1972年からの距離、1993年への助走
オーデマ ピゲのロイヤル オークが20年目の節目を目前にしていた1989年、同社はパワーボート競技にちなむ「Offshore」の名を商標登録した。共同経営者であったステファン・ウルカートの判断とされてきたが、同社のヘリテージ部門の調査では、ドイツ市場を長く担ったディルク・ヴェッテンゲルが「90年代のステートメントピース」を求めたことも大きかったとされる。1972年にジェラルド・ジェンタが描いた原型は古典となる一方、販売は伸び悩んでいた。そこで若いデザイナーのエマニュエル・ゲイに、若い男性が着けたくなるロイヤル オークの構想が委ねられた。
ゲイの答えはケース径42mm、厚さ14.05mm。当時最大の男性用ロイヤル オークだった1992年のRef. 14802(通称ジャンボ)が39mmだったことを思えば、桁違いの寸法である。8角形ベゼルと8本のビスというロイヤル オークの設計言語を保持したまま、ベゼルとケースミドルの間に厚いラバーガスケットを露出させ、リューズとプッシャーをラバーで覆い、文字盤にはクロノグラフ機構を加えた。1992年の発表を目指したが、ケースやブレスレットの難しさ、リューズとプッシャーの被覆の問題から開発は長引き、社内の反対も少なくなかった。