角形の名門が挑んだ「丸」
カルティエの時計史は、丸ではない形の歴史である。1904年のサントス、1917年のタンク、そしてトーチュ、クロッシュ、クラッシュ。20世紀を通じてカルティエは、角形・樽形・異形のケースを自らの言語としてきた。丸いケースは、むしろ「カルティエらしくない形」だった。
その丸に正面から取り組んだのが2007年である。ジュネーブのSIHHで発表されたBallon Bleu de Cartierは、ありふれた円形でありながら、ひと目でカルティエと分かる時計を目指していた。課題は明快だった。丸いだけでは、無数のラウンドウォッチに埋もれる。形そのものに固有の物語を持たせなければならない。