設計思想
1. ブルーの潮流と、ドレスダイバーの色替え
WGCA0010が属するCalibre de Cartier Diverのブルー仕様は、2016年のSIHHで発表された。当時の高級時計市場では、定番モデルの文字盤を青へ置き換える流れが各社で広がっていた。Cartierもこの潮流に乗り、それまで黒で統一してきたDiverに、青の文字盤とセラミックベゼルをまとわせた。
Calibre de Cartier Diverは、もともとドレスウォッチの血を引くスポーツダイバーである。青への置き換えは、その二面性をより軽やかに見せる選択だった。とりわけ総18KピンクゴールドのWGCA0010は、金無垢の量感と、海を思わせる青の対比が際立つ構成となった。
2. 黒からの継承と非継承
WGCA0010の直接の前身は、同じ総ピンクゴールドのケースに黒文字盤を組み合わせたW7100052である。両者の関係は、ケース・ムーブメント・防水性能をそのままに、色だけを入れ替えた構図に近い。
変わらなかったのは、42mmのケース、自社製自動巻きCal.1904-PS MC、そして300m防水とISO 6425準拠のダイバー仕様である。変わったのは、ベゼルインレイの素材(ADLCコーティングからセラミックへ)と、文字盤・ベゼルの色だった。機構ではなく、見え方の刷新に絞った色替えだったと言える。
3. Calibre de Cartier史における位置
Calibre de Cartierは、2010年にCartierが男性向けのスポーティな丸型として打ち出したコレクションである。2013年末に予告されたDiverは、その土台の上に300m防水とISO 6425準拠を載せた、Cartier初の本格ダイバーであった。
WGCA0010は、そのDiverの中でも装飾性の高い総ピンクゴールドとブルーの組み合わせを担う。同じ仕様でストラップだけを青いカーフ&ラバーに替えたWGCA0009が兄弟Refとして併売され、ステンレススチール版やコンビ版(W2CA0009)も存在した。色一つでドレスとスポーツの均衡を動かす、Cartierらしい配色設計を体現したRefである。
意匠分析
WGCA0010の設計上の核心は、基幹Diverの黒を青へ置き換えたことで生まれる、ドレスとスポーツの中間的な性格にある。
文字盤は中央が平滑で、外周へ向かって同心円状のギヨシェ(部分スネイル仕上げ)を刻んだブルーであり、光の角度で濃淡が大きく変化する。Calibre de Cartier共通の意匠であるローマ数字を上半分に配し、6時にスモールセコンドの小径ダイヤル、3時に縦長の日付窓を置く。針はソード型で、時・分針はゴールド仕上げのスチール、秒針はスチール製。いずれもSuper-LumiNova(蓄光塗料)を備える。青い文字盤と金色の針が生むコントラストが、ダイバーでありながら装飾時計としての表情を残す。
ベゼルは一方向回転式で、インレイにはブルーのハイテクセラミックを用いる。黒文字盤の前任W7100052がADLCコーティングのインレイを採用したのに対し、本機はセラミックそのものの発色で青を表現する点が異なる。ベゼル外周には18Kピンクゴールドのリングが回り、金とセラミックの対比が手首側からの見え方を引き締める。
ケースは42mm、厚さ11mm。300m防水のダイバーとしては薄く、総ピンクゴールドの量感をプロポーションで抑えている。リューズはファセットカットを施した18Kピンクゴールドで、頂部に青い石(公式表記はサファイア)を留める。これはCalibre de Cartierが踏襲してきた意匠で、Diverではねじ込み式として残された。
ストラップは青いラバーで、尾錠は18Kピンクゴールドのアルディオン(ピンバックル)である。金無垢ケースの重量をラバーで受け止める構成は、ドレスダイバーという本機の立ち位置をそのまま映している。搭載するのは、2010年のCalibre de Cartierで初投入されたCartier初の自社製自動巻きCal.1904-PS MCである。
系譜と歴史
Calibre de Cartier Diverのブルー仕様は、2016年1月にジュネーブで開催されたSIHH(国際高級時計サロン)で発表された。基幹となるCalibre de Cartier Diverは2013年末に予告され、2014年から市場に出たモデルであり、ブルー仕様はその約2年後、黒で統一されていた文字盤とベゼルを青へ置き換える色違いの展開として加わった。
2016年の発表時、ブルー仕様は素材違いで複数のRefが用意された。ステンレススチール、ステンレススチールとピンクゴールドのコンビ(W2CA0009)、そして総18Kピンクゴールドである。WGCA0010は、この総ピンクゴールド版のうち、青いラバーストラップを合わせた構成を指す。同じケースに青のカーフ&ラバーストラップを組んだWGCA0009が併売され、両者はストラップ仕様のみが異なる兄弟Refの関係にある。
搭載するCal.1904-PS MCをはじめ、ケースや防水性能は黒文字盤の前任W7100052から据え置かれ、生産期間を通じて文字盤・ベゼルの色以外に目立った仕様変更は確認されていない。
Calibre de Cartierのコレクション自体は、2010年代の末にかけてCartierのカタログから段階的に整理されたと伝わる。WGCA0010もこの流れの中で姿を消したとみられるが、生産終了の正確な年の特定には至っていない。