設計思想
1. 2023年、主役の陰で番号を改めたRef
2023年3月、ロレックスはSky-Dwellerの新世代を発表した。公式発表で光が当たったのは新しい文字盤色である。とりわけWhite Rolesorのミントグリーンは、それまでデイトジャストにだけ用いられてきた色として関心を集めた。
336934-0005は、その陰で新しい番号を得たRefである。ブルー文字盤とオイスターブレスレットの組み合わせ自体は新しくない。先代326934-0003の構成を、新しいムーブメントとともに引き継いだ継続仕様である。この世代交代は、色や形よりも中身を入れ替えるものであった。
2. 326934-0003が拓いた青
青文字盤がSky-Dwellerに加わったのは2017年である。この年、ステンレススチールを主体とするWhite Rolesor仕様の326934が登場し、白と黒に並んで青が用意された。同時に出たイエローロレゾール(Yellow Rolesor)の326933に青の設定はなく、青はWhite Rolesorにだけ与えられた色であった。
金無垢で出発したSky-Dwellerにとって、スチールの外装に青文字盤を合わせた姿は、ゴールドの主張を最も抑えた表現であった。複雑時計を日常の時計として受け止める素地は、この構成によって整えられたと見てよい。
3. Cal.9001からCal.9002へ
336934-0005で変わったのは、主として内部である。先代のCal.9001は、2012年の初代とともに開発された、ロレックス屈指の複雑なムーブメントであった。同社は2015年にChronergy(クロナジー)エスケープメントを実用化したが、9001はそれ以前の設計であった。
Cal.9002は、この脱進機を取り入れた。Chronergyはエネルギー効率を高めたロレックス独自の脱進機である。ガンギ車とアンクルはニッケル・リン合金製で、強い磁場に耐える。ローターのボールベアリングも最適化された。これでSky-Dwellerの心臓部は、同社の現行ムーブメントと同じ世代の技術を共有した。
変わらなかったものも多い。42mmのケース、White Rolesorの素材構成、文字盤の基本レイアウト、ブレスレットの仕様は先代を踏襲する。パワーリザーブも約72時間で、数値の上では9001と同じである。外観上の差はごく小さい。
4. 8つの仕様の一つとして
336934には、文字盤4色とブレスレット2種を掛け合わせた8つの仕様がある。末尾-0005はブルーのオイスター、対になる-0006はブルーのジュビリーである。ミントグリーン(-0001/-0002)、ホワイト(-0003/-0004)、ブラック(-0007/-0008)も同じ組み立てで並ぶ。
ロレゾール仕様に限れば、青文字盤が設定されるのは現在も336934のみである。同じ青でもジュビリーの-0006が装いに寄るのに対し、オイスターの-0005は2017年の登場時と同じ組み合わせを保つ。本機は、その青の系譜をCal.9002世代へつなぐ位置にある。
意匠分析
本機の外装で、ゴールドが使われるのはベゼルだけである。ロレックスの説明では、リューズ、ミドルケース、裏蓋、ブレスレットはいずれもオイスタースチール製である。多くのロレゾールがリューズやブレスの中央列にも金を配するのに対し、本機は色調の近い二つの白い金属で全体を一色にまとめている。
そのベゼルは飾りではなく、Ring Commandの操作部である。双方向に回転するフルーテッドベゼルが、リューズとムーブメントを結ぶ切り替え機構の入口となる。唯一の貴金属が、操作のための機能部品に割り当てられているのである。
文字盤はブライトブルーで、放射状のサンレイ仕上げが施される。赤は二か所に限られる。偏心配置の24時間ディスクでホームタイムを指す赤い逆三角形と、外周12の小窓のうち現在の月を示す赤い長方形である。青地の上で赤はよく際立ち、読むべき情報を色で指し示す。アプライドのバーインデックスと長めの針は、2017年の326934で導入された意匠である。いずれもChromalightの夜光を備え、暗所では青く光る。
先代との識別点は6時位置にある。文字盤下部に小さな王冠マークが加えられたとされ、Cal.9002世代を見分ける外観上の目印に挙げられる。
ブレスレットは3列リンクのオイスターで、オイスタースチール製である。ケースとの接続部はベゼルの下に隠れる構造で、ラグとブレスレットの間に継ぎ目を見せない。クラスプは折り畳み式のOysterclaspで、Easylinkにより約5mm延長できる。同じSky-DwellerでもOysterflex仕様は、約2.5mm刻みで最大約15mmを調整できるGlidelockを備える。本機は調整幅よりも、装いの時計としての簡潔さを優先したと読める。
ムーブメントはロレックス自社製のCal.9002である。脱進機はChronergyで、ヒゲゼンマイには温度変化や衝撃に強い常磁性合金製のブルーParachromを用いる。耐衝撃装置にはParaflexを組み合わせる。精度はムーブメント単体ではなく、ケーシング後の完成品で日差-2〜+2秒と認定される。裏蓋はソリッドで、改められたローターやブリッジの仕上げを外から見ることはできない。
系譜と歴史
336934-0005は、2023年3月に開幕したWatches and Wonders Geneva 2023で、Cal.9002を搭載する新世代Sky-Dwellerの一員として登場した。このときロレックスが新作として紹介したのは、次の3系統であった。White Rolesorのミントグリーン(336934-0001)、エバーローズゴールドのブルーグリーン(336935-0001)、そしてホワイトゴールドにエラストマー製のOysterflexを合わせた仕様(336239)である。本機は先代326934-0003の後継として、同じ時期にカタログへ加わった。対をなすブルーのジュビリー仕様、336934-0006も同時に登場している。
2024年4月、エバーローズゴールドとイエローゴールドのSky-Dwellerに、同じ金で作られたジュビリーブレスレットの仕様が加わった(336935-0008、336938-0006)。金無垢のSky-Dwellerがジュビリーを備えるのは、これが初めてである。2025年にはイエローゴールドにブライトグリーン文字盤の仕様(336938-0008など)が加わった。いずれも金無垢モデルの拡充であり、White Rolesor仕様に関する発表はなかった。
2026年の新作ラインアップにSky-Dwellerは含まれていない。同年、ロレックスはSuperlative Chronometer認定に耐磁性、信頼性、耐久性の3基準を追加した。これはブランド全体の認定制度の改定であり、本機の公式仕様の表記に変更は見られない。
2026年9月時点で、本機はロレックス公式サイトに現行モデルとして掲載されている。生産終了の発表はなく、限定生産や地域限定の仕様も確認されていない。
出典
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