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Blancpain · Spécialités · 2019

Air Command Stainless Steel / Black / Strap

1950年代の軍用クロノグラフを2019年に再構築した、現代エア・コマンドの起点となる500本限定モデル

AC01-1130-63Aは、2019年にブランパンが発表した「エア・コマンド」シリーズの起点となるモデルである。1950年代に米空軍向けとされる少数のみが作られた軍用フライバック・クロノグラフを原型とし、42.5mmのステンレススチールケースに復刻した500本限定の一本だ。黒文字盤にはオールドラジウム調のスーパールミノヴァが置かれ、双方向回転のカウントダウン・ベゼルが原型の機能を継ぐ。搭載するのは自社製キャリバーF388B。毎時36,000振動 (5Hz) の高振動フライバック機構を備え、原型のヴァルジュー222とは隔たった現代的な構成へと刷新された。

Ref. AC01-1130-63A
発表年 2019
状態 現行品
限定 限定 500
コレクション Spécialités
カテゴリ クロノグラフ / パイロット
キャリバー F388B
ケース径 42.5 mm
防水 30 m
クロノグラフ フライバック
01 — Specification

仕様

As of WatchBase sync · 2026.06.09
Case · ケース
素材 Stainless Steel
形状 Round
42.5 mm
厚さ 13.77 mm
ガラス Sapphire
裏蓋 Open
防水 30 m
Movement · ムーブメント
キャリバー F388B
タイプ Automatic
振動数 36,000 bph
石数 35 石
パワーリザーブ 50 時間
Dial · 文字盤 / Hands · 針
文字盤色 Black
インデックス Arabic Numerals
Syringe
i — Editorial

設計思想

Design philosophy

1. 原型をめぐる「謎」と軍用クロノグラフの記憶

エア・コマンドは、1950年代にブランパンが手がけたフライバック・クロノグラフを原型とする。生産数はごくわずかで、現存する個体は十数本程度と伝わる。米国の流通業者アレン・トルネックを通じて米空軍に提案されたものの、正式採用には至らなかったとされ、その成り立ちには不明な点が多い。フィフティ ファゾムスが海の道具であったのに対し、エア・コマンドは空の道具として構想された。黒文字盤に夜光を置いた高視認の設計と、計測後に針を瞬時に戻せるフライバック機構は、いずれも飛行という用途から導かれたものである。AC01-1130-63Aは、この埋もれた一本を現代に呼び戻す試みであった。

2. 2019年の復刻が選んだ「忠実さ」

2019年に登場したこのRefは、原型への忠実さを軸に据えている。42.5mmというケース径は、原型のおよそ42mmからわずかに広げただけにとどめられた。意匠の骨格はほぼそのまま受け継ぎ、変更は機能面に集中している。最大の刷新はムーブメントである。原型が積んでいた手巻きのヴァルジュー222に代えて、自社製の自動巻きキャリバーF388Bを搭載した。毎時36,000振動 (5Hz) の高振動と、コラムホイール・垂直クラッチによるフライバック機構は、原型が到達しえなかった精度と操作感をもたらす。一方で、原型にあったスモールセコンドの位置には12時間積算計が置かれ、計測できる時間の幅は広げられた。サファイアの裏蓋や夜光素材といった現代化も、視認性と耐久を損なわない範囲で加えられている。

3. 現代エア・コマンドの起点として

500本限定で世に出たAC01-1130-63Aは、結果としてシリーズ全体の出発点となった。2021年にはチタンケースに青文字盤を合わせたAC02系が続き、その後ゴールドケースや、より小径のキャリバーF188を積む36mmモデル、限定の緑文字盤へと裾野を広げていく。これらの後続が現行コレクションを構成する一方、最初の鋼製・黒文字盤・500本という組み合わせは、このRefだけのものである。原型の記憶を最も濃く宿す一本として、エア・コマンドという名の現代における基準点に位置づけられる。


ii — Editorial

意匠分析

Visual analysis

AC01-1130-63Aの設計は、原型の見え方を保ちながら、現代の素材で再構築する点に主眼が置かれている。

ケースは42.5mm径、厚さ13.77mmのステンレススチール。後続のチタンモデルが艶消し主体の仕上げをまとうのに対し、この鋼製モデルは光沢を強く残し、面取りされたラグのエッジが光を拾う。ベゼルは双方向に回る「カウントダウン」式で、黒のセラミックインサートに夜光のマーカーと数字を備える。飛行前にこれを合わせておくことで、目的地までの残り時間や燃料の限界を一目で読み取るという、原型由来の用途を引き継いでいる。

文字盤は黒。アラビア数字とペンシル型の針には、オールドラジウムを模したスーパールミノヴァが充填され、温かみのあるベージュ色が経年した夜光を思わせる。中央のクロノグラフ秒針に加え、3時位置に30分積算計、9時位置に12時間積算計を置く二つ目構成である。外周のシャプターリングには1000m基準のタキメーターが刷られ、6時の上には「Flyback」の文字が控えめに記される。

裏側はサファイアの透視ケースバックで、F388Bの仕上げと、ローズゴールド製のプロペラ形ローターが見える。航空というテーマを意匠に落とし込んだこのローターは、無機質になりがちな自動巻きの裏面に表情を与えている。ラグからラグまでは51mm強に収まり、42.5mmという径ながら手首での落ち着きは穏やかである。ストラップは原型の風合いに寄せたブラウンのカーフで、ヴィンテージ調の佇まいをケース全体と揃えている。


iii — Editorial

系譜と歴史

Lineage

AC01-1130-63Aが世に出たのは2019年なかばである。ブランパンはこの年、1950年代のエア・コマンドを下敷きにした復刻クロノグラフを発表し、「スペシャリテ」の系列に現代のエア・コマンドを初めて加えた。現代版に与えられた最初の正式なリファレンスが、このAC01である。生産は500本の限定とされた。この発表は、ブランパンが大規模見本市から距離を置いた時期と重なり、ブランド独自の告知として世に出たとされる。発表時のスイスでの定価は18,500スイスフランとされる。限定モデルであるため、生産期間中に文字盤やベゼルの仕様が段階的に変わるといった経緯はなく、当初の構成のまま500本が組み上げられた。各個体には限定生産を示す証書が添えられ、付属するストラップは原型の風合いに寄せたブラウンのカーフで、ピンバックルが合わされる。500本という数の小ささから、正規の流通在庫は早くに尽き、この鋼製・黒文字盤の限定版を新品として入手する流れは事実上途絶えている。エア・コマンドの系統自体は2021年以降、チタンやゴールドのモデルへと広がっていったが、鋼製・黒文字盤・500本という組み合わせは、2019年のこの一本にのみ与えられた仕様である。

02 — Derivatives

同型・派生 Ref

Color · material · bracelet variants