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BULGARI · SERIES · SINCE 1948 · 現行

Serpenti

セルペンティ

無溶接の蛇腹ゴールドから生まれ、宝飾が時計を内包する。ブルガリを象徴する蛇の系譜。

since 1948 現行 掲載モデル 27 mm – 35 mm
01 — 概要 / SUMMARY

セルペンティは、1948年にブルガリが世に出した蛇をかたどるジュエリーウォッチの系譜である。無溶接で組むTubogasの蛇腹ブレス、頭部に文字盤を隠すシークレットウォッチを核とし、宝飾と時計を一体に扱う。現在はTubogas、Seduttori、ハイテクセラミックのSpiga、円形ダイヤルに蛇身を巡らせるIncantatiなどへ枝分かれする。エリザベス・テイラーが愛したことでも知られ、古代から続く再生と永遠の象徴を、ローマの宝飾として更新し続けてきた一族である。

02 — STORY · 物語

Serpenti(セルペンティ)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ガス管から生まれた蛇

第二次世界大戦の直後、宝飾の世界は重い宝石づくしを求めなかった。磨かれた金属が、節度あるきらめきとして好まれた時代である。1948年、ブルガリはその気分に応えるように、金の蛇腹ブレスレットの先端に時計を据えた一本を世に出した。これがセルペンティの起点とされる。

ブレスレットの構造はTubogas(トゥボガス)と呼ばれる。1920年代に普及したガス管の形に着想した名で、長い金の帯を芯に巻きつけ、丸みを帯びた縁どうしをかみ合わせて筒状に組む。はんだを一切使わないため内部の構造は隠れ、しなやかな弾力が生まれる。手首に吸いつく装着感は、この無溶接の技法から来ている。最初の一本が作られたのち、職人がこの技を完全に手中に収めるまでには、さらに15年ほどを要したと伝わる。

02

鱗と「隠された時計」

1950年代、すべては手作業で生み出された。同じ個体は二つとなく、ブルガリの保管庫には1000近い下絵が残るという。ムーブメントは自社では持たず、ジャガー・ルクルト、ヴァシュロン・コンスタンタン、ピアジェ、のちにモバードといった当代の専業メーカーから供給を受けた。文字盤には供給元の名が併記されることも多く、いずれも手巻の機械式であった。

1950年代の半ばからは、抽象的なTubogasと並んで、より生物的な意匠が試みられる。蛇の頭をかたどったケースに蓋を設け、その内側に文字盤を隠すシークレットウォッチがここで生まれた。時刻は、頭部を開いたときにだけ姿を見せる。見せるための時計ではなく、まとうための時計という発想が、この時点で形になっている。

03

ローマの甘い生活とエリザベス・テイラー

1960年代のローマは、映画『クレオパトラ』の撮影地となり、空前の熱気に包まれた。主演のエリザベス・テイラーは宝飾を愛したことで知られ、1962年の撮影現場では、初期のシークレット仕様のセルペンティを腕に巻いた姿が記録されている。なお劇中の衣裳で着けた蛇の腕輪は映画会社の小道具であり、ブルガリの作品とは別物である。共演のリチャード・バートンが「彼女が知るイタリア語はブルガリだけだ」と語ったと伝わるのも、この時期の逸話である。

蛇は当時の流行の中心にあった。1968年、『ヴォーグ』編集長ダイアナ・ヴリーランドは「蛇を忘れないで。あらゆる指と手首に」と社内に書き送ったとされる。鱗をまとうブレスは、無地や彫金、半貴石の象嵌、極彩色のエナメルへと展開した。エナメルの鱗は一枚ずつ焼成され、見えない小ねじで留められたという。

04

Tubogasの復権と自社化

1970年代、暮らしと装いがくだけるにつれ、Tubogasが再び支持を集めた。手の込んだ鱗の意匠は1970年代半ばで生産を終え、およそ30年後まで姿を消したとされる。この頃ブルガリはスチールとゴールドの組み合わせを導入する。融点も展性も大きく異なる二つの金属を一体に組むのは難度が高く、初期の二色仕上げは純金製より高価だったと伝わる。

1977年、ブルガリはブランド名を2度刻んだベゼルを持つ腕時計Bulgari-Bulgariを発表し、1980年代の初めにはスイスのヌーシャテルに時計の子会社を設けた。ただしムーブメントは、その後も長く他社から調達している。やがてBulgari-BulgariのケースをTubogasに据えた一本が加わり、ロゴを前面に出す大胆さで支持を広げた。2本・3本・5本巻きのこのモデルは、長く作り続けられたとされる。

05

幾何学への回帰と機械式の帰還

2009年、ブルガリは創業125周年に合わせ、セルペンティをより幾何学的な姿で復活させたとされる。頭部は三角形に近づき、マザーオブパールやオニキスの文字盤を露出させ、鱗は角ばって厚みを増す。現行セルペンティの意匠は、この刷新を起点とする。翌2010年には、ブレスとケースを継ぎ目なく融合させた新しいTubogasが続いた。

2016年は転機の年である。円形のケースの縁に蛇身を平面的に巡らせ、頭が尾を越えて重なるIncantatiが登場した。その41mmのトゥールビヨン版は、手巻のスケルトン トゥールビヨン、キャリバーBVL 208を載せ、セルペンティに初めて複雑機構をもたらした。意匠を率いたファブリツィオ・ボナマッサ・スティリアーニは、保管庫に眠る1930年代のブローチに着想を得たとされる。2014年に登場していたSpigaにも、同年、全体をハイテクセラミックで仕立てた版が加わった。2017年には革ストラップの軽快なTwist、2019年には蛇鱗を主役に据えた一体型ブレスレットのSeduttoriが、新たな主軸として投入される。

06

蛇が時計になるとき

2020年、ブルガリはSeduttoriのために異形の手巻トゥールビヨン、キャリバーBVL150を起こした。ケースの形に合わせて機械を設計するという、通常とは逆の手順で作られた小型ムーブメントである。高級宝飾の領域では、極小の手巻PiccolissimoがシークレットウォッチMisteriosiに収められた。

2025年、蛇の干支に合わせて発表されたのが自社製の自動巻キャリバーBVS100 Lady Solotempoである。直径19mm・厚さ3.90mm・重さ5gという小ささで50時間のパワーリザーブを備え、TubogasとSeduttoriが初めて自動巻として完成した。宝飾として始まった蛇は、日常の仕様にまで自社製の機械を得たことになる。脱皮を繰り返す蛇のように、セルペンティはなお形を変え続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

セルペンティを貫く設計の論理は、ダイバーズウォッチのそれとは正反対の位置にある。潜水時計が機能から形を導くのに対し、セルペンティは蛇という形が全体を支配する。時計は宝飾に従属し、時刻表示はしばしば後景に退く。頭部がそのままケースとなり、最初期から長く、文字盤は頭を開いたときだけ現れる隠されたものであった。視認性を最優先する道具時計の文法とは、出発点からして異なる。

意匠の骨格は二つの極のあいだを往復してきた。一方は抽象と幾何の極で、Tubogasの無溶接ブレス、2009年の三角形ヘッド、Seduttoriの面構成がこれにあたる。もう一方は自然主義の極で、1960年代の鱗ブレスやエナメルの蛇体がそれである。この振り子のような往還が、蛇が脱皮するという比喩でしばしば語られる更新の作法を生んでいる。

連続性を担保するのは、いくつかの動かない要素である。第一に蛇の意匠そのもの。第二に頭部をケースとする構造。第三に鱗という単位で、ヴィンテージのエナメル鱗、Seduttoriの六角リンク、Spigaのセラミック製の麦穂状ブレスへと姿を変えながら受け継がれる。リューズにカボションのサファイアやルビーを据える手法も、蛇の眼を思わせる宝飾的な符牒として繰り返されてきた。

同じ宝飾系の時計でも、他のメゾンが蛇を一つのモチーフとして扱うのに対し、ブルガリはそれをシリーズの主題そのものに据えた。優劣ではなく、賭け金の置きどころの違いである。ローマの古典に根ざした太い造形と色彩の大胆さが、ブルガリの蛇を一目で識別させる。

70年を超えてセルペンティの顔が保たれてきたのは、流行に合わせて鱗の表情や素材を入れ替えながらも、頭部とブレスが一体となって手首を巻くという基本構造を変えなかったからである。近年はその宝飾の論理の上に、自社製の機械式という時計としての中身を重ねつつある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1948-1970年代
外部供給の手巻 (JLC / Vacheron Constantin 等)
ジュエラー期。機械は専業他社から調達。
1980年代-2000年代
他社製ムーブメント
時計子会社を設立、機械は他社から調達。
2016-
BVL 208(Incantati Tourbillon)
シリーズ初の複雑機構、手巻トゥールビヨン。
2020-
BVL150
Seduttori 用の異形手巻トゥールビヨン。
2025-
BVS100 Lady Solotempo
シリーズ初の自社自動巻、時分秒表示。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1948-1950年代

初代 Tubogas

Tubogas(初期型)
無溶接の蛇腹ゴールド、ヘッドがケース。系譜の起点。
1950年代後半-1960年代

自然主義のスケイル期

鱗ブレス Secret Watch
全身に鱗をまとい、頭部に文字盤を隠す世代。
1970年代-2000年代

Tubogas 復権世代

Bulgari-Bulgari 系
スチール×ゴールド、刻印ベゼルで長期生産の定番に。
2009-2010

幾何学リデザイン

現行Tubogasの起点
125周年で三角形ヘッドに刷新、現行意匠の基準形。
2014

麦穂ブレスのスピガ登場

Spiga(102129 ほか)
スチールか金のケースにセラミックの麦穂ブレス。
2016

円形ケースのIncantati

Incantati Spiga
蛇身が円形ケースを巡り、全セラミックのSpigaも。
2019-

Seduttori 登場

Seduttori(103系)
蛇鱗の一体型ブレス、ドロップ型ケースの新主軸。
2025-

自動巻世代

BVS100搭載 Seduttori Tubogas
主要モデルが初の自社自動巻に到達した世代。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Bvlgari History: 1970s 公式 · Bulgari · 2026.10.19 閲覧 Bulgari · 2026.10.19
  2. 02 公式 Serpenti Bvlgari Heritage Collection 公式 · Bulgari · 2026.10.19 閲覧 Bulgari · 2026.10.19
  3. 03 報道 Bulgari unveils the Solotempo BVS100 automatic movement 報道 · Forbes Australia · 2026.10.19 閲覧 Forbes Australia · 2026.10.19
  4. 04 報道 Prezioso fuori e dentro 報道 · Il Sole 24 Ore · 2026.10.19 閲覧 Il Sole 24 Ore · 2026.10.19
  5. 05 報道 The One: The enduring appeal of Bulgari's signature Serpenti Tubogas watch 報道 · Marie Claire UK · 2026.10.19 閲覧 Marie Claire UK · 2026.10.19
  6. 06 専門メディア Bulgari Serpenti Seduttori Tourbillon rose gold 専門メディア · Europa Star · 2026.10.19 閲覧 Europa Star · 2026.10.19
  7. 07 専門メディア First Look: The New Bulgari BVS100 Lady Solotempo Automatic Debuts inside the Iconic Serpenti 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.19 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.19
  8. 08 専門メディア Return of Bulgari's Serpenti snake watches for women 専門メディア · The Jewellery Editor · 2026.10.19 閲覧 The Jewellery Editor · 2026.10.19
  9. 09 専門メディア Serpenti Incantati Skeleton Tourbillon 専門メディア · Worldtempus · 2026.10.19 閲覧 Worldtempus · 2026.10.19
  10. 10 専門メディア Serpenti and the forbidden fruit 専門メディア · Worldtempus · 2026.10.19 閲覧 Worldtempus · 2026.10.19
  11. 11 ブログ Bulgari ブログ · Time Transformed · 2026.10.19 閲覧 Time Transformed · 2026.10.19
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 3 モデル

3 references in archive