設計思想
1. 発表の先頭に置かれた一本
2025年4月、ロレックスはランドドゥエラーを発表した。その公式発表資料が最初に紹介したのが、本機127334-0001である。続く2本はダイヤモンドを配した36mmのエバーローズゴールド版と、40mmのプラチナ版で、ケースもブレスも貴金属で仕立てられる。スチールを主体とするのは本機だけだった。
ロレックスがホワイトロレゾールの40mmを先頭に据えた理由は明言されていない。ただ、スチールの本体にゴールドを組み合わせるロレゾールは、同社がオイスター パーペチュアルの柱の一つと位置づける構成である。新しいコレクションの輪郭は、ブランドが1930年代から用いてきた素材構成で示されたことになる。
2. 前任なき新作と、構成上の祖先
127334は新設コレクションの一本であり、型番上の前任を持たない。しかし構成に目を向けると、近い祖先が見えてくる。1970年代後半に登場したオイスタークォーツ・デイトジャストのRef. 17014である。スチールのケースに18Kホワイトゴールドのフルーテッドベゼルを載せ、平たい5連の一体型ジュビリーブレスを組み合わせていた。素材の配分とブレスの型式において、本機はこの17014をほぼなぞる。
型番の末尾もその関係を示す。ロレックスの型番体系では、末尾の「4」がホワイトロレゾールを表すとされる。17014と127334は、約半世紀を隔てて同じ数字で終わる。
一方で、非連続の側面も大きい。17014は自社製クォーツを積んだ時計だった。本機は毎時36,000振動 (5Hz)で時を刻む機械式のCal.7135を積む。ロレックス自身、1974年に同系統の一体型デザインを自動巻きのデイトジャストで試みたと説明している。ランドドゥエラーは、この機械式と一体型ブレスレットの組み合わせを正規カタログに呼び戻した。
3. オールスチールを選ばなかった判断
ランドドゥエラーには、ベゼルまでスチールで仕立てた仕様が用意されていない。最も素材を抑えたホワイトロレゾール仕様でさえ、ベゼルはホワイトゴールドである。1970年代には、スムースベゼルを備えたオールスチールの一体型Ref. 1530が存在した。それと比べると、この判断は明確な線引きに映る。
公式資料は、フルーテッドベゼルをロレックスを識別する目印として説明する。かつてはベゼルをケースにねじ込むための機能的な刻みだったが、やがて意匠の象徴となった。本機はその目印を、スチールの本体に貴金属で載せる。ロレックスはランドドゥエラーのベゼルを、他のクラシックモデルとの比較で語っている。コレクションを道具時計ではなく、デイトジャストに連なる系譜に置く意思が読み取れる。
4. 兄弟Refの中での位置
同じ素材構成の36mm版がRef. 127234で、両者は主に径が異なる兄弟にあたる。40mmにはほかに、エバーローズゴールドのRef. 127335とプラチナのRef. 127336がある。ダイヤモンドを配したRef. 127385TBRとRef. 127386TBRは貴金属版に限られる。ホワイトロレゾールに宝飾仕様はない。本機は、宝石を持たないランドドゥエラーの原型として、シリーズの座標軸に立つ。
意匠分析
本機の外装で貴金属が使われているのは、フルーテッドベゼルだけである。オイスタースチールの一枚岩から削り出したミドルケースと、同じくスチールのフラットジュビリーブレスが大部分を占める。色味の近い二つの金属を組み合わせるため、遠目には単色の時計として映る。
ケースは上面にテクニカルサテン、側面にポリッシュを施し、稜線の面取りを磨き上げる。ロレックスはこのサテン仕上げのために、風防まわりの防水構造を改めたと説明している。専門誌の実測では厚さ9.7mm、ラグからラグまで約46.5mmとされ、厚みは36mm版と変わらない。そのぶん40mmの本機は、より平たいプロポーションに見える。
ダイアルはインテンスホワイトで、ハニカムの表面には細かなサテン仕上げが施される。プラチナ版のアイスブルーがサンレイ仕上げであるのに対し、白は光を柔らかく散らす。6と9のアラビア数字はエクスプローラーとエアキングに着想を得たもので、中央を抜いた造形をとる。インデックスは全長にわたって夜光を充填した新構造で、ロレックスが通常用いるものより硬い素材を採用する。発光性能と色味は従来と同等とされる。夜光はクロマライトで、暗所では青く光る。直線的な時分針にも同じ夜光が入り、秒針のカウンターウェイトはハニカムのセルをかたどる。
ブレスは中央3列を鏡面で一段高く据え、外側2列をサテンとして稜線だけを磨く。貴金属版はコマの内部にセラミックの挿入部品を持つが、スチールの本機にはない。バネ棒を保護するセラミックチューブは全仕様に共通し、留め具はコンシールド式のクラウンクラスプである。
ムーブメントは自社製のCal.7135。パーペチュアル 1908が積むCal.7140を発展させた機械で、約66時間のパワーリザーブを持つ。反射防止コートのサファイアバックからは、コート・ド・ジュネーブを施したブリッジと、イエローゴールド製の肉抜きローターが見える。白系の色調でまとめた表側に対し、裏側では金色のローターが回る。表裏で色調を切り替える構成である。
系譜と歴史
127334-0001は、2025年4月1日に発表された。ジュネーブの時計見本市ウォッチズ&ワンダーズの会期初日で、ランドドゥエラーというコレクションそのものの初披露と同時だった。ロレックスの公式発表資料は、紹介する3本の最初に本機を置き、キービジュアルにも本機の画像を用いた。
同時に、同素材で36mm径のRef. 127234が発表された。エバーローズゴールドとプラチナの各径、ダイヤモンドを配した貴金属版も並んだ。ホワイトロレゾールの40mmは当初から本機のみで、文字盤もインテンスホワイトの一種に限られる。販売は発表と同時に始まるとされた。
2025年7月には、ウィンブルドン選手権の観覧席でロジャー・フェデラーが本機を着用したと、複数の媒体が報じた。
2026年4月14日、ウォッチズ&ワンダーズ2026の初日に、ロレックスはオイスターケース100周年を主題とする新作群を発表した。ここにランドドゥエラーの追加はなかった。あわせて同社は、全モデルに適用するSuperlative Chronometer認定の強化を発表した。耐磁性・信頼性・持続可能性の3項目を、設計・製造段階の基準に加えるものである。ブランド全体の施策であり、本機もその対象に含まれる。同年9月15日には追加の新作が公表されたが、ここにもランドドゥエラーは含まれていない。
2026年9月時点で本機は現行品であり、発表以来の仕様変更は公式に告知されていない。
出典
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