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TUDOR · SERIES

Black Bay 58

ブラックベイ 58

1958年Ref. 7924の血脈を、39mmで現代に再構築したチューダーの代表的ダイバーズ

掲載モデル 39 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Black Bay 58は、2018年のバーゼルワールドでチューダーが発表した39mmのダイバーズウォッチである。1958年のオイスタープリンス・サブマリーナー Ref. 7924「Big Crown」を原点に、Black Bayの設計言語をより小さなケースへ再構築した。「58」の名は発表年ではなく、その源流となった年に由来する。ネイビーブルー、925シルバー、ブロンズ、18金といった派生を経て、2024年のGMT、2025年のバーガンディ、2026年の黒とゴールドの第二世代へと続き、Black Bayコレクションの中核を担っている。

02 — STORY · 物語

Black Bay 58(ブラックベイ 58)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「58」が示す原点 — 1958年のRef. 7924

Black Bay 58の名前が示す「58」は、発表された2018年ではなく、ある一本の腕時計が世に出た年を指している。それが1958年、チューダーが初めて200m防水を達成したサブマリーナー、リファレンス7924である。

チューダーの最初のダイバーズウォッチは、1954年のRef. 7922「Oyster Prince Submariner」にさかのぼる。37mmのケース、100m防水、クラウンガードを持たないシンプルな構造。これに改良を重ね、1958年に登場したRef. 7924は防水深度を200mへ倍増させた。そしてもうひとつの特徴が、潜水士でも操作しやすいようにと採用された大型のねじ込みリューズである。後に収集家たちはこの個体を「Big Crown」と呼ぶようになった。

この時代のチューダーは、フランス海軍(Marine Nationale)の潜水部隊に納入されていた。海軍からの実用要求が、その後のサブマリーナーの設計に影響を与えたことは、複数の資料が示唆している。Big Crown化もまた、軍用現場の要請を反映したものとされる。

02

2012年、Black Bayの誕生と次への布石

2012年バーゼルワールドで発表されたRef. 79220Rは、チューダーのブランド再構築を象徴する一本であった。バーガンディの回転ベゼル、ゴールド色の印字を備えた黒文字盤、スノーフレーク針。これらの要素は1950年代から1970年代のサブマリーナー各世代から選び取られ、特定のリファレンスの忠実な復刻ではなく、チューダー・ダイバーズの遺伝子を再編集したコレクションとして提示された。

しかしRef. 79220Rは41mm × 15mmという、現代のダイバーズとしては標準的、しかしヴィンテージの瑞々しさからは離れた寸法を持っていた。より小さなケース、より薄い厚みでBlack Bayを再構築できないか — その問いへの回答が、6年後にBlack Bay 58として結実する。

03

2018年、寸法を取り戻す — Ref. 79030N

2018年バーゼルワールドで発表されたBlack Bay Fifty-Eight Ref. 79030Nは、Black Bayシリーズに2つの新しい数字を持ち込んだ。ケース径39mm、厚さ11.9mm。ラグ幅も22mmから20mmへ縮められた。41mm版からは、わずか2mmと3mmの違いに過ぎない。しかし手首に乗せたときの感触は、まったく別の腕時計のそれであった。

文字盤はマットブラック、印字とインデックス、スノーフレーク針はゴールド色で仕上げられている。これは1958年に存在した一本の「Oyster Prince」のゴールド配色から着想を得た意匠である。ベゼルインサートにも金色の目盛りが入り、夜光は経年したかのような淡い色合いに調整された。

搭載されたCal. MT5402は、この機にあわせて開発された自社製ムーブメントである。COSC認定、毎時28,800振動(4Hz)、約70時間のパワーリザーブ。41mmのBlack Bayが積むMT5602を小型化したもので、シリコン製ヒゲゼンマイも受け継ぎ、より小さなケースに収まる寸法に最適化されていた。

発表直後から、本機は「これまでで最良のBlack Bay」と評価された。同時発表のBlack Bay GMTが話題を集めた裏で、Black Bay 58は静かに、しかし確実にコレクター層を獲得していった。

04

色と素材の系譜

2020年、Ref. 79030B「ネイビーブルー」が加わる。マットなネイビーブルーの文字盤と同色ベゼル、シルバー色の印字。フランス海軍に納入された1970年代のチューダー・サブマリーナーへの参照であり、軍用との歴史的関係を色に組み込んだバリエーションといえる。

2021年にはRef. 79010SG「925」が登場する。925シルバー製のケース、トープ(灰褐色)の文字盤と同色ベゼル、シースルーバック。同じ2021年4月には、ケース・リューズ・ベゼル・裏蓋まで18Kイエローゴールドとし、マットなグリーンの文字盤とベゼルを組み合わせた最上位機種Ref. 79018Vも加わった。シースルーバックの両機は、Cal. MT5400を積む。リベット付きのブロンズ製ブレスを備えたRef. 79012M「ブロンズ」も続いた。Black Bayに貴金属を持ち込んだのは、このBlack Bay 58が初めてである。

05

GMTとMaster Chronometer — 2024年以降

2024年Watches & Wondersで、Black Bay 58は分岐点を迎える。Ref. M7939G1A0NRU「Black Bay 58 GMT」、39mm径のGMT機構搭載モデルである。ブラックとバーガンディのバイカラー・ベゼル(通称「コーク」)、ゴールド色のインデックス。厚さは12.8mm、41mm Black Bay GMT(15mm)から大幅に薄型化された。ブレスは3連のリベット風で、工具なしで長さを調整できるT-fitクラスプを備える。Cal. MT5450-UはCOSCに加えMETASによるMaster Chronometer認定を取得し、Black Bay 58系列で初めての認定機となった。

2025年、本機は世代交代を迎える。Ref. M7939A1A0RU「Burgundy」は、チューダーのアーカイブに残る、市販されなかったオール・バーガンディのサブマリーナー Ref. 7900 の試作機に着想を得たとされるカラーリングを採用。新型Cal. MT5400-UによりMaster Chronometer認定を取得し、ケース厚を11.7mmまで削った。ベゼルには41mm Black Bayで先に導入された、より鋭いローレットが刻まれた。2026年には、黒文字盤・ゴールド配色のオリジナル意匠もRef. M7939A1A0NUとして第二世代へ移行した。約65時間のパワーリザーブ、秒針停止機能、15,000ガウスの耐磁性を備え、5連ブレスとラバーストラップが用意される。

発表から間もなく10年を迎えるBlack Bay 58は、十数のリファレンスを生み出し、Black Bayコレクション全体の中核へと位置を変えた。「58」という名は、1958年への参照であると同時に、毎年のように更新され続ける開かれた地名のような役割を果たしている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Black Bay 58の設計言語は、引き算によって成り立っている。1958年のサブマリーナーRef. 7924に立ち返るということは、現代のダイバーズウォッチが当然のように備える要素のいくつかを、あえて手放すことを意味した。

まずクラウンガード。Ref. 7928以降、チューダー・サブマリーナーは長らくリューズを保護する突起を備えていたが、Black Bay 58はその直前の世代に倣い、剥き出しの大型リューズを採用している。「Big Crown」が文字盤の3時側に突き出すシルエットは、本機の最も識別的な記号であり、Black Bay 41(リューズはやや控えめ)やオメガ・シーマスター、ブランパン・フィフティ・ファゾムスとの輪郭の差を一目で見分けさせる要素となっている。

ケース径39mm、厚さは初期世代で11.9mm、第二世代以降で11.7mm、ラグ幅20mm。これらの寸法は、1950年代のオリジナル(Ref. 7924は37mm)と現代の41mm Black Bay(15mm厚)の中間に位置する。完全な復刻ではなく、現代の手首と現代の防水機構を備えたうえで、なお1950年代の腕時計が持っていた身体感覚を呼び戻すための妥協点として選ばれている。

文字盤とサファイアクリスタルはともに緩やかにドーム状に成形され、横から見たケースの低い稜線とあわせて、現代のダイバーズには珍しい柔らかな輪郭を生み出している。

針は1969年のRef. 7016/7021で初めて登場したとされる「スノーフレーク」を受け継ぎ、秒針には41mmの新しいBlack Bayと異なる四角いロリポップ型を用いる。鋭角に切り出された時針は、夜光塗料の塗布面積を最大化するために設計されたものであり、視認性と識別性を両立させる解として今も意味を持つ。初期Ref. 79030Nに採用されたゴールド色のインデックスと印字は、1958年の「Oyster Prince」モデルが用いていた配色への参照である。

リベット仕様のブレスレットも、1950年代から1960年代のチューダー・ブレスレットの構造的記憶を呼び戻す意匠であり、第二世代の5連ブレスもまた、同時代の意匠的参照といえる。

派手にしないこと、機能を超えないこと。Black Bay 58が一貫して保ち続けているのは、ダイバーズウォッチが本来持っていた控えめな実用性である。スポーティな主張やテクニカルな誇示ではなく、引き算によって輪郭を保つ意思 — そこに本機の設計思想の核がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2018-現在
Cal. MT5402
MT5602の小型版、シリコンヒゲ、70時間PR。
2021-現在
Cal. MT5400
シースルーバックの925/18K、BB54用。
2024-現在
Cal. MT5450-U
BB58 GMT用、METAS Master Chrono。
2025-現在
Cal. MT5400-U
第二世代用、METAS Master Chronometer、約65時間。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2018-現在

BB58初代誕生

79030N
39mm、Cal.MT5402搭載、1958年Big Crown Sub意匠継承。
2020-現在

Navy Blue登場

79030B
blue bezel+navy blue dial、フランス海軍縁の人気色追加。
2021-現在

925銀/18K金

79010SG 79018V
2021年、925シルバーと18Kイエローゴールド。Black Bay初の貴金属。
2024-現在

BB58 GMT登場

M7939G1A0NRU
BB58初のGMTとMaster Chronometer、MT5450-U、コーク配色ベゼル。
2025-現在

第二世代(Master Chronometer)

M7939A1A0RU M7939A1A0NU
MT5400-U、11.7mm。2025年バーガンディ、2026年黒とゴールド。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 4 モデル

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