本文へ
BREGUET · SERIES

Classique

クラシック

近代時計の顔を定めた A.-L. Breguet の意匠コードを、腕時計として受け継ぐドレスウォッチの正統

01 — 概要 / SUMMARY

Classique は、1775年にパリで創業した Breguet の中核を成すドレスウォッチの系譜である。創業者 A.-L. Breguet が定めた Breguet 針、傾いた Breguet 数字、ギヨシェ文字盤、コインエッジのケースといった意匠コードを、現代の腕時計として受け継ぐ。薄型2針の 5157 / 5177、世界最薄級の自動巻を実現したトゥールビヨン 5367 / 5377、ムーンフェイズの 7137 / 7787、そして創業250周年の Souscription など、簡素な時刻表示から複雑機構までを擁する。近代時計設計の祖の意匠を、最も直接に体現するコレクションである。

02 — STORY · 物語

Classique(クラシック)、これまでの軌跡

The story of this series
01

意匠コードはいかに生まれたか

Breguet の歴史は、1747年にヌーシャテルで生まれた Abraham-Louis Breguet が、1775年にパリのシテ島、ケ・ド・ロルロージュへ工房を構えたところから始まる。28歳での独立であった。

後世に決定的な影響を残したのは、技術以上に、可読性を最優先する意匠の体系である。先端をくり抜いた「ポム(りんご)」型の針——いわゆる Breguet 針——は1783年に考案された。傾いたアラビア数字の Breguet 数字、そして1786年ごろ文字盤へ導入したギヨシェ(機械彫りの幾何学模様)も、同じ時期に整えられた。ギヨシェ自体は装飾工芸に古くからあったが、文字盤へ体系的に持ち込んだのは Breguet が先駆けと伝わる。

これらは華美のためではない。針と地板のコントラストを高め、時刻を一目で読ませるための選択であった。ケース側面に刻まれた細かな溝——コインエッジ——も、同時代の過剰な装飾とは異なる、抑制された記号である。

1796年に売り出した「スースクリプション(予約購読)時計」は、その思想を端的に示す。白いエナメル文字盤に針は1本のみ。複雑機構を持たない、日常の道具としての時計であった。そして1801年6月26日、重力による精度の乱れを抑えるトゥールビヨンの特許を取得する。Classique が受け継ぐのは、この時代に定まった「読みやすさ」と「正確さ」の二つの規範である。

02

眠りと、ダニエル・ロートによる翻訳

1823年に A.-L. Breguet が世を去ったのち、ブランド名は子孫の手を経て、やがて活動の途絶えた時期を迎える。再び動き出したのは20世紀後半である。

1970年にショーメ兄弟の傘下に入った Breguet は、1976年、製造拠点をスイスのヴァレー・ド・ジュウへ移す。技術面を担ったのが、後に独立する時計師ダニエル・ロートであったとされる。彼に課された仕事は明快で、しかし困難だった。懐中時計のために生まれた Breguet の意匠を、腕時計の小さな円盤へ翻訳すること——。

その結実として、A.-L. Breguet の懐中時計 No.5 に着想を得た Ref. 3130 や、永久カレンダー Ref. 3050 などが挙げられることが多い。手作業の旋盤で彫られたギヨシェ文字盤、冷間圧延で成形されたコインエッジのケース、焼き入れで青く染めた Breguet 針。これらが腕時計の寸法で再構成され、今日 Classique と呼ばれる系譜の原型が定まった。

03

マニュファクチュール化と、薄さの探求

1987年、Breguet はバーレーンの投資会社インベストコープへ渡る。同社は1991年にムーブメント製造のヌーヴェル・レマニアと部品製造のヴァルダーを取得し、製造基盤を整えた。そして1999年、ニコラス・G・ハイエック率いるスウォッチ・グループの傘下に入る。

グループの資本と一貫生産への投資は、Classique に二つの方向性をもたらした。一つは薄型化である。薄型の Cal. 502 系を載せた2針の Ref. 5140 / 5157 は、最小限の表示に意匠を凝らした端正なドレスウォッチとして定着した。

もう一つは素材技術である。2006年からは一部の部品にシリコンを採り入れ、磁気や温度の影響を抑えた。グラン・フー(高温焼成)エナメル文字盤の Ref. 5177 や、ムーンフェイズの Ref. 7137 は、こうした現代の自社キャリバー(777Q など)を積む世代に属する。

04

トゥールビヨンを、薄さで定義し直す

2013年に発表された Ref. 5377 は、自社の発明であるトゥールビヨンを現代の腕に馴染ませる試みであった。搭載する Cal. 581DR は厚さ3mm。プラチナ製のローターをムーブメント外周に配する「周辺ローター」を用い、自動巻でありながら厚さ7mm のケースに収めた。発表当時、世界最薄の自動巻トゥールビヨンとされた。シリコン製のひげぜんまいと脱進機を備え、4Hz で振動する。

2018年のバーゼルで発表された Ref. 5367 は、その文字盤をグラン・フー・エナメルに替え、パワーリザーブ表示を省いた、より簡潔な姿で登場した(ケース厚7.45mm、Cal. 581)。派手な複雑表示ではなく、薄さと静けさでトゥールビヨンを語る——この姿勢は、装飾を抑える Classique の思想とよく重なる。

05

250年目の原点回帰

2025年、Breguet は創業250周年を迎えた。記念作の多くが、Classique の名のもとに過去へと立ち返っている。

なかでも注目を集めたのが Classique Souscription 2025 である。1796年の1針懐中時計を腕時計として再構成し、新開発の手巻 Cal. VS00 を収めた。複雑さではなく簡潔さで原点を示すこの一本は、2025年の GPHG で最高賞を受けた。同年には、トゥールビヨン特許から224年目の6月26日に発表された、ブランド初のフライング・トゥールビヨンを備える Classique Tourbillon Sidéral 7255(50本限定)や、高振動の脱進機と磁性ピボットのてんぷを組み合わせた Classique 7225 も発表された。250年を経てなお、Classique は A.-L. Breguet の意匠と発明が最も直接に息づく場であり続けている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Classique が一貫して守ってきたのは、可読性を最上位に置く設計思想である。何を足すかではなく、時刻を最短で読ませるために何を削るか——その判断の積み重ねが、200年以上を経ても認識できる「Breguet の顔」をつくっている。

その顔を成すのは、いくつかの不変の記号である。先端をくり抜いたポム型の Breguet 針は、地板の上で輪郭がはっきりと浮かぶ。傾いた Breguet 数字、機械彫りのギヨシェ文字盤は、模様の種類で表示領域を区分し、装飾でありながら可読性に奉仕する。12時の脇に施されたシークレットサイン(肉眼では見えにくい署名)は、真贋を見分けるために A.-L. Breguet が導入した記号であり、今も受け継がれている。

ケースの言語も明快である。側面に刻まれたコインエッジの溝、細いベゼル、まっすぐ溶接された薄いラグ。これらは華やかさではなく、薄さと端正さのための選択である。No.5 懐中時計に由来する非対称・偏心のレイアウトも、複数の表示を整理して読ませるための構成として、複雑時計に受け継がれている。

素材と寸法にも自制がある。ケースは原則として金かプラチナに限られ、防水は30m程度にとどまる。これは Classique がドレスウォッチであることの表明であり、潜水や衝撃への過剰な備えを意匠へ持ち込まない、という意思でもある。

同時代の端正なドレスウォッチと並べると、輪郭はより明確になる。パテック・フィリップのカラトラバや A. ランゲ&ゾーネのザクソニアが、面の清潔さや幾何学的な厳格さで端正さを示すのに対し、Classique はギヨシェ・コインエッジ・青い針という、装飾を可読性へ転化する手法で個性を描く。削ることと彫ることを同時に行うこの設計言語こそ、Classique を一目で Breguet と分からせる核である。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1976-1990年代
Frédéric Piguet / Lemania ベース
復興期。薄型エボーシュを自社で仕上げて採用。
1990年代-現在
Cal. 502 系
フレデリック・ピゲ系由来の極薄自動巻。
2006-現在
Cal. 777Q / 502.3 DR系
シリコン脱進機を備えた自社製ムーブメント世代。
2013-現在
Cal. 581 系
周辺ローター式・厚さ3mmの自動巻トゥールビヨン。
2025-現在
Cal. VS00 ほか
単一香箱の手巻など250周年の新キャリバー。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1775-1823

創業期の原型(懐中時計)

No. 5 Souscription 等
Breguet 針・数字・ギヨシェ・コインエッジの意匠コードが確立。
1976-1990

ダニエル・ロスの復興

3130 3050
懐中時計の意匠を腕時計へ翻訳し、Classique の原型を確立。
2000年代-現在

薄型2針ドレスの定番形

5140 5157
Cal. 502 系を積む、最も簡素な現行 Classique の定番。
2006-現在

シリコン脱進機の自社世代

5177 7137
シリコン脱進機とグラン・フー・エナメルを得た自社キャリバー世代。
2013-2018

薄型自動巻トゥールビヨン

5377 5367
厚さ3mmの Cal. 581 系、世界最薄級の自動巻トゥールビヨン。
2025-

250周年と原点回帰

Souscription 2025 7255
1針時計の復刻と、ブランド初のフライング・トゥールビヨン。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 公式 Montres Breguet | Maison Breguet 公式 · Breguet · 2026.10.11 閲覧 Breguet · 2026.10.11
  2. 02 報道 My Pick for the Top Watch Brand of 2025 May Surprise You | Gear Patrol 報道 · Gear Patrol · 2026.10.11 閲覧 Gear Patrol · 2026.10.11
  3. 03 専門メディア Review: The Art of Tourbillon - The Breguet Classique Tourbillon Extra-Plat Automatique 5377 : 専門メディア · Deployant · 2026.10.11 閲覧 Deployant · 2026.10.11
  4. 04 専門メディア Introducing - Breguet Classique Tourbillon Extra-Plat Automatique 5367 "Grand Feu" Enamel (Specs & Price) 専門メディア · Monochrome Watches · 2026.10.11 閲覧 Monochrome Watches · 2026.10.11
  5. 05 専門メディア Breguet Unveils First-Ever Flying Tourbillon with Tourbillon Sidéral 7255 | SJX Watches 専門メディア · SJX Watches · 2026.10.11 閲覧 SJX Watches · 2026.10.11
  6. 06 専門メディア Enigmatic Elegance Takes Flight: The New Breguet Classique Tourbillon Sidéral 7255 - Swisswatches Magazine 専門メディア · Swisswatches Magazine · 2026.10.11 閲覧 Swisswatches Magazine · 2026.10.11
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive