設計思想
クロノグラフ一色だったオフショアの空白地帯
1993年に誕生したロイヤル オーク オフショアは、長らくクロノグラフを中核とするコレクションだった。オフショアに本格的なダイバーズウォッチが加わる契機となったのが、ドイツの宝飾商ヴェンペの依頼である。傘下の時計製造部門Wempe Chronometerwerkeの創設100周年を記念して、2005〜2006年にスキューバ初代が作られた(資料により年が割れる)。10時位置のリューズで操作するインナー回転ベゼルという、以後のダイバー系オフショアを規定する基本構造は、ここから始まったとされる。
ブティック限定という流通実験
ヴェンペ版の手応えを受け、オーデマ ピゲは2006年からスキューバを直営ブティック専用モデルとして再構成する。それがRef.15701STを名乗るブティックエディションである。第1弾はオレンジを差し色とした15701ST.OO.D002CA.01で、300本が各国のブティックに配られた。本機「ブティック・ブルー」15701ST.OO.D002CA.02はその第2弾にあたり、2007年に同じく300本が製作されたと伝わる。内側のダイバースケールを青に染めた以外、基本構成は第1弾を踏襲する。
ダイバー定番化への助走
15701STの3部作は、ダイバーズモデルの需要を測る実験として読むことができる。レッド(15701ST.OO.D002CA.03)で3色が出揃った後も、2008年のイタリアの販売店バルトレリ125周年記念やミラノのモンテナポレオーネ通りのブティック向けなど少量生産が続き、2010年、ダイバー15703ST.OO.A002CA.01がレギュラーコレクションに加わった。ムーブメントはジャガー・ルクルト製キャリバーのAP仕様であるCal.2325から自社製Cal.3120へ置き換えられ、「スキューバ」の名は「ダイバー」へ改められる。本機はその定番化の直前に位置する過渡期の証人であり、大ぶりのアラビア数字と、夜光部を大きく取ったバトン型の秒針という、後のダイバーが手放した要素を留めた最後期グループの1本でもある。
意匠分析
42mmのステンレススティールケースは、クロノグラフ用オフショアの基本骨格からプッシャーを取り除いた構成である。最大の機構的特徴は2つのリューズにある。3時位置がねじ込み式の巻上げリューズ、10時位置が文字盤内周のインナー回転ベゼルを操作する専用リューズで、双方ともラバーで被覆される。防水は300mを確保するが、ヘリウムエスケープバルブは持たない。
文字盤は中央にメガタペストリー(機械彫りの大型格子模様)を配し、その外周の見返しに60分のダイバースケールを置く。本機ではこの見返しが青く塗られ、黒い文字盤との対比がリファレンスの識別点となる。大ぶりのアラビア数字は白い夜光で刷られる。スキューバの一部では、内側のダイバースケールにも同じく大ぶりのアラビア数字が並び、文字盤の数字と呼応させていた。風防はサファイアクリスタルである。秒針は夜光部を大きく取ったバトン型で、2010年のダイバーで一般的なロリポップ型に改められた。
ケースバックは無垢で、ムーブメントは見えない。ムーブメントは自動巻Cal.2325で、ジャガー・ルクルト製キャリバーをオーデマ ピゲ仕様に仕立てたものである。2010年のダイバーで自社製Cal.3120に置き換えられる前の世代の機械である。ストラップは黒のラバーにスチールのフォールディングバックルの組み合わせで、2010年以降のダイバーが採用するピンバックルとは系統が異なる。
系譜と歴史
スキューバの系譜は、ドイツの宝飾商ヴェンペの時計製造部門Wempe Chronometerwerkeの創設100周年を記念した特注に始まる(2005年とする資料と2006年とする資料がある)。続いてオーデマ ピゲは直営ブティック専用のRef.15701STを投入する。第1弾はオレンジを差し色とした15701ST.OO.D002CA.01で、限定300本。本機ブティック・ブルー15701ST.OO.D002CA.02は2007年に続いた第2弾で、同じく300本である。WatchBaseは生産期間を2007年の単年と記録する。その後、赤の15701ST.OO.D002CA.03が加わり、ブルー、レッド、オレンジの3色のブティックエディションが出揃った。並行して、2008年にはイタリアの販売店バルトレリの125周年を記念した限定が、さらにミラノのモンテナポレオーネ通りのブティック向けにごく少数の個体が製作されている。2010年、ダイバー15703STがレギュラーコレクション入りし、スキューバの名を冠した系譜は事実上閉じられた。本機は仕様変更を経ることなく、単年の限定生産で役目を終えたリファレンスである。
出典
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