4仕様で、エグゼクティブ コレクションの一員として展開された。本Ref 3713-260-3/03はチタン×ブルーのラバーストラップ仕様であり、アリゲーターストラップの3713-260/03が姉妹仕様として併売された。
同年6月には、カーボンファイバーと赤いエポキシ樹脂を積層した43mmケースのスケルトンX マグマが追加された。同年11月9日には、筋ジストロフィー研究を支援するチャリティオークションOnly Watch 2019に、ユニークピースのエキソスケルトンXが出品されている。
2020年、ブランドは新コレクション「ブラスト」を発表した。これに伴うカタログ再編により、スケルトンXは公式サイト上で「ブラスト スケルトン X」としてブラストファミリーの枠内に位置づけられるようになった。WatchBaseなどのデータベースでは、発表時の分類であるエグゼクティブ系統のまま登録されている。
2021年2月には、ベゼルとインデックスにダイヤモンドをあしらったスケルトンX スパークリングがチタン(3713-260B/00)とピンクゴールド(3716-260B/02)の2仕様で追加された。本Refは仕様変更を受けないまま販売が続けられ、2026年6月現在も公式サイトに掲載される現行モデルである。
出典
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