設計思想
1. 意匠ではなく機構のための世代交代
126622は、外観の刷新ではなく、ムーブメントの世代交代のために生まれたRefである。2010年代後半のロレックスは、3針デイト機をCal.3135から新世代のCal.3235へ順次移していた。デイトジャストやシードゥエラーが先行し、翌2020年にはサブマリーナも続いている。ヨットマスター 40の番が来たのは2019年である。40mmのラインは、このとき一斉に「126」で始まる番号へ切り替わった。
同年のバーゼルワールドで注目を集めたのは、ホワイトゴールドの42mmケースを持つ新作226659であった。40mmの各Refは、その陰でほとんど姿を変えずに世代を改めたことになる。
2. 受け継がれた青
126622-0002の文字盤は、この世代で新しく作られたものではない。起点は2012年の116622である。1999年の16622以来、ロレジウムのヨットマスターはプラチナ文字盤による淡いモノトーンの時計として知られてきた。116622が加えた鮮やかなブルー文字盤は、その印象を大きく塗り替える存在であった。
126622への移行にあたり、ロレックスは文字盤の選択肢を絞り込んだ。16622から続いたプラチナ文字盤は戻らず、ブルーとダークロジウムの2色だけが新世代へ持ち越された。本機は、116622世代を特徴づけた色を次の機構へ受け渡す役割を担っている。
連続しているのは、ケース、ベゼル、ブレスレット、文字盤の意匠である。断絶しているのはムーブメントで、脱進機の効率と持続時間がここで大きく改められた。外から見た違いがごくわずかであることは、2012年の時点で意匠がすでに完成に近かったことの裏返しとも読める。
3. 兄弟Refとロレジウムの系譜
同世代の兄弟Refは、ダークロジウム文字盤の126622-0001である。スレートグレーに青緑を差す126622-0001に対し、本機は青と赤の対比で組み立てられる。ロレジウムのヨットマスターの中では、色彩の強い側に立つRefである。両者の差は、プラチナベゼルと文字盤のどちらに視線を集めるかの違いとも言える。
ロレジウムが他のコレクションへ広がった現在も、126622はその組み合わせが生まれた場所で系譜を担い続けている。
意匠分析
126622-0002を兄弟Refの126622-0001から分けるのは、文字盤ただ一点である。ケース、ベゼル、ブレスレット、ムーブメントは両者で変わらない。ダークロジウムが寒色のグレーに青緑を差すのに対し、本機は明るい青のサンレイ仕上げに赤を差す。
中心から放射状に走るサンレイ仕上げは、光の角度によって青の明度を大きく変える。その上に、三角・丸・長方形という単純な形のアプライドインデックスが並ぶ。いずれもメタルの縁取りの内側にクロマライト夜光を充填し、暗所では青く発光する。赤が置かれるのは、夜光ドットを備えたセンターセコンドと、文字盤下半分の「YACHT-MASTER」銘の2か所に限られる。回転ベゼルで経過時間を計る時計にとって、動き続ける秒針だけを色で分ける配色は、判読の面でも理にかなっていると読める。
ベゼルは全体が950プラチナ製で、艶消しのサンドブラスト地に、鏡面仕上げの浮き彫り数字と目盛りが立ち上がる。数字は10分ごとに置かれ、目盛りは最初の15分だけが1分刻みとなる。プラチナの白みを帯びた銀色は、青い文字盤と並ぶことで明るさとして際立つ。回転は両方向で、120ステップの刻みは2012年の116622から受け継いだ機構である。
ブレスレットは3連のソリッドリンクによるオイスターブレスレットである。センターリンクの鏡面と外側リンクのサテンが切り分けられる。留め具はオイスターロックで、イージーリンクにより工具なしで約5mm延長できる。リューズはトリプロック仕様のねじ込み式である。
前任からの実質的な変化は内部にある。Cal.3235はロレックス自社製の新世代ムーブメントで、特許を持つクロナジー・エスケープメントを備える。パワーリザーブは、116622のCal.3135の約48時間から約70時間へ延びた。外観上の手がかりは小さく、6時位置の「SWISS」と「MADE」の間に置かれた王冠マークがそれにあたる。新世代ムーブメントを積むモデルに共通する目印とされる。
系譜と歴史
126622-0002の文字盤は、2012年3月のバーゼルワールドで前任116622とともに登場した青に遡る。赤い秒針と赤いモデル名を組み合わせる配色は、このとき既に確立していた。116622では2016年にプラチナ文字盤が廃止され、ダークロジウム文字盤が加わった。以後、ロレジウムの40mmはブルーとダークロジウムの2色で構成されることになる。
126622は2019年3月のバーゼルワールドを機に116622と入れ替わった。同じ年には、エバーローズ・ロレゾールの126621も新世代のCal.3235へ移行した。エバーローズゴールドにオイスターフレックスを合わせた126655も同様である。ブルー文字盤は126622-0002、ダークロジウム文字盤は126622-0001として引き継がれた。プラチナ文字盤は復活していない。
生産開始以降、このRefについて文字盤やケースの仕様変更を告げる公式発表は確認できていない。2026年4月のWatches and Wondersでは、ロレジウムがデイトナにも採用された。1999年の16622以来、ヨットマスターに限られてきた組み合わせが、初めて他のコレクションへ広がったことになる。126622-0002は同年の公式カタログにも掲載が続いており、2026年9月時点で現行モデルである。