設計思想
1. 量産モデルとして世に出るまで
Classique 5177は、ブレゲのドレスウォッチの中では比較的入手しやすい三針デイトとして、2006年に登場したとされる。当初の文字盤は銀色のギヨシェ彫りで、センターセコンドと日付を備えた実用的な構成だった。この5177に濃紺のグランフー・エナメル文字盤を与えたのが、本機5177BB/2Y/9V6である。ブレゲにとって青のグランフー・エナメルは新しい試みであり、定番の白エナメルやギヨシェとは異なる表情をシリーズへ持ち込んだ。色そのものは奇抜ではないが、白を基調としてきたブレゲの文字盤にあっては、明確な転換点となる選択だった。
2. 日本で生まれた青
この青い文字盤の出発点は、2017年10月に発表されたClassique 5175「Ginza Anniversary」(Ref. 5175BB/2Y/9V6)にある。これはブレゲ銀座ブティックの10周年を記念し、日本市場へ向けて10本だけ作られた特別仕様だった。銀座への出店は2007年で、その節目に合わせて選ばれたのが、ブレゲ初となる青のグランフー・エナメルだった。日付窓を持たない時分秒のみの構成で、ムーブメントには日付なしのCal.777Jが積まれていた。この限定版が示した濃紺エナメルへの好反応が、量産版を生む後押しになったと伝わる。
3. 日付という選択
2019年2月、ブレゲは同じ青エナメルを日付付きの5177に載せ、現行ラインへ正式に組み込んだ。日付を持たないGinza版を純粋な意匠として評価する声がある一方、本機は日付窓を備えることで日常での実用性を確保している。窓は3時位置の数字に隣接するが、台形の開口と一段低い暗色の窓枠によって、エナメル面のなかへ穏やかに収めている。白エナメルのRef. 5177BB/29/9V6やギヨシェのRef. 5177BB/15/9V6と並ぶ、5177ファミリーの色違いの一本でありながら、青という選択と日本発という来歴によって、本機は独自の位置を占めている。
意匠分析
本機の核心は、ブレゲが初めて量産文字盤に用いた濃紺のグランフー・エナメルにある。この青は、ブレゲ針を焼き戻して得るブルースチールの色を文字盤へ写したもので、800度を超える炉で焼成して発色させる。焼成温度に耐えて色味を一定に保つ顔料の開発には、相応の試行が重ねられたと伝わる。
文字盤上の要素は、視認性を優先して設計されている。イタリック体のブレゲ数字、星形や菱形を連ねた分目盛りは銀色の粉で描かれ、わずかな盛り上がりを持つ。6時位置にはエナメルによるシークレットサインが潜む。3時位置の日付は台形の開口に収められ、窓枠を一段沈めて暗くすることで、エナメル面との段差を目立たせない処理がとられている。針は先端の開いた、いわゆるムーンチップのブレゲ針で、ロジウムめっきを施した鋼製である。
ケースは直径38mm、厚さ8.8mmの白ゴールドで、側面には細かいフルート装飾が回り、ラグは細く溶接され、ネジ式のピンでストラップを留める。リューズにはブレゲの頭文字Bが刻まれ、ベゼルは薄く、ドレスウォッチとして無理のないプロポーションにまとまる。サファイアの裏蓋からはCal.777Qが見え、ローズエンジンで手彫りされた18金ローターが回る。ヒゲゼンマイと脱進機の主要部にはシリコンが用いられ、姿勢差や磁気への耐性を高めている。裏蓋には個体番号が刻まれ、所有者はブレゲの顧客台帳へ名を記録できる。標準仕様では、文字盤に合わせた青いアリゲーターストラップが組み合わされる。
系譜と歴史
5177というリファレンス自体は、銀色ギヨシェ文字盤の三針デイトとして2006年に登場したとされる。青いグランフー・エナメルが初めて姿を見せたのは2017年10月で、ブレゲ銀座ブティックの10周年を記念したClassique 5175「Ginza Anniversary」(Ref. 5175BB/2Y/9V6)としてだった。これは日付窓を持たない10本限定の日本市場向けで、Cal.777Jを搭載していた。
量産版である本機5177BB/2Y/9V6は、2019年2月に発表された。この年ブレゲはバーゼルワールドに出展しておらず、独自のタイミングでの公開となった。同じ青エナメル文字盤に日付窓を加え、ムーブメントは日付付きのCal.777Qへ改められている。
5177ファミリーには、白グランフー・エナメルのRef. 5177BB/29/9V6、銀色ギヨシェのRef. 5177BB/15/9V6、ローズゴールドのRef. 5177BR/29/9V6、プラチナのRef. 5177PT/2N/9V601などが併存する。発表以降、本機の主要スペックに公表された変更は確認されておらず、現行カタログに継続して掲載されている。