HUB2912
1980年の初代に連なるクォーツの系譜を、クラシック・フュージョン33mmへ受け継ぐ3針デイトキャリバー
HUB2912は、ウブロのクラシック・フュージョン33mmに搭載されるアナログクォーツキャリバーである。中央秒針と日付表示を備え、構成部品は38点、電池寿命はおよそ3〜5年とされる。ベースとなる地板の出自は公表されていない。スイス製の汎用クォーツを土台に、ウブロがHUB番号を付して採用したものと見られる。1980年の初代ウブロがクォーツであった系譜を、現行ラインの最小径に受け継ぐ位置づけにある。チタンやキングゴールド、セラミックなど多様な外装で展開される。
| Maker | Hublot |
|---|---|
| Reference | HUB2912 |
| Type | Quartz |
| Display | Analog |
| Jewels | 3 石 |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. クォーツに始まったウブロ
ウブロの第一作は、1980年にカルロ・クロッコがMDMジュネーブの名で発表した「ウブロ」である。金無垢ケースに天然ラバーストラップを組み合わせた舷窓型の時計であった。異素材の融合という発想は、ここで「アート・オブ・フュージョン」の起点となった。そして初代ウブロが積んでいたのはクォーツムーブメントであった。機械式の複雑機構で名を上げた現在のウブロにとって、クォーツは異物ではない。むしろ出発点の記憶である。HUB2912は、その系譜を現行ラインの最小径に受け継ぐキャリバーと位置づけられる。
2. HUB番号とアウトソースの設計
ウブロは、自社開発のウニコやメカ10、MPシリーズを機械式の主役に据えてきた。一方、エントリー域や小径モデルには外部供給のムーブメントを採用している。これらにもHUB番号が付される。現行クラシック・フュージョンの38mm・42mmが積むHUB1110は、セリタSW300-1を土台とする自動巻である。33mmが積むHUB2900系も同様に、スイス製の汎用クォーツを基盤としたものとされる。地板の正確な出自は公表されていない。小径やレディース域に汎用クォーツを充てる設計は、寸法的制約への現実的な回答でもある。機械式の薄型化が難しい径では、合理性が優先される。
3. HUB2900系の系譜と現行での位置
収集家の資料によれば、この一群はHUB2900を基本形とする。針の取り付け高さを変えたHUB2910・HUB2912が、そこから派生したとされる。2023年に刷新されたクラシック・フュージョン・オリジナルでは、棲み分けが明確になった。38mm・42mmが自動巻、33mmがクォーツである。初代の純粋なクォーツ路線を唯一受け継ぐのが、この33mmである。直近でも、2026年のLVMHウォッチウィークでセージグリーンの33mm版が加えられた。HUB2912は現行カタログで生き続けている。表舞台の機械式キャリバーではないが、最小のクラシック・フュージョンを確実に動かす実務の心臓である。
技術解説
HUB2912はアナログ式のクォーツキャリバーである。時間の基準を刻むのは水晶振動子で、電池からの電流を受けて毎秒32,768回の周波数で振動する。この値は2の15乗にあたる。回路で15回にわたり段階的に半分へ分周すると、ちょうど1秒に1回の信号が得られる。アナログクォーツが共通して用いる基準値であり、ウブロは個別の数値を公表していない。
分周された信号は、一般にラベ式と呼ばれる単コイルのステッピングモーターを駆動する。これは電気パルスごとに回転子が一定角度ずつ進む小型モーターである。その回転が輪列を介して中央の秒針・分針・時針へ伝えられる。日付は3時位置に表示され、24時間ごとに送られる。日付の早送りは、りゅうずの操作で行える構成が一般的である。
構成部品は38点とされ、機械式に比べて部品点数は大幅に少ない。ヒゲゼンマイやテンプ、脱進機といった機械式特有の調速機構を持たないためである。精度は水晶の固有振動に委ねられる。石(ジュエル)も輪列の軸受など最小限にとどまり、石数が前面に出るスペックではない。電池寿命はおよそ3〜5年とされ、回路の消費電流と電池容量の釣り合いで決まる。精度の指標も機械式とは異なる。月差±15〜20秒という水準が一般的なアナログクォーツの域だが、この個体値もウブロは明示していない。外径や厚みも同様に非公表で、汎用クォーツに準じた構成と見るのが妥当である。
クォーツならではの利点もある。調速をヒゲゼンマイに頼らないため、磁気の影響を受けにくい。機械式の基幹であるヒゲゼンマイは磁化すると精度を乱すが、水晶振動子にその弱点はない。ただしモーターのコイルは強磁場の影響を受けうるため、完全な耐磁ではない。精度は工場で調整されて出荷され、機械式の緩急針のような日常的な追い込みは想定されない。日々の保守は電池交換と、防水を保つためのパッキン点検が中心となる。なお、同じクラシック・フュージョンでも基準は分かれる。38mm・42mmのHUB1110は28,800vph (4Hz)で時を刻む機械式である。32,768Hzの水晶で時を計るHUB2912とは、時間の指標そのものが異なる。
仕上げの面では、このキャリバーは観賞を前提としない。33mmのクラシック・フュージョンはソリッドバックを採用する。ムーブメントはケース内に収まって表には現れない。サファイアクリスタル越しに機構を見せ、装飾を施すウニコ系の機械式とは、設計の狙いが異なる。クロノメーターのような機械式精度認定の対象ともならない。温度や姿勢の影響を受けにくいクォーツ本来の安定性が、実用上の精度を支える。50m防水とサファイア風防は外装側の仕様だが、堅牢性という性格はこのキャリバーと整合している。