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ROLEX · SERIES

Explorer II

エクスプローラー II

昼夜の境を失う場所のために。24時間ベゼルとフレッチオーネが定義した探検用ツールウォッチ

42 mm
01 — 概要 / SUMMARY

1971年、ロレックスは初代エクスプローラーの兄弟機としてエクスプローラー II を発表した。洞窟探検家や極地観測者など、昼夜の判別が困難な環境で過ごす者のために設計されたツールウォッチである。固定式の24時間ベゼルと、文字盤を貫く太いオレンジの24時間針「フレッチオーネ」が、この系譜の視覚的アイデンティティを決定づけた。現行は42mmケースのRef. 226570を中心に、黒文字盤と白文字盤(通称「ポーラー」)の2構成が並列する。ステンレススチール一色、装飾を排した佇まいは、半世紀を経ても変わっていない。

02 — STORY · 物語

Explorer II(エクスプローラー II)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1971年、暗闇のための時計

エクスプローラー誕生の1953年から18年後、ロレックスは「II」を冠した新たなモデルを発表する。1971年のRef. 1655である。エクスプローラーが山岳登攀者のために生まれたのに対し、II が想定したユーザーは異なっていた。洞窟探検家(speleologist、spelunker)、そして極夜・白夜のなかで活動する極地観測者である。

これらの環境に共通する課題は一つ — 昼夜の判別が難しいことだった。太陽光を時刻の手がかりにできない場所では、時計の針が指す数字だけが頼りになる。Ref. 1655の解答は、固定式の24時間ベゼルと、文字盤中央を貫く太く短い24時間針の組み合わせである。この針が指すベゼル上の数値を読めば、現在がAMかPMかを確実に判別できる。

なお初代の24時間針は時針と連動して動く仕様で、独立した時刻設定はできなかった。つまり機能上はGMT機ではなく、「24時間表示の日夜インジケーター」としての性格が強い時計であった。

02

Ref. 1655 — フレッチオーネと不遇

Ref. 1655の24時間針は、太く短い矢印形状にオレンジの塗装が施されていた。このひと際目立つ針を、イタリアのコレクターたちは「フレッチオーネ(Freccione、大きな矢印の意)」と呼んだ。もう一つのニックネーム「スティーブ・マックィーン」は、1970年代のイタリアの広告キャンペーンで俳優のイメージが用いられたことに由来する。ただし、マックィーン自身がRef. 1655を着用していたという確かな映像・写真証拠は残されておらず、彼が好んで身につけていたのはサブマリーナのRef. 5512であったと伝わる。

商業的な成功は、しかし発売当初には訪れなかった。洞窟探検という用途はあまりに限定的で、市場の関心を惹きにくかった。直線的なスティック針、ベゼルとの読み合わせを前提とした文字盤レイアウト、そして派手なオレンジ針 — これらは伝統的なロレックスの意匠とも、当時の市場の好みとも距離があった。Ref. 1655が真価を認められ、ヴィンテージ市場で熱狂的に集められるようになるのは、生産終了からしばらく経ってからのことである。

03

Ref. 16550と16570 — 真のGMT機への進化

1979年から1982年にかけて行われたトランスグローブ遠征に参加した英国人探検家オリバー・シェパードは、支給されたRef. 1655の文字盤と針を、視認性を高めるためGMTマスター仕様に交換するようロレックスへ特別に依頼したと伝わる。彼の個体は2005年のアンティクオラム・オークションを通じて世に知られるところとなり、その佇まいは、のちに登場するRef. 16550の意匠と明確な類似を示している。

1985年、ロレックスはRef. 16550を発表した。ケース径は40mmへと拡大し、クリスタルはアクリルからサファイアへ、針はメルセデス・ハンドへと刷新された。最も大きな機構的変化はムーブメントのCal. 3085への更新で、これによりエクスプローラー II は初めて24時間針の独立操作を可能とし、真のGMT機として機能するようになる。固定ベゼル+独立24時間針という組み合わせが、回転ベゼルのGMTマスターとは異なるシリーズ固有の構成として、この世代で確立された。

Ref. 16550からは白文字盤(通称「ポーラー」)も登場した。当初はインデックスにホワイトゴールドの縁取りが施されており、塗料の経年変化により一部の個体ではクリーム色へと変色する例が生じた。後にこの「クリームダイヤル」はコレクター市場で強く支持されることになる。1989年、Ref. 16570へ世代交代。基本意匠を継承しつつCal. 3185(のちにCal. 3186)へとムーブメントが更新され、ポーラー文字盤のインデックス縁は黒へ変更されコントラストが向上した。Ref. 16570は約22年にわたり生産され、シリーズ史上もっとも長寿のリファレンスとなる。

04

Ref. 216570 — 42mm化とフレッチオーネの帰還

2011年、シリーズ40周年の節目に発表されたRef. 216570は、史上もっとも大胆な刷新であった。ケース径は40mmから42mmへと拡大し、いわゆる「マキシケース」と呼ばれる、ラグや竜頭ガードを太く描いた現代的なプロポーションへ変わる。Cal. 3187が搭載され、夜光は青く発光するクロマライトに切り替わった。

最も象徴的な変化は、初代Ref. 1655の生産終了からおよそ四半世紀を経て、オレンジのフレッチオーネが帰還したことである。Ref. 16550と16570の世代では細い赤の針へと置き換えられていた24時間針が、ふたたび太く短いオレンジの矢印として復活した。原点回帰と現代化を同時に提示することが、このリファレンスの主題であった。

05

Ref. 226570 — 50周年と現在地

2021年のWatches & Wonders Genevaにあわせて発表されたRef. 226570は、シリーズ50周年を記念するモデルでありながら、外観の刷新は意図的に最小限に抑えられた。42mmケースは継承され、ラグはわずかに細められ、ブレスレットは少し幅広に。6時位置の「SWISS」と「MADE」の間に小さなコロネット(王冠ロゴ)が新たに刻まれ、ポーラー文字盤の針とインデックス縁はマット仕上げのPVDコーティングへと変更されている。

最大の変化はムーブメントである。Cal. 3285は現行のGMTマスター II にも搭載される世代のキャリバーで、クロナジー脱進機により従来比約15%のエネルギー効率向上を達成し、パワーリザーブは約70時間に延長された。2026年のWatches & Wondersにエクスプローラー II の新作は発表されておらず、シリーズの現在地はRef. 226570が担い続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

エクスプローラー II を貫く設計思想は、「太陽が時刻の手がかりにならない場所でも、針の指す数値だけで時間が読み取れる時計」という一点に集約される。サブマリーナが水中、GMTマスターが空路、エクスプローラーが山岳という具体的な使用環境を持つように、エクスプローラー II の想定環境は「暗闇」あるいは「昼夜の境が判別しにくい場所」であった。

この前提から、いくつかの設計判断が一貫して導かれる。第一に、ベゼルは固定式である。回転式ベゼルが潜水時間の経過計測という能動的な役割を担うのに対し、エクスプローラー II の24時間ベゼルはひたすら「読み取られる」ためのスケールとして存在する。視覚的なアンカーであり、可動部ではない。半世紀のあいだ世代を越えても、この方針は揺らがなかった。

第二に、24時間針 — 多くの場合「フレッチオーネ」と呼ばれる太く短いオレンジの矢印針 — がシリーズの視覚的シグネチャーとして機能する。Ref. 16550から16570の世代では細い赤の針へと一時的に縮退したが、Ref. 216570でオレンジの太い矢印が復活して以降、現行Ref. 226570に至るまで継承されている。この一本の針が、エクスプローラー II を他のロレックスのGMT機構搭載モデルから一目で区別させる。

第三に、素材における禁欲がある。エクスプローラー II は現行カタログにおいてもステンレススチール仕様のみで展開され、ホワイトゴールドや2トーンといったドレスアップ的派生を許してこなかった。デイトナやGMTマスター II が多彩な金属仕様を持つことと対照的である。「ツールウォッチである」という出自に対する一種の節度として、この姿勢は読まれてきた。

文字盤の二択 — 黒と白(ポーラー) — もまた、視認性の文脈で語られる。ロレックスのプロフェッショナル・ラインで白文字盤を選べる数少ないモデルであり、雪原や極地での視覚的整合性という機能的な解釈も成り立つ。装飾性ではなく、想定環境への応答として文字盤色が選ばれている、と読むのが妥当だろう。

そして黒・白いずれの構成にも共通するのが、夜光処理の徹底である。Ref. 1655のトリチウム、Ref. 16570途中でのスーパールミノーバへの移行、Ref. 216570以降のクロマライトと、夜光技術は世代ごとに更新されてきたが、「暗闇で読める」という基準は変わらない。エクスプローラー II の設計思想は、つまるところ「視認性を譲らない」という一点に貫かれている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1971-1985
Cal. 1575 GMT
1575系GMT改、初代1655用の自動巻機。
1985-1989
Cal. 3085
16550用、独立調整可能な24時間針機構。
1989-2011
Cal. 3185
16570用、22年使用された長寿機。
2011-2021
Cal. 3187
216570用、Parachrom+Paraflex搭載。
2021-現在
Cal. 3285
70時間PR、Chronergy脱進機、226570用。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1971-1985

初代Explorer II

1655
洞窟探検家向け、橙色24時間針、Cal.1575 GMT、McQueen通称。
1985-1989

白文字盤と現代化

16550
サファイア風防化、白文字盤Polar登場、Cal.3085搭載で大刷新。
1989-2011

Cal.3185期

16570
Cal.3185へ更新、22年の長期生産、現代Explorer IIの定型機。
2011-2021

42mm拡大期

216570
40mmから42mm化、Cal.3187搭載、Maxiケースで意匠刷新。
2021-現在

Cal.3285搭載

226570
Cal.3285新搭載、70時間PR、Chronergyガンギ車、現行主力機。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive