設計思想
クラシック・フュージョンという居場所
クラシック・フュージョンは、2010年のバーゼルワールドでウブロが発表したコレクションである。ブランドの象徴であるビッグ・バンに対し、薄く穏やかな輪郭を与えた、装いに寄り添う一族として位置づけられた。その原点は、1980年にカルロ・クロッコが手がけた初代「ウブロ」にある。舷窓(ポートホール)を思わせる丸いケースと、貴金属にラバーストラップを合わせる当時として斬新な発想が、ベゼルを留める6本のH型ビスとともに受け継がれている。異なる素材を組み合わせる「フュージョン」の発想は、黒セラミック・青文字盤・ラバーという本機の構成にも通じている。
ブルー・セラミックの一族と33mm
581.CM.7170.RXは、このクラシック・フュージョンを黒セラミックとブルー文字盤でまとめた系統に属する。同じ意匠は45mm、42mm、38mm、そして本機の33mmへと展開し、手首の太さや好みに応じて径を選べる構成になっている。本機はその最小径にあたり、シリーズの裾野を細い手首や端正な装いへと広げる役割を担う。上位の42mmや45mmが自動巻きを積むのに対し、33mmはクォーツのCal.HUB2912を選ぶ。これは性能の格下げというより、小径で薄い佇まいを保つための選択と理解するのが妥当である。電池駆動ゆえにケースは薄くまとまり、軽い装着感が得られる。
上位サイズとの距離、そして派生
本機は、より大きな542.CM.7170.RX(42mm)などと同じデザイン言語を共有する。黒セラミックの地に青を差す配色、Hビスのベゼル、サンレイ文字盤という骨格は共通である。一方で、ムーブメントと寸法において明確に分かれる。同じ33mmの枠には、ストラップをブルーのアリゲーターに替えた581.CM.7170.LRや、ケース素材をチタンとした581.NX.7170.RXといった兄弟が並ぶ。本機はそのうち、黒セラミックとラバーを選んだ標準形にあたる。
意匠分析
581.CM.7170.RXのケースは、直径33mmのブラックセラミックである。研磨とサテン仕上げを併用し、光沢面とつや消し面の対比で、小径ながら陰影を持たせている。セラミックは傷に強く、経年で発色が変わりにくい素材であり、黒の深さが長く保たれる。ベゼルも同じ黒セラミックで、6本のH型チタンビスで留められる。これはクラシック・フュージョンが初代から受け継ぐ意匠的な要点である。ラグの間にはブラシ仕上げを施したセンターリンクが渡され、黒一色の中に質感の変化を加えている。
ベゼルとケースの間には、ブルーのコンポジットレジン製ガスケットが挟み込まれる。正面からはわずかに覗く程度だが、黒のケースに青の細い線を走らせ、文字盤の色と呼応させる役割を負う。
文字盤はブルーのサンレイ仕上げで、光の角度によって表情を変える。インデックスはサテン仕上げのスティール製アップリケ、針はロジウムめっきの研磨仕上げで、暗い背景に対して視認性を確保する。日付窓は3時位置に置かれる。風防はサファイアクリスタルで、無反射コーティングが施される。
リューズはラバーチップを備えた黒セラミック製で、操作部にも素材の統一感がある。クォーツのため裏蓋はソリッドで、薄さを優先した構造をとる。ストラップはブルーのラインを入れたラバーで、留め具は黒色めっきのスティール製フォールディングバックル。33mmという径とクォーツの薄型構造が相まって、手首に低く収まるプロポーションに仕上がっている。
系譜と歴史
581.CM.7170.RXは、クラシック・フュージョンを黒セラミックとブルー文字盤でまとめた系統の一員である。ウブロはこのブルー系の配色を2020年前後にクラシック・フュージョンの各径へ広げたとされ、本機はその最小サイズとして加わった。流通する個体には2022年製造のものが確認できる。
同じブルー・セラミックの展開には、時刻表示のみのモデルに加え、6時位置に日付を置く42mmのクロノグラフ541.CM.7170.RXも含まれる。本機と同じ33mmの枠では、ストラップをブルーのアリゲーターレザーに替えた581.CM.7170.LR、ケースをチタンに置き換えた581.NX.7170.RXが兄弟にあたる。上位径では42mmの542.CM.7170.RX、45mmの511.CM.7170.RXが同じ意匠を共有する。
本機は発表以降、ムーブメントや基本仕様に大きな変更は確認されていない。ウブロの公式カタログにはブルー系セラミックのクラシック・フュージョンが現在も掲載されており、本機もその一角として扱われている。生産終了を示す公式の告知は、本稿執筆時点では確認できない。なお参照番号のうち「CM」は黒セラミックのケース素材を、「RX」はラバーストラップを示し、同じ33mmでもレザー仕様やチタン仕様とは末尾で区別される。