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MüHLE GLASHüTTE · SERIES

Divers

ダイバーズ

フリーダイバーから海軍の潜水士まで、実際の使い手とともに鍛え上げたミューレの実用ダイバー

01 — 概要 / SUMMARY

ミューレ・グラスヒュッテのダイバーズは、航海計器メーカーとしての出自を背景に、実際の潜水者とともに開発されてきた実用本位のダイバーズウォッチ群である。フリーダイバー協会と練り上げた初代Rasmus、防水2000m・耐磁性能を備えロストック大学の研究ダイバーと組んだRasmus 2000、ドイツ海軍海兵大隊向けにGMTを与えたSeebataillon GMT、戦闘潜水士のために鋸歯状ベゼルを得たKampfschwimmer。深海から軍の任務まで、用途ごとに姿を変えながらも「読みやすく、壊れない」という一点を貫いてきた系譜である。

02 — STORY · 物語

Divers(ダイバーズ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

「航海計器」から潜るための時計へ

ミューレ・グラスヒュッテは、舶用時計や船舶用計器を手がけてきた歴史を持つ。海と結びついた出自は、潜水のための時計をつくるうえで自然な土台となった。同社のダイバーズは、その航海計器の思想を腕時計へ移したものといえる。特徴は、特定の使い手と組んで設計を詰める手法にある。机上の想像ではなく、実際に潜る者の要求から逆算してかたちを決める。この姿勢が、後のRasmusやSeebataillonに一貫して流れている。

02

Rasmus — フリーダイバーとともに

最初の本格的なダイバーは、Rasmusの名で登場した。Rasmusは船乗りの守護聖人の名にちなむとされる。開発にはドイツのフリーダイビング協会AIDAが関わり、潜水手袋でも扱えるリューズとベゼル、暗所でも瞬時に読める高コントラストの文字盤が求められた。ステンレス製の44mmケースに無反射のサンドブラスト仕上げを施し、防水は約1000mに達した(Ref. M1-28-17 系)。派手さを排し、視認性と頑健性だけを積み上げた一本である。潜るための時計をどう設計するか。その問いに、使い手の側から答えを出した点に、このシリーズの出発点がある。

03

Rasmus 2000 — 深度2000mへ

2013年、Rasmusは防水2000mのRasmus 2000へと進化した。今度の協力者はロストック大学の研究ダイバー、すなわち科学調査の潜水士であった。バルト海の厳しい条件を前提に、極限の水圧と、深所での確実な視認性が課題となった。耐磁性能は1000ガウスに及び、逆回転防止ベゼルを備える。中身はゼリータSW200をベースに、自社ローターときつつき頸調整を組み込んだ自動巻だ。完成後も同大学の研究ダイバーの訓練に用いられ、現場の声が再び設計へ還元される仕組みが組まれた。深海という極端な環境に、実用一辺倒で応えた世代である。

04

軍の要請 — Seebataillon GMTとKampfschwimmer

頑健さで知られたミューレは、やがてドイツ海軍の目に留まる。きっかけは、海軍の救難飛行士が用いるS.A.R. Flieger-Chronographであった。2013年、海兵大隊(Seebataillon)向けにSeebataillon GMTが発表される(Ref. M1-28-62)。国外派遣の多い部隊のため、第2時間帯を示すGMT機構を与え、チタン製ケースで軽量化を図った。防水は300m。文字盤の紺・金・白の配色は、部隊の標章に由来する。リューズは手の動きを妨げない4時位置に置かれた。翌2014年には、海軍の戦闘潜水士のためのKampfschwimmerが続く。部隊の創設50周年を記念したこの一本は、鋸歯状の逆回転防止ベゼルを持つ純然たるダイバーで、ステンレス製の堅牢なケースにまとめられた。GMTのSeebataillonが双方向ベゼルで潜水計時には向かないのに対し、Kampfschwimmerは潜るための時計として設計されている。両者は、同じ素地から目的別に枝分かれした兄弟といえる。

05

現在地

深海ダイバーのRasmus 2000は、すでに現行コレクションを退いた。一方でSeebataillon GMTは、調達ムーブメントをゼリータSW330へと替えながら、いまも生産が続く。ミューレのダイバーズは、Sea-TimerやProMareといった新しい海洋系モデルと並走しながら、「実際の使い手と組む」という方法論を受け継いでいる。深海の科学者から軍の任務まで、相手が変わっても設計の出発点は変わらない。読みやすく、壊れず、必要な機能だけを備えること。これが、ミューレの潜るための時計を貫く一本の筋である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ミューレのダイバーズを貫く言葉は「Nautische Instrumente(航海計器)」である。装飾品ではなく道具として設計するという宣言であり、その思想は具体的な意匠へ落ちている。

第一に視認性。高コントラストの文字盤、太く塗り分けられた針、余計な文字を省いた盤面が、暗所でも一瞬の判読を可能にする。夜光は針とインデックスにたっぷりと充填され、ベゼルの起点も明確に示される。第二に頑健性。厚いサファイアガラス、ねじ込み式リューズ、そしてミューレ独自のきつつき頸調整が、衝撃のなかでも精度を保つ。きつつき頸調整は、天輪を支える調整機構が衝撃でずれるのを防ぐ仕組みで、同社の技術的な顔でもある。

意匠面では、無反射のサンドブラスト仕上げや抑えた配色が共通する。Seebataillonの紺・金・白は部隊の標章に、Kampfschwimmerの鋸歯ベゼルは部隊の象徴である鋸鮫に由来し、装飾ではなく出自を語る記号として置かれている。

ベゼルの設計は用途で分かれる。潜水計時のためのRasmusやKampfschwimmerは逆回転防止の一方向ベゼルを、第2時間帯を読むSeebataillonは双方向の12時間ベゼルを採る。同じダイバーズでも、使い手の任務に応じて機能が決まる。リューズを4時位置に据える判断も、手の甲を傷めないという現場の要求から来ている。

潜水時計の定型をあえてなぞらず、独自のケースラインと軍の記号性で輪郭を描く。そこに、オメガ Seamasterやブランパン Fifty Fathomsとは異なる、ミューレのダイバーズの立ち位置がある。変えなかったのは、視認性と頑健性、そして使い手から逆算する設計の作法である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2000年代後半
ETA 2824-2 ベース
初代Rasmus等の3針日付。きつつき頸調整を付加。
2013年頃
ETA 2893-2 ベース
Seebataillon GMTの第2時間帯機構を担う。
2013年以降
ゼリータ SW 200-1 / SW 330-1
ETAから移行。自社ローターと6姿勢調整を組む。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2000年代後半

初代Rasmusダイバー

M1-28-17 系 (Rasmus)
AIDA協会と開発した防水約1000mの本格深海ダイバー。
2013

Rasmus 2000

M1-28-82 -83 (Rasmus 2000)
防水2000m・耐磁1000ガウス。ロストック大の研究ダイバーと開発。
2013-現在

Seebataillon GMT

M1-28-62 (Seebataillon GMT)
海軍海兵大隊向け。GMTを備えたチタン製の300m防水。
2014

Kampfschwimmer

Kampfschwimmer
海軍戦闘潜水士向け。鋸歯状の逆回転防止ベゼルを持つ。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Mühle-Glashütte 公式 · 2026.08.15 閲覧 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Sellita Caliber SW200-1 専門メディア · Caliber Corner · 2026.08.15 閲覧 Caliber Corner · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive