用語 / TERM · Grand Feu Enamel
グランフー・エナメル
ガラス質釉薬を高温で焼き付ける伝統的な文字盤装飾。深い光沢と退色しにくい色彩が特徴
グランフー・エナメル(Grand Feu Enamel)とは、ガラス質のエナメル釉薬を金属製の基板に施し、800度前後の高温で何度も焼成して文字盤に仕上げる装飾技法である。金、銀、銅などの基板上に粉末状の釉薬を重ね、各層を窯で焼き付けて固着させる。複数回の焼成を要し、温度や時間のわずかな誤差で気泡や亀裂が生じるため、歩留まりは低い。完成した文字盤は深い光沢と退色しにくい色彩を持ち、長期にわたり経年変化に強いとされる。
名称はフランス語で「大きな火」を意味し、低温焼成のエナメルと区別するために用いられる。一般には800度以上の焼成を指すが、専業メーカーのドンツェ・カドラン(Donzé Cadrans)は600度を超える焼成全般をグランフーと位置付けている。技法自体は17世紀の時計製造で確立されたとされ、日本では「七宝焼き」「琺瑯」「本七宝」とも呼ばれる。
現代では、パテック・フィリップ、ヴァシュロン・コンスタンタン、ジャガー・ルクルト、ブレゲ、ブランパン、ユリス・ナルダンなどが採用する。専業工房としては、1972年にル・ロックルで設立されたドンツェ・カドランが知られ、2011年にユリス・ナルダンに買収された後も独立して稼働し、複数の高級ブランドへ供給を続けている。