ガス管から生まれた蛇
第二次世界大戦の直後、宝飾の世界は重い宝石づくしを求めなかった。磨かれた金属が、節度あるきらめきとして好まれた時代である。1948年、ブルガリはその気分に応えるように、金の蛇腹ブレスレットの先端に時計を据えた一本を世に出した。これがセルペンティの起点とされる。
ブレスレットの構造はTubogas(トゥボガス)と呼ばれる。1920年代に普及したガス管の形に着想した名で、長い金の帯を芯に巻きつけ、丸みを帯びた縁どうしをかみ合わせて筒状に組む。はんだを一切使わないため内部の構造は隠れ、しなやかな弾力が生まれる。手首に吸いつく装着感は、この無溶接の技法から来ている。最初の一本が作られたのち、職人がこの技を完全に手中に収めるまでには、さらに15年ほどを要したと伝わる。