設計思想
33mmという最小径
クラシック・フュージョンは、ウブロのコレクションのなかで最も古典的な顔立ちを持つ系列である。42mmや38mmが知られるが、本機が属するのは最も小さい33mm径のケースだ。手首の細い層を視野に入れた寸法であり、性別を問わず収まる中庸なサイズでもある。585.CM.7170.CMは、その33mmをブラックセラミックで成形し、ブルーの文字盤を与えた一本である。大ぶりなビッグ・バンとは距離を置いた、落ち着いた佇まいがこの径には似合う。
クォーツではなく自動巻を選ぶ
33mmのクラシック・フュージョンには、長らくクォーツ機が広く充てられてきた。小径のケースに機械式を収めることは、設計上の制約と価格の双方で割に合いにくいためである。事実、本機と同じブラックセラミックとブルー文字盤を共有しながら、クォーツのHUB2912を積む581.CM.7170系が併存する。585という頭番号は、その小径の枠内であえて自動巻を据えたことを示す符牒である。搭載するHUB1120は、ウブロが調達ベースの機械式に独自のローターと仕上げを与えた自動巻で、毎時28,800振動 (4Hz)、パワーリザーブは約40時間。ローターが巻き上げる秒針の滑らかな運針は、同じ外装をまとうクォーツ版の刻むような秒運びとは、明らかに異なる時間の質感をもたらす。
ブルーを主題に置く
本機の性格は、素材と色の組み合わせに集約される。黒いセラミックという硬質で無彩の地に、サンレイ仕上げの青い文字盤が一点の彩りを置く。ベゼルとケースの間に挟まれたブルーのレジンは、その青を縁取りへと延長する仕掛けだ。派生としては、ベゼルにダイヤモンドを伏せ込んだ585.CM.7170.CM.1204が同じ青の主題を引き継ぐ。素材違いのチタン (NX) やキングゴールド (OX) の33mm自動巻も同系に連なり、本機はそのなかでセラミックと青を担う位置にある。
意匠分析
ケースとブレスレットは、いずれもブラックセラミックで構成される。表面はサテンとポリッシュを切り分けて仕上げられ、無彩色の地に光の濃淡が生まれる。セラミックは傷がつきにくく、長く使っても艶が鈍りにくい一方、加工に手間がかかる素材であり、ケースからブレスレットまで通して用いた点に本機の性格が出ている。
ベゼルは、サテンの天面とポリッシュの面取りで縁を立て、6本のH型チタンスクリューで留める。このスクリューはクラシック・フュージョン共通の意匠だが、ここではチタンの銀色が黒い地に小さな対比を生む。ベゼルとケースの隙間には、ブルーのコンポジットレジン製インサートが挟み込まれる。無彩のケースに色の筋を一本通すこの部材が、文字盤の青を外周へと結び付ける。リューズはポリッシュのセラミック製で、ウブロのロゴが刻まれる。
文字盤はブルーのサンレイ仕上げで、中心から放射状に伸びる筋が光を受けて表情を変える。インデックスとハンドはステンレススティールの研磨材で、無垢の植字インデックスが青地から立ち上がる。日付窓は3時位置に開く。風防はサファイアクリスタルで、反射を抑える処理が施される。研磨された針とインデックスは、青のサンレイに対して光の角度で見え方が変わり、視認性は光環境に左右される面がある。ブレスレットは外側のリンクをポリッシュ、中央のリンクをサテンで仕上げて光沢を切り替え、黒メッキのフォールディングバックルで留める。33mmという径に対し、セラミックの密度ある重みが装着時の安定感をもたらす。
系譜と歴史
クラシック・フュージョンは、1980年代のウブロ初期作を下敷きに、より古典的な顔立ちで再構成された系列としてバーゼルワールドで発表された (発表年の確定は系列記事に譲る)。33mm径はそのなかで最小のケースとして加わり、自動巻のHUB1120を積む585系と、クォーツのHUB2912を積む581系が並行して展開された。
本機585.CM.7170.CMは、その33mm自動巻の枠で、ブラックセラミックのケースとブレスレットにブルーのサンレイ文字盤を合わせた構成として登場した。正確な発表時期は公式に明示された資料を確認できないが、流通在庫としては近年まで新品が出回っている。同じ青の主題を引き継ぎ、ベゼルに36個のダイヤモンド (計約0.76カラットと伝わる) を伏せ込んだ585.CM.7170.CM.1204が、派生として併存する。
2026年時点で、本機は公式オンラインの現行カタログには見当たらず、すでに定番展開からは外れたとみられる。