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JUNGHANS · SERIES

Max Bill

マックス・ビル

機能が形を決めるというバウハウスの原理を、60年以上ほぼ変えずに腕へ宿し続けるミニマルの原型。

01 — 概要 / SUMMARY

Junghansが1961年に発表したマックス・ビルは、バウハウス出身の造形家マックス・ビルが意匠を定めた腕時計の系譜である。技術者ではなく芸術家が文字盤と針の言語を設計し、その姿は60年以上ほぼ変わっていない。手巻のHand-winding、日付を備えるAutomatic、クロノグラフのChronoscope、電波・ソーラーのMEGAが現行の主軸をなす。ニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションにも名を連ね、「機能が形を決める」という思想を腕時計の形で今に伝えている。

02 — STORY · 物語

Max Bill(マックス・ビル)、これまでの軌跡

The story of this series
01

厨房時計から生まれた言語

マックス・ビルの設計言語は、腕時計より先に壁の上で生まれた。Junghansがバウハウス出身の造形家マックス・ビル(1908-1994)に協業を求めたのは1956年のことである。ビルは1927年にデッサウのバウハウスで学び、のちにウルム造形大学を共同で創設した、20世紀を代表する造形家の一人だった。

最初の成果は、丸みを帯びた涙滴形の厨房時計(Küchenuhr)であった。ビルはウルムの学生とともにこれを設計し、時計に短時間タイマーを組み合わせた。彼はこの時計を、家庭で唯一の時計になりうるものと考えていた。子どもが初めて数字を読み、時間の順序を学ぶための道具。だからこそ文字は明快でなければならない、と彼は語ったとされる。装飾を削ぎ、読みやすさだけを残すこの姿勢が、後の腕時計の出発点になった。

02

1961年、腕への翻訳

厨房時計の文字盤で練られた書体と構成は、1958年の置時計を経て、1961年に腕時計へと翻訳された。ビルはこのとき、3種類の文字盤を設計したと伝わる。インデックスのみのもの、時の数字を加えたもの、さらに分の数字まで備えたものである。

線で示す時分の目盛、丸みのある独特の数字、細いバトン型の針。余計なものを置かないこの構成は、現在もほぼそのまま受け継がれている。初期のモデルには自社製の手巻キャリバーJ84/S系や、1957年に登場した自動巻クロノメーターJ83/Eが収められた。文字盤に日付窓を持つ自動巻も存在したが、最小限を旨とするビルの意図によるものか、Junghans側の試みかは判然としない。

03

電子化の時代を越えて

Junghansは1970年代以降、クォーツや電波修正へと技術の軸足を移し、1990年には電波修正腕時計を世に送り出した。量産と電子化が進むなかで、ビルの腕時計の存在感は一度薄れる。だがその設計は古びなかった。ニューヨーク近代美術館がこの仕事を評価し、厨房時計をプロダクトデザインの古典としてコレクションに迎えたことが、価値を裏づけた。流行を追わない造形は、時代が変わるほど際立っていった。

04

1997年、没後に託されたクロノグラフ

ビルは1994年に世を去る。その3年後の1997年、コレクションにクロノグラフが加わった。クロノスコープ(Chronoscope)である。ビル自身の設計ではないが、子息ヤコプ・ビルが父の思想に適うものとして承認したとされる。9時位置のスモールセコンドをあえて省き、左右対称を保ったその文字盤は、原典の禁欲を裏切らない。Valjoux 7750系を基とするキャリバーJ880系が動力を担う。

05

倒産から再興、そして現在

2008年、親会社の破綻によりJunghansは経営危機に陥り、従業員はわずか100名余りまで減った。翌2009年、地元シュラムベルクの実業家シュタイム父子が会社を引き受ける。再興の旗印に選ばれたのが、ほかならぬマックス・ビルだった。以後この系譜はブランドの主軸となる。

現行コレクションは、34mmのHand-winding、38mmのAutomatic、40mmのChronoscopeを軸に広がる。2018年には電波修正とソーラーを統合したMEGAが加わった。2019年のバウハウス100周年を機に始まったバウハウス系列は、デッサウ校舎を意匠の源泉に据える。Junghansの説明によれば、白い壁を映した銀色の文字盤、ファサードを思わせるアンスラサイトのケース、有名な赤い扉に呼応する赤い針が、その性格を形づくっているという。2024年のレギュレーター・バウハウスもこの流れにある。60年を越えて、ビルの引いた線はなお現役である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

マックス・ビルの設計を貫くのは、必要のないものを置かないという一つの原則である。装飾でも余分な文字情報でもなく、時刻を読むための要素だけを残す。長い時針側の目盛と短い分目盛、細いバトン針、そして丸みを帯びた独特の数字。とりわけ「4」の字形にはバウハウスで鍛えられた造形家の筆致が宿るとされ、この系譜を一目で見分ける手がかりになっている。3・6・9・12時に置かれた小さな夜光の点も、控えめながら視認性を支える。

変えなかったものは多い。ドーム状のプレキシガラスは、視認性のための実利と、光をやわらかく曲げる表情の両方を担う。サファイアの方が傷に強いと知りながら、輪郭の美しさのために樹脂風防を残す判断には、機能一辺倒ではない造形の意思が見える。文字盤上の文字も最小限にとどめ、ロゴと「Automatic」程度の表記しか置かない。日付窓すら、最小限を重んじる思想と相容れにくいものとして長く避けられてきた。

色とサイズの自制も一貫している。白、銀、黒、アンスラサイトを基調に、ケース径は34〜40mmに収まる。腕の上で主張しすぎず、読みやすさを最優先する姿勢である。この明快さは手巻、自動巻、クォーツ、電波修正と、まったく異なる機構をまたいで保たれてきた。形が機構に従属しない、設計言語として完成しているからである。

同時代のダイバーズ、たとえばSeamasterやFifty Fathoms、Luminorは、水という過酷な環境が形を決めた時計である。対してマックス・ビルの形は、明快さと省略という設計思想そのものから導かれた。出発点は環境ではなく、思想だった。だからこそ60年を経ても、文字盤を見ればそれと分かる「顔」を保ち続けている。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1961-1970年代
J83/E・J84/S系 (自社製)
自社製の手巻と自動巻。J83は自動クロノメーター。
1990年代-現在
J800.1・J805.1 (ETA/Sellitaベース)
現行三針の主力。グレンヘン製を調整して搭載。
1997-現在
J880系 (Valjoux 7750ベース)
クロノスコープ用の自動クロノグラフ。
2018-現在
J101.65 (自社製電波)
MEGA用の電波修正ムーブメント。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1961-1970年代

初代マックス・ビル

84 3961 ほか (J84 S・J83 E系)
3種の文字盤で意匠を確立。自社製の手巻・自動巻を搭載。
1997-現在

クロノスコープ

Chronoscope (027 4003系)
ビル没後、遺族の承認を得て加わったクロノグラフ世代。
2009-現在

再興後の現行三針

Automatic 027 3400系・Hand-winding
シュタイム家の再建でブランド主軸へ復帰した中核。
2018-現在

マックス・ビル MEGA

MEGA (059系)
電波修正とソーラーを統合した技術派生の世代。
2019-現在

バウハウス系列

Bauhaus (027 4493系 ほか)
デッサウ校舎に着想し赤の差し色を加えた記念系。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア Junghans max bill Chronoscope 専門メディア · Chrono24 · 2026.08.15 閲覧 Chrono24 · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Junghans Max Bill Guide 専門メディア · Teddy Baldassarre · 2026.08.15 閲覧 Teddy Baldassarre · 2026.08.15
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive