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ORIS · SERIES

Artelier

アートリエ

道具時計で知られるOrisが礼装の語彙を磨いた系譜。自社製10日巻キャリバーが最初に宿った場でもある。

01 — 概要 / SUMMARY

Artelier(アートリエ)は、ダイバーズやパイロットで知られるOrisが2003年に発足させた、ドレスウォッチのコレクションである。薄いケースと整然とした文字盤を旨とし、道具時計が大半を占める同社にあって礼装の文脈を担ってきた。現行はSellitaを基にしたArtelier DateとArtelier Complication、自社製キャリバーを宿す上位機が並ぶ。2014年に復活したOrisの自社製ムーブメントが最初に搭載された舞台でもあり、2026年には全面的な意匠刷新を受けた。

02 — STORY · 物語

Artelier(アートリエ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

道具時計の傍らに置かれた礼装

Orisの主力は、長く実用時計にあった。Aquisのダイバーズ、Big CrownやProPilotのパイロットウォッチ。視認性と堅牢性を前面に出す系譜である。その傍らで、2003年に発足したのがArtelierである。

クォーツ危機を機械式専業として生き延びたブランドが、道具時計とは異なる文脈、すなわち礼装としての時計を改めて掲げた試みだった。同年にはWilliams F1チームとの協業も始まっており、Orisが自社の表現を複数の方向へ広げた時期にあたる。Artelierは、その中で静かなドレスウォッチの役割を担った。

02

ムーンフェイズという語彙

Artelierの意匠を象徴するのが、ムーンフェイズを核とするコンプリケーションである。Orisはムーンフェイズ複合機構を備えたCal. 581を1991年に世に出したとされる。ETA系を基にしたこの機構は、日付・曜日・第2時間帯・月相を一枚の文字盤にまとめるもので、Artelier発足後はコレクションの看板の一つとなった。

針で日付を示すポインターデイトも、Orisが1938年に採用したと称する古い意匠であり、Artelierの中で受け継がれた。これらは過剰な装飾に頼らず、複数の情報を整然と並べる構成として磨かれた。2017年にはCal. 781へ刷新され、よりスリムで現代的な姿となった。

03

自社製キャリバーの帰還

Artelierが時計史の文脈で重要なのは、Orisの自社製ムーブメント復帰がこのコレクションで始まった点にある。20世紀のOrisは300近い自社キャリバーを手がけたが、クォーツ危機とASUAG傘下入りを経て、その能力は途絶えていた。

2014年、創業110周年に合わせて発表されたCal. 110は、約35年ぶりの完全自社設計の機械であった。手巻で単一の大型香箱を持ち、10日巻のパワーリザーブと、残量を非線形に示す特許表示を備える。毎時21,600振動 (3Hz)、小秒針を持ち、日付は省かれていた。この機械は110周年記念モデルとして、ステンレス110本・金110本に限定された。

翌年以降、日付を加えたCal. 111、第2時間帯のCal. 112、曜日・日付・週・月を示すビジネスカレンダーのCal. 113が続いた。いずれもArtelierを主な舞台として発表され、控えめなドレスラインがブランドの技術的到達点を担う構図となった。

04

2026年の全面刷新

2026年、OrisはWatches & WondersでArtelierを全面的に刷新した。設計を託されたのは、24歳のプロダクトデザインエンジニア、Lena Huwilerである。新世代の文字盤には、1960年代のOrisのインデックスに着想を得たという楔形の植字インデックスが据えられ、書体も改められた。

ケースはより小ぶりで現代的な寸法へ整理され、Artelier Dateは径38mm、Artelier Complicationは径39.5mmとなった。刷新されたComplicationには、Cal. 781から日付と曜日の表示を省いたCal. 782が収まる。月相と24時間表示の第2時間帯のみを残した、二つの小文字盤の構成である。

同年6月のHölstein Edition 2026では、自動巻のCal. 400を基にしたCal. 401が、新世代Artelierに初めて搭載された。5日巻・高い耐磁性・クロノメーター級の精度を備える自社製機械である。Orisはこの刷新を「アーバンドレスウォッチ」と位置づけ、若い世代への訴求を狙った。

05

二つの軸が支える現在地

現在のArtelierは、二つの軸を併せ持つ。一つはSellitaを基にした汎用機で支える、手の届きやすいArtelier DateとArtelier Complication。もう一つは、自社製キャリバーを宿す上位の機械群である。

2017年に登場したビジネスカレンダーのCal. 113は、2026年に意匠を改めて定番へ復帰した。年明けにはCal. 113を用いたYear of the Horse限定モデルも投入されている。道具時計が大半を占めるOrisのカタログにあって、Artelierは依然として小さな一角にとどまる。だがそこは、礼装の語彙と自社製ムーブメントへの志を試す場であり続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Artelierが一貫して守ってきたのは、道具時計から距離を取った静けさである。Orisの主力であるAquisやBig Crownが視認性・防水・堅牢性を前面に出すのに対し、Artelierは薄いケース、細いベゼル、ドーム型サファイアといった要素で、礼装としての慎ましさを優先する。

文字盤の設計には、情報を詰め込みつつ煩雑に見せないという原則がある。ムーンフェイズや第2時間帯を持つコンプリケーションでも、小文字盤の配置と余白の取り方で視覚的な均衡を保つ。自社製のCal. 110系では、残量を非線形に示すパワーリザーブ表示そのものが、文字盤の意匠的な軸として機能した。針で日付を指すポインターデイトも、装飾ではなく機能を意匠化するこのコレクションの姿勢を映す。

ケースバックから見える赤いローター(レッドローター)は、Orisが自社の機械式時計に与えた目印であり、Artelierも例外ではない。手巻のCal. 110系ではローターを持たないが、その分だけ機械全体を見通せる構成となっている。

2026年の刷新は、この設計言語を現代へ翻訳する作業だった。楔形の植字インデックスと角張った針、三層構造の文字盤は、いずれも1960年代のOrisの意匠を出発点としつつ、より清新な印象へまとめられている。径を38〜39.5mmに整理した判断は、性別を問わず日常的に着けられる寸法を狙ったものである。

同時代のドレスウォッチと比べたとき、Artelierの輪郭は価格と実用の側にある。「実直な時計を実直な人へ」という姿勢のもと、資産性や希少性ではなく、日々腕に載せられる時計であることを設計の前提に置く。派手さを抑え、構成の整理に注力するこの選択こそ、Artelierを貫く意匠思想である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2003-
Cal. 733 ほか (Sellita / ETA ベース)
三針・デイト等を担う汎用自動機。
2003-2025
Cal. 581 → 781 系 (Sellita / ETA ベース)
月相・曜日・日付・第2時間帯の複合機。
2014-
Cal. 110 / 111 / 112 / 113 (自社製)
手巻・10日巻、非線形パワーリザーブ表示。
2026-
Cal. 782 (Sellita ベース)
月相と第2時間帯に絞った二針構成。
2026-
Cal. 401 (自社製 Cal. 400 系)
自動巻・5日巻、高耐磁でクロノメーター級。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2003-2013

礼装コレクションの発足

初代 Artelier
ポインターデイトやComplicationを擁する礼装ラインとして発足。
2014-2016

自社製キャリバーの上位群

Artelier Calibre 110 111 112
110周年記念を起点に、自社製手巻を纏う上位群が確立。
2017-2022

コンプリケーションの刷新

Artelier Complication Calibre 113
Complicationを刷新し、よりスリムで端正な姿へ整理。
2023-2025

タイムオンリーへの再編

Artelier(タイムオンリー整理)
時刻表示中心のモデルを整え、構成を簡潔に見直す。
2026-現在

意匠を一新した新世代

Artelier Date 38mm Complication 39.5mm
楔形インデックスと小ぶりなケースで現代的に再構築。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Introducing - Oris Artelier Calibre 111 now with Blue Dial 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.08.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Introducing the Oris 110 Years Limited Edition featuring Calibre 110 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.08.15 閲覧 Monochrome Watches · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive