設計思想
第二世代ダイバーが世に出た年
2015年1月のSIHHで、ロイヤル オーク オフショア ダイバーは初の世代刷新を迎えた。15703STとして2010年に通常コレクション入りした初代から数えて約5年。前年2014年に42mmのオフショア・クロノグラフ(Ref.26470系)が刷新されており、オフショア・ラインの底上げの最後のピースとしてダイバーの世代交代が組み込まれた格好となる。新リファレンスである15710STは、ローンチ時点では黒文字盤の本Ref(.A002CA.01)と銀文字盤の.02の2型のみで構成された。
15703STから何が継承され、何が変わったのか
外形寸法やムーブメントの基本構成は、初代15703STからほぼそのまま引き継がれている。42mmのステンレススチール製ケース、8角形ベゼル、10時側にもう一基のリュウズを備えるインナーロタリングベゼル、300m防水、自社製Cal.3120。これらは初代から動いていない。変更されたのは、まずケースバックである。ソリッドバックだった初代に対し、本Refではサファイアクリスタル製の透視式バックが採用され、Cal.3120の22Kゴールド製ローターと装飾仕上げが見えるようになった。この設計変更を受けてケース厚は13.90mmから14.10mmへと0.2mm増している。
「ベース仕様」としてのこの個体
15710STのコレクションは、ローンチ後数年をかけて多色化していく。2017年以降にはオレンジ(.A070CA.01)を皮切りとして、白、ブルー、ライム、イエローといった鮮やかな文字盤が追加され、さらに2018年にはターコイズ、パープル、ベージュ、カーキも投入された。Ref.15711OIとしてローズゴールド+チタン製の日本ブティック限定モデルも登場している。そうした「カラフルな15710STたち」が増えていくなか、本Ref(黒文字盤)は世代交代を画した最初の個体として、シリーズの基準色を担い続けた。2021年に15720STへバトンを渡すまでの6年余り、15710STラインのアンカーとして位置づけられたのが、この.A002CA.01である。
意匠分析
ケース径42mm、厚さ14.10mm。8角形のステンレススチール製ベゼルには8本のヘキサゴンスクリューが配され、1972年に発表されたロイヤル オーク Ref.5402の意匠言語をそのまま引き継いでいる。ベゼル外周はサテン、ベベルはポリッシュという仕上げの切り替えが、武骨な造形の中にもオート オルロジュリーらしい精度感を残す。
本Refの機能上の核は、3時側と10時側に並ぶ二つのスクリュー式リュウズである。通常のオフショアと違い、10時のリュウズはクロノグラフの押しボタンではなく、ダイヤル内側に組み込まれたインナーロタリングベゼルを駆動する。両リュウズともに黒ラバーで覆われ、視覚的にも触覚的にも工具的な性格を強調する。
黒文字盤はメガ・タピスリーと呼ばれる、通常のロイヤル オーク(グラン・タピスリー)よりさらに大柄な格子模様で覆われる。アプライド・アワーマーカーはホワイトゴールド製で、針と同じく夜光が乗せられる。本Refではミニッツ針が黒で塗り分けられ、視認の中心が時針側に置かれている点が他色違いと異なる。インナーベゼル外縁の0〜15分区間は黒で塗られ、ダイバーズウォッチとして要求される視認領域の区別が為される。
サファイアクリスタル製の透視式バックからは、Cal.3120の22Kゴールド製ローターが望める。ローターにはオドマール家とピゲ家の紋章が刻まれ、ブリッジにはコート・ド・ジュネーブと面取りが施される。ストラップは黒ラバー、ステンレススチール製のピンバックルで結束される。
系譜と歴史
本Refは、2015年1月のSIHH(Salon International de la Haute Horlogerie)において、銀文字盤の15710ST.OO.A002CA.02と並んで発表された。前任の15703ST(2010年発表のステンレススチール製・ソリッドバック仕様)が、これをもってカタログから外れている。発表当初の米国希望小売価格は19,000米ドルと伝わる。
発表と同年内には、白文字盤+白ラバーストラップ仕様の15710ST.OO.A010CA.01も追加され、黒・銀・白という3つの落ち着いた色軸での展開が始まった。2017年以降、本15710STラインは多色化のフェーズに入り、オレンジ文字盤(.A070CA.01)を皮切りに、ブルー、ライム、イエローといったより鮮やかな文字盤が加えられている。2018年には、ターコイズ、パープル、ベージュ、カーキの4色がさらに追加された。同年、日本のブティック限定として、ローズゴールド製ケース+チタン製ベゼルを纏うRef.15711OI(500本限定)も披露されている。
本Ref自体の仕様は、生産期間を通して目立った変更を受けていない。2021年3月、Audemars Piguetは新しいインターチェンジャブル・ストラップ機構と自社製Cal.4308を備える第三世代ダイバー15720STを発表し、これに伴い15710STシリーズは生産を終えている。本Refの製造期間は2015年から2021年までの約6年間にわたる。