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CARTIER · SERIES

Ballon Blue de Cartier

バロンブルー ドゥ カルティエ

角形を語ってきた名門が、丸いケースを自らの顔に変えた一本。青いカボションが浮かぶ。

36.6 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Ballon Bleu de Cartierは、2007年にカルティエが発表したラウンドウォッチである。リューズを抱き込む弧と青いカボション、ドーム状に膨らむケースを核に、角形で知られた名門が「丸」を自社の顔へと変えた。28mmから46mmまでの多彩なサイズを持つユニセックスの設計で、フライングトゥールビヨンやクロノグラフ、ムーンフェイズへと展開。自社製ムーブメントの普及とともに、いまやカルティエを代表する一本となっている。

02 — STORY · 物語

Ballon Blue de Cartier(バロンブルー ドゥ カルティエ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

角形の名門が挑んだ「丸」

カルティエの時計史は、丸ではない形の歴史である。1904年のサントス、1917年のタンク、そしてトーチュ、クロッシュ、クラッシュ。20世紀を通じてカルティエは、角形・樽形・異形のケースを自らの言語としてきた。丸いケースは、むしろ「カルティエらしくない形」だった。

その丸に正面から取り組んだのが2007年である。ジュネーブのSIHHで発表されたBallon Bleu de Cartierは、ありふれた円形でありながら、ひと目でカルティエと分かる時計を目指していた。課題は明快だった。丸いだけでは、無数のラウンドウォッチに埋もれる。形そのものに固有の物語を持たせなければならない。

02

浮かぶケース、文字盤を貫く弧

答えは、リューズを抱き込む金属の弧にあった。3時位置に置かれた青いカボション(多くは合成スピネル、一部はサファイア)は、ケースから伸びる弧状のガードに守られ、その弧が文字盤の縁にまで食い込む。完全な円のなかに非対称の切れ込みが生まれ、ローマ数字の配置はわずかにずれる。これがBallon Bleuの顔となった。

ケースは表裏ともにドーム状に膨らむ。この二重の曲面が、腕の上で時計が浮かぶような装着感を生む。「青い風船」という名は、宙に浮かぶようなケースと、このカボションの双方に由来すると伝わる。文字盤にはローマ数字、レールウェイ型の分目盛り、ブルースティールの剣形針。タンクやサントスから受け継いだカルティエの文法が、丸の上で再構成された。

発表時から、Ballon Bleuは28mmから46mmまでの多彩なサイズで展開された。男女いずれの腕も想定したユニセックスの設計であり、これは後年の評価を決定づける選択となる。

03

ジュネーブシールへの飛躍

カルティエは1990年代末から、ムーブメントの自社開発に舵を切っていた。その成果が最初に披露された舞台のひとつが、Ballon Bleuである。2008年、大型のケースに収められたフライングトゥールビヨン、Cal. 9452 MCが姿を現した。カルティエ初の自社製ムーブメントであり、同社で初めてジュネーブシール(ポワンソン・ド・ジュネーブ)の認定を受けた機械でもある。橋を持たずに宙へ浮くC字型のキャリッジが、毎時21,600振動 (3Hz)で時を刻む。一般への正式発表は2009年のSIHHであったとされる。

2009年頃にはクロノグラフが加わり、44mmのケースに当初は調達ベースのCal. 8101 MCを搭載した。2013年からは自社製のCal. 1904-CH MCへと移行する。1904という数字は、ルイ・カルティエが飛行家サントス=デュモンのために初の紳士用腕時計を手がけた年を指す。ジュエラーとしてではなく時計製造者として認められること。その意思を、カルティエは最も売れているBallon Bleuに託した。

04

調達から自製へ

複雑機構が脚光を浴びる一方、主力の三針モデルは長らくETA系の調達ムーブメント(42mmのCal. 049など)に依存していた。転機は2015年である。クレ・ドゥ・カルティエとともに発表された自社製自動巻きCal. 1847 MCが、やがてBallon Bleuの主要サイズへも展開された。創業年の1847にちなむこのキャリバーは、ETAの供給が非スウォッチ系ブランドに絞られていく状況への、現実的な備えでもあった。

2016年には37mmのムーンフェイズが加わる。月の満ち欠けを示すこのモデルは、自社モジュールによる複雑機構を日常的なサイズに落とし込んだものだった。Ballon Bleuは、トゥールビヨンからムーンフェイズ、そして三針日付まで、ひとつの意匠で幅広い時計製造を抱える器へと育っていた。

05

ユニセックスの象徴と、現在地

Ballon Bleuは、発表から数年でカルティエを代表する一本となった。性別を問わない設計は、結果として時代の感性と合致する。ウェールズ公妃キャサリンが愛用することでも知られ、その存在は商品の枠を超えた文化的な記号となった。

2021年、コレクションに40mmが加わる。工具を使わずにストラップとブレスレットを交換できる機構を備え、Cal. 1847 MCを搭載するこのサイズは、ユニセックスの中心を担う寸法として迎えられた。33mmには小径の自社製Cal. 1853 MCが用いられ、ダイヤルの色数も増えている。

発表から18年を経てなお、ケースの基本意匠はほとんど変わっていない。リューズを抱く弧、浮かぶようなドーム、丸のなかの非対称。最初の一本で示された言語が、いまも揺るがずに続いている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Ballon Bleuの設計思想は、ひとつの問いから出発している。角形を自らの言語としてきたカルティエが、いかにして丸いケースを自社の顔にするか、という問いである。

答えは「丸を、ただの丸にしない」ことだった。中心にあるのは、リューズを抱き込む金属の弧である。多くのラウンドウォッチがリューズを単なる操作部品として扱うのに対し、Ballon Bleuはそれをケースと一体の造形要素に変えた。弧は文字盤の縁を侵し、完全な円のなかに意図的な非対称をつくる。この一点が、遠目にも他と見分けのつく輪郭を与えている。

弧に守られた青いカボションは、機能と装飾の境界にある。リューズを保護するという点ではパネライのリューズブリッジに通じる発想だが、その造形は工具的ではなくむしろ流麗で、宝飾の論理に貫かれている。ダイバーズウォッチのベゼルが潜水の安全という実用から形を得るのとは対照的に、Ballon Bleuの弧は識別性と美のために存在する。

ケースの二重の曲面も、思想の表れである。表裏ともにドーム状に膨らむプロポーションは、視覚的に「浮かぶ」印象を与えると同時に、腕への収まりを良くする。30m防水という控えめな数値が示すとおり、これは水中の道具ではなく、装うための時計である。

変えなかったものは明快だ。弧とカボション、ローマ数字とレールウェイ目盛り、剣形のブルースティール針、そしてローマ数字のひと文字に署名を忍ばせるカルティエの慣わし。変えてきたのは、サイズと素材、そして内部のムーブメントである。意匠の核を固定し、可変要素を周縁へ逃がす。この分離こそが、長年にわたって「Ballon Bleuの顔」を保ってきた理由である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2007-2015頃
Cal. 049 / 076 系 (ETA供給)
ETA系の調達自動巻きとクォーツの混在期。
2008-
Cal. 9452 MC
自社初、ジュネーブシール認定のトゥールビヨン。
2009-
Cal. 8101 / 1904 系
クロノグラフ用、後に自社1904系へ移行。
2015-
Cal. 1847 MC
ETA系を置換した自社製の主力自動巻き。
2022-
Cal. 1853 MC
33mm向けに展開した小径の自社製自動巻き。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2007

初代Ballon Bleu

W69 系
多サイズで登場、リューズを抱く弧とカボションで丸を顔に変える。
2008-

フライングトゥールビヨン

W6920021 ほか
Cal. 9452 MC搭載、カルティエ初のジュネーブシール認定機。
2009-

44mmクロノグラフ

W6920002 W6920052
44mmで複雑機構化、2013年に自社製1904系へ移行。
2016-

ムーンフェイズ37mm

WSBB0020 WSBB0029
自社モジュールで月相を加えた複雑機構の派生。
2021-

40mmサイズの登場

WSBB0039 WSBB0040
可換ストラップ機構を備え、Cal. 1847 MCを搭載。
2022-現在

現行コレクションの拡充

WSBB0044 ほか
33mmに自社Cal. 1853 MC、ダイヤルの色数も拡充。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive