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JAEGER-LECOULTRE · SERIES

Duomètre

デュオメトル

時計の動力を二系統に分け、複雑機構を備えても精度を損なわない。Dual-Wingが拓いた地平。

42.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

デュオメトルは、ジャガー・ルクルトが2007年に発表した複雑時計の系譜である。動力を二系統に分け、複雑機構と時刻表示がそれぞれ独自の香箱を持ち、調速機構だけを共有するDual-Wing機構を核とする。機能を足しても精度を損なわない、という思想を一貫して追う。現行は、カンティエーム・リュネール、クロノグラフ・ムーン、そして三軸トゥールビヨンを擁するヘリオトゥールビヨン・ペルペチュアルが中核を成す。いずれも手巻きで仕立てられる。

02 — STORY · 物語

Duomètre(デュオメトル)、これまでの軌跡

The story of this series
01

複雑さと精度の二律背反

機械式時計に機能を足すたび、精度は損なわれる。クロノグラフを始動すれば歯車列に新たな負荷が加わり、カレンダーを駆動すれば主ぜんまいの力が分散する。香箱から調速機構へ届くトルクが変動すれば、歩度は乱れる。長らくこれは複雑時計が抱える宿命とされてきた。

2005年頃、ジャガー・ルクルトはひとつの問いに取り組む。クロノグラフを作動させても、止めても、まったく同じ精度を保つ機械は作れないか。技術者たちが辿り着いたのは、既存機構の改良ではなく、構造そのものの作り替えだった。後にDual-Wing(デュアルウィング)と呼ばれる発想である。当時の最高責任者ジェローム・ランベールは、これを「進化ではなく革命」と語ったと伝わる。

02

2007年、二つの動力源を持つ時計

Dual-Wingの原理は単純であり、徹底している。一つの時計のなかに、互いに干渉しない二つの歯車列を置く。それぞれが独自の香箱を持ち、片方は時刻表示を、もう片方は複雑機構を受け持つ。二つが共有するのは、ただ一つ——テンプと脱進機からなる調速機構だけである。複雑機構がどれだけ力を使おうと、時刻側の歯車列には影響が及ばない。

この思想が最初に結実したのが、2007年のジュネーブで発表されたデュオメトル・クロノグラフ(Ref. Q6011420ほか)であり、新作キャリバー380を搭載した。径42mmのケースに、二つの香箱がそれぞれ約50時間の動力を蓄える。秒針は1/6秒刻みで跳ねるフドロワイヤント(瞬間秒)を備えた。文字盤は構造を映し出すように設計され、時刻表示は3時–9時軸に偏心し、二つの動力表示が左右に置かれた。ブランドはこれを、クロノグラフの作動状態に関わらず精度を保つ最初の機構と位置づける。

03

鳴り物から暦へ — 概念の拡張

二輪式の発想は、すぐに他の複雑機構へ向かう。2009年のデュオメトル・グランドソヌリ(キャリバー182)は、約1,400もの部品と飛行式トゥールビヨン、永久カレンダーを収め、ウェストミンスター(ビッグ・ベン)の旋律を奏でる鳴り物時計だった。一方の歯車列が時刻と暦を、もう一方が打鈴機構を駆動する。

続く2010年のデュオメトル・カンティエーム・リュネール(キャリバー381)は、概念を日常的な複雑時計へと持ち込んだ。日付、月相、昼夜表示を備えたこのモデルは、シリーズで最も親しまれる存在となる。グランドコンプリケーションから実用的な複雑機構まで、Dual-Wingは規模を問わず成立することが示された。

04

秒を刻むトゥールビヨンと旅する時間

2012年のデュオメトル・スフェロトゥールビヨン(キャリバー382)は、別の方向へ精度を突き詰めた。調速側の歯車列が独自の動力を持つため、時刻合わせの際にもトゥールビヨンは止まらない。これを利用し、秒単位で正確に調整できるトゥールビヨンが実現した。ブランドはこれを、秒まで合わせられる世界初のトゥールビヨンと位置づける。

ほどなく登場したデュオメトル・ユニーク・トラベルタイム(キャリバー383)は、二輪式を旅の時計へ応用した。二つの時間帯がそれぞれ独立した香箱と動力表示を持ち、現地時間は分単位で調整できる。概念は次々と新たな複雑機構を生み続けた。

05

2024年、サヴォネットへの回帰

2024年のウォッチズ&ワンダーズで、デュオメトルは全面的に姿を変えた。19世紀の懐中時計サヴォネットに着想を得た新ケースは、34の部品からなり、ラグはねじ留めされ、ベゼルは丸みを帯び、風防は緩やかに膨らむ。地板と受けには、従来の銀に代えて黄味を抑えた真鍮が用いられた。

刷新の頂点が、デュオメトル・ヘリオトゥールビヨン・ペルペチュアル(キャリバー388、Ref. Q6202420)である。三つの軸で回転するトゥールビヨン「ヘリオトゥールビヨン」に永久カレンダー、ビッグデイト、月相を組み合わせた、径44mm・20本限定の作品だった。同時に発表されたクロノグラフ・ムーン(キャリバー391)は単押しクロノグラフと月相を、カンティエーム・リュネールはシリーズ初のステンレススチールケースをまとった。2026年にはプラチナのブレスレットを備えたヘリオトゥールビヨン(Ref. Q6206150)も続く。長くレベルソの陰に置かれてきたシリーズは、ひとつのテンプと二つの香箱という変わらぬ思想のまま、再び前面へと戻ってきた。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

デュオメトルが何より大切にしてきたのは、複雑機構を備えることと、精度を保つことを両立させる、という一点である。機能のための動力と時刻のための動力を分け、共有するのは調速機構だけにする。この構造上の選択が、シリーズのすべての意匠を規定している。

その思想は文字盤に率直に表れる。時刻表示は中央を外れて3時–9時軸に寄り、二つの動力表示が左右対称に並ぶ。一方は時刻側、もう一方は複雑機構側のぜんまい残量を示す。針は機能ごとに色を変えて読み分けを助け、複数の小文字盤は逆三角形に配される。粒状仕上げの落ち着いた文字盤は、二輪の構造をそのまま視覚へ翻訳したものだ。1/6秒で跳ねるフドロワイヤントが幾度も採用されてきたのも、複雑機構側が独立した動力を持つからにほかならない。

二系統の機械を一つのケースに収める以上、薄型化には限界がある。デュオメトルは細身であることを競わず、機構の密度を受け止める堂々とした厚みを引き受けてきた。これも、精度のための構造を譲らないという姿勢の裏返しである。

変わらなかったものは多い。二輪を映す対称の文字盤、二つの動力表示、そして手巻きであり続けるという選択。自動巻きのローターは構造の純度を乱すため、デュオメトルは一貫して手巻きを貫く。色や装飾を抑え、貴金属とステンレスの落ち着いた佇まいにとどめる自制も変わらない。2024年の刷新はケースの輪郭を、手のひらに収まる石鹸を語源とするサヴォネット型へと丸めたが、文字盤の文法には手を付けなかった。輪郭を替えても、見れば二輪式と分かる「顔」は保たれている。

同種の偏心配置はA.ランゲ&ゾーネのランゲ1 ムーンフェイズにも見られ、月相や動力表示を持つ点も近い。ただしデュオメトルを分けるのは、二系統の動力を機械的に切り離すという構造そのものであり、配置の妙だけではない。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2007-
Cal. 380
Dual-Wingを初実装、クロノでも精度を保つ。
2009-2010
Cal. 182 / 381
鳴り物と暦へ応用、調速機構のみ共有する。
2012-2013
Cal. 382 / 383
秒調整トゥールビヨンと二時間帯独立動力。
2015頃
Cal. 389
スフェロトゥールビヨンに月相表示を統合。
2024-現在
Cal. 388 / 391
三軸トゥールビヨンと単押しクロノを新設計。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2007

初代デュオメトル・クロノグラフ

Q6011420 Q6012420
42mmで登場した最初のデュオメトル。クロノグラフを搭載する。
2010

カンティエーム・リュネール

Q6042 Q6043 系
暦と月相を加え、後継の中核となった定番モデル。
2012

スフェロトゥールビヨン

Q6052520 Q6056590
秒単位で調整できるトゥールビヨンを備えた高複雑世代。
2013頃

ユニーク・トラベルタイム

Q6062420 Q6062520
二つの時間帯にそれぞれ動力源を割り当てた旅の時計。
2024-現在

サヴォネット型へ刷新

Q604848J Q6202420
サヴォネット型の新ケースとヘリオトゥールビヨンで刷新する。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive