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NOMOS GLASHüTTE · SERIES

Ahoi

バウハウスの製造所が初めて海へ向けた一本。回転ベゼルを持たない、200m防水のスポーツウォッチ。

01 — 概要 / SUMMARY

Ahoi(アホイ)は、Nomos Glashütteが2013年に発表した同社初のスポーツウォッチである。薄型のバウハウス系ドレスウォッチを得意としてきた製造所が、ねじ込み式リューズとリューズガード、200m防水を初めて備えた一本として送り出した。回転ベゼルを持たず、Tangente由来の文字盤を保ったまま水辺へ踏み出した点に特徴がある。現行は36mmのAhoi neomatik(日付なし)と、38.5mmのAhoi neomatik 38 date(3時位置に日付)を軸とし、濃紺のAtlantikなどの配色で展開する。ドレスとスポーツの境界に立つ、ユニセックスな実用機である。

02 — STORY · 物語

Ahoi、これまでの軌跡

The story of this series
01

バウハウスの製造所が海へ向かう

Nomos Glashütteは、1990年にザクセン州グラスヒュッテで創業した時計製造所である。Tangenteに代表される薄型のドレスウォッチで知られ、装飾を抑えた明快な文字盤を看板としてきた。その製造所が2013年、これまでと毛色の異なる一本を世に出す。スポーツウォッチのAhoiである。

それまでのNomosは33mmから38mm前後の細身のケースを主軸とし、防水も日常生活防水の域にとどまっていた。Ahoiはそこから踏み出し、200m防水、ねじ込み式リューズ、そしてリューズガードを初めて備える。とりわけリューズガードは従来のNomosに見られなかった部品であり、スポーツ化の意思を端的に示していた。「Ahoi」はドイツ語で船乗りが交わす挨拶を指すと伝わる。名のとおり、水辺を強く意識した最初のNomosであった。

02

初代Ref. 550と551

初代Ahoiのケース径は40.3mm、厚さは約10.6mm。当時のNomosとしては大ぶりで、自動巻を収めるTangomatの設計を土台としていた。リファレンス番号が550番台に置かれたのも、500番台のTangenteと地続きであることの表れである。

初代は2型で構成された。日付を持たないRef. 550と、6時位置に大型日付を備えるRef. 551 Ahoi Datumである。前者にはEpsilon、後者にはZetaという、いずれも自社の自動巻キャリバーが収められた。両者は2006年以来の自動巻系列に属し、調速部品のみを外部から調達していた。

文字盤はTangenteの語彙を引き継ぎつつ、スポーツ用途へ寄せられていた。外周に並ぶ蛍光インデックス、淡い青の夜光を差した針、6時の赤いスモールセコンド。ドーム型サファイアクリスタル、6本ねじ留めの裏蓋、200m防水を示す鯨の刻印。フランス製の防水テキスタイルストラップと、専用の翼形クラスプも備わる。数字はTangenteを思わせるが、より細く開いた書体に整えられている。

03

2014年、Atlantikが性格を決める

初代の銀白色ダイヤルは、ドレス由来の上品さを保つ一方で、スポーツウォッチとしての輪郭はやや弱かった。Nomosは2014年、濃紺のラッカーダイヤルをまとうAtlantikを追加する。

深い青はAhoiの印象を一変させた。海を連想させる色がスポーツ性を前面に押し出し、シリーズに明確な個性を与えたのである。AtlantikにもRef. 547系の日付なしと、Ref. 553系の日付付きが用意され、初代の構成を踏襲した。以後、濃紺はAhoiを象徴する配色として定着していく。

04

2017年、neomatikとサイズの分岐

2015年、Nomosは厚さ3.2mmの超薄型自動巻DUW 3001を発表した。自社製の脱進機(ノモス・スウィングシステム)を備えた、当時の同社の到達点である。

2017年、このキャリバーがAhoiにも採用される。36.3mmへ小型化したRef. 560、Ahoi neomatikである。薄型化と小径化により、男女を問わず扱える一本となった。同じ頃、Aquaと呼ばれる派生で配色も広がる。2017年にsignalblau(サイレンブルー)とsignalrot(サイレンレッド)が登場。翌2018年にはsignalweiss(サイレンホワイト)が続いた。

2018年には、40mm世代のキャリバーも刷新される。EpsilonはDUW 5001へ、ZetaはDUW 5101へと置き換わり、いずれも自社製脱進機を備えるに至った。こうして2010年代後半のAhoiは、36mmと40mm、日付の有無、複数の配色を擁する幅広いシリーズへと育っていく。

05

2023年以降、38mmという解

2023年、Nomosはサイズ構成にもう一つの解を加える。38.5mmのAhoi neomatik 38 dateである。3時位置に日付窓を持ち、自動巻のDUW 6101を収める。

DUW 6101は日付環をムーブメント外周に配する特許機構を持ち、ケースなしで35.2mm前後と横幅が大きい。この広幅キャリバーが40mm未満のケースに納められたのは、これが初めてであった。まずSky(空青)とSand(砂色)の2色で登場し、2024年に濃紺のAtlanticが続く。Atlanticは石数を増やしたDUW 6101の改良版を最初に得たモデルでもある。2025年には白文字盤も加わった。

現行のAhoiは、36mmのneomatik(日付なし)と、38.5mmのneomatik 38 date(3時日付)を軸とする。発表当初の40mm径は、この薄型世代へと比重を移してきた。ドレスとスポーツの境界に立つという出発点の性格は、世代を越えて保たれている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Ahoiの設計を貫くのは、「Nomosの顔を崩さずに水へ持ち込む」という一点である。バウハウス系ドレスウォッチの文字盤言語は、そのまま保たれた。明快な数字とインデックスの交互配置、6時のスモールセコンド、細い針、薄いケース。そこへ防水性能だけを引き上げたのが、このシリーズの出発点である。

最も雄弁なのは、回転ベゼルを持たないという選択である。多くのダイバーズウォッチが潜水時間を計る回転ベゼルを備えるのに対し、Ahoiのベゼルは固定で、面取りされた視覚的なアンカーにとどまる。そのためISO規格上のダイバーズには該当しないが、200m防水を備えた実用機としての立場を明確にしている。引き算によって性格を定義する点に、このシリーズの思想がある。

機能面では、ねじ込み式リューズとリューズガードが要となる。リューズには赤い警告リングが仕込まれ、締め込みが不完全なときに露出して注意を促す。6本ねじで固定される裏蓋、両面ドーム型サファイア、そして200m防水を示す鯨の刻印。いずれも誇示を避けた、控えめな堅牢さの表現である。

視認性も一貫した優先事項である。針とインデックスには緑に光る夜光が与えられ、暗所や水中でも時刻を読み取れる。一方で色彩は抑制される。彩りは赤や橙のスモールセコンド針に限られることが多く、整然とした文字盤の中で唯一の差し色として働く。Aquaのサイレン系のみが、この自制から意図的に外れた例外である。

プロポーションの薄さも、AhoiをNomosたらしめる要素である。200m防水を備えながら、ケース厚は初代でも約10.6mm、neomatik世代では10mmを下回る。同時代の競合とは異なる輪郭を、この薄さが描く。SeamasterやFifty Fathoms、Luminorは、回転ベゼルと厚みを個性とするスポーツウォッチである。Ahoiはその対極で、薄さと節制を選んだ。

発表から十余年を経てもAhoiが一目で識別できるのは、これらの判断が一貫して守られてきたからである。交互に並ぶ数字とインデックス、差し色の秒針、リューズガードの輪郭。変えたのは防水とサイズであり、変えなかったのは文字盤の佇まいであった。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2013-2018
Epsilon / Zeta
調速部品は外部調達の自動巻。日付付きはZeta。
2017-現在
DUW 3001 (neomatik)
厚さ3.2mmの超薄型。自社スウィングシステム採用。
2018-現在
DUW 5001 / 5101
Epsilon/Zetaの後継。自社脱進機の40mm用。
2023-現在
DUW 6101
特許日付機構を備える38.5mm世代の自動巻。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2013-

初代Ahoiと日付モデル

550 551
40mm・200m防水。Nomos初のスポーツ機、日付の有無で2型展開。
2014-

濃紺のAtlantik

547 553
濃紺ラッカーのAtlantik。スポーツ性を決定づけた配色。
2017-

neomatik 36mm

560
36.3mmへ小型化。薄型DUW 3001でユニセックス化。
2023-

neomatik 38 date

516 517
38.5mm・3時日付。広幅のDUW 6101を小型ケースへ。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 NOMOS Glashütte 公式 · 2026.08.15 閲覧 2026.08.15
  2. 02 専門メディア DUW 6101 - Grail Watch Reference 専門メディア · Grail Watch Reference · 2026.08.15 閲覧 Grail Watch Reference · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive