設計思想
SIHH 2014からの3年、26470世代の拡張として
26470ST.OO.A028CR.01は、2017年1月のSIHHでロイヤル オーク オフショア・クロノグラフ42mmの追加モデルとして発表された。母体となる26470シリーズは、2014年のSIHHで先行する26170を置き換えて登場した第二世代である。AP自社製キャリバー3120をベースにデュボア・デプラ製クロノグラフモジュールを載せたCal.3126/3840を継承しつつ、リューズとプッシャーをラバーコート金属からブラックセラミックに置換し、ケースバックをサファイアの透明仕様へ改めた——これが2014年の世代交代の中核であった。
その3年後、AP は26470ラインに新たな色の組み合わせを加える。本Refとともに2017年SIHHで発表されたのは、ブラウン文字盤の26470ST.OO.A820CR.01、イエローゴールド+ブルー文字盤の26470BA.OO.1000BA.01、そしてプラチナの26470PT.OO.1000PT.01。スチール2本+貴金属2本という構成である。
「リアル・バットマン」の異名
本Refの最も識別性のある選択は、黒のメガタペストリー文字盤に対し、3つのインダイヤルとインナーベゼル(チャプターリング)をいずれも深いブルーで染め分けた点にある。光の角度によってはほぼ全面が黒に見え、角度を変えるとブルーが浮かび上がる——この陰影の効果から、英語圏のコレクター・コミュニティで「リアル・バットマン」の通称が定着した。Watch Collecting Lifestyleが2017年12月の実機レビューでこの呼称を用いて以来、二次流通の文脈でも同名で参照されることが多い。
26470世代の延長線上として
ラインアップ全体としての26470は、ロイヤル オーク オフショアの起源——1993年の25721——から続く42mmという寸法を維持している。同時にこの世代は、2007年に26170で導入されたCal.3126/3840を、改めてサファイアバック越しに「見せる」ことを選んだ世代でもあった。本Refは、その「見える」設計と42mmの伝統的寸法を引き継ぎつつ、26470ラインに新たな配色解を加えた一本といえる。
意匠分析
ケースは42mmのステンレススチール、厚さ14.55mm、100m防水。八角形ベゼルと8本の露出ネジ、ラグ脇に張り出したクラウンガード——ロイヤル オーク オフショアの基本構造はそのまま保たれる。26470世代から導入された変更点として、リューズとクロノグラフプッシャーはブラックセラミックで成型され、ベベル部にのみ光沢仕上げが入る。リューズ中央にはブラッシュ仕上げのスチール製インサートが組まれ、AP の刻印が入る。
文字盤は黒のメガタペストリー仕上げ。中央から外に向かって正方形の凹凸が広がるパターンは、オフショアの識別記号として1993年から続く。本Refではこの黒の地に対し、9時位置の小秒、12時位置の30分積算、6時位置の12時間積算の各サブダイヤルが深いブルーで配色される。インナーベゼルも同色のブルーで、5分ごとのインデックスが白で刷られる。スリムなアラビア数字インデックスにはホワイトゴールドの縁取りが施され、夜光素材が充填される。針もホワイトゴールド製のロイヤル オーク針——内側にスリットの入った独特のシェイプ——に夜光が乗る。
ストラップは「ラージ・スクエア・スケール」と呼ばれる方形鱗のブルー・アリゲーターで、白い手縫いステッチで仕上げられる。バックルはスチール製のピンバックル、20mm幅へテーパーする。同じ26470世代でもダイバーや44mmモデルが用いる幅広のホーンバックではなく、本Refではより上品な腹側方形鱗が選ばれている。
ムーブメントは、サファイアケースバック越しに見える。AP自社製の自動巻きキャリバー3120を基盤に、デュボア・デプラ製クロノグラフモジュールを積んだCal.3126/3840——365部品、59石、毎時21,600振動 (3Hz)、最低約50時間のパワーリザーブ。22Kゴールドのオシレーティングウェイトはセラミックボールベアリング上に組まれ、表面にはオドマールとピゲ両家の家紋が彫られる。
系譜と歴史
2017年1月、ジュネーヴで開催されたSIHH 2017にて発表。同年、ロイヤル オーク オフショア・クロノグラフ42mm(26470シリーズ)に追加された4つの新Refのうちのひとつとして紹介された。同時発表のステンレス2本のうち、本Refはブラックダイヤル/ブルーレジスター仕様、もうひとつはブラウンダイヤル仕様の26470ST.OO.A820CR.01であった。残る2本は18Kイエローゴールドの26470BA.OO.1000BA.01と、プラチナ950の26470PT.OO.1000PT.01である。発表時のスイスでの定価はCHF 23,500とされる。
26470シリーズそのものは2014年のSIHHで26170を置き換えて発足しており、本Refは世代交代から3年目の追加投入にあたる。発表後ほどなく英語圏のコレクター・コミュニティで「リアル・バットマン」の通称が広まり、Watch Collecting Lifestyleが同年12月に同名でハンズオン記事を公開している。
2010年代後半を通じて、AP は26470ステンレス42mmクロノグラフに段階的に新たな色違いを加えていった。たとえばシガーブラウン文字盤にカリビアンブルーのカウンターを組む26470ST.OO.A099CR.01.A(通称「アップデーテッド・ハバナ」)などがそれにあたる。本Refもこの流れの中で、後年カタログ上の参照表記が「26470ST.OO.A028CR.01.A」へと拡張されている。
42mmオフショア・クロノグラフの系譜としては、2021年に新世代の自社製クロノグラフキャリバーを搭載するRef.26238シリーズが登場し、ラインの中心は段階的にそちらへ移行していった。