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AUDEMARS PIGUET · SERIES

Royal Oak Offshore

ロイヤル オーク オフショア

1972年のロイヤル オークを増幅し、ラグジュアリースポーツウォッチの寸法感覚を塗り替えた42mmの異端、"ザ・ビースト"。

42 mm
01 — 概要 / SUMMARY

1993年、オーデマ ピゲがロイヤル オークを増幅させて発表したクロノグラフ・コレクション。22歳のエマニュエル・ゲイが手掛けた42mmケースは"ザ・ビースト"と呼ばれ、当時の高級時計の寸法感覚を書き換えた。現行は42mmと43mmのセルフワインディング・クロノグラフ、300m防水のオフショア ダイバー、37mmのスモールサイズへと派生する。ストリートカルチャーとも結びついた独自のコレクションを形成している。

02 — STORY · 物語

Royal Oak Offshore(ロイヤル オーク オフショア)、これまでの軌跡

The story of this series
01

1972年からの距離、1993年への助走

オーデマ ピゲのロイヤル オークが、20年目の節目を翌年に控えていた1989年。同社のジョイント・マネージング・ディレクターであったステファン・ウルカートは、22歳のデザイナーであるエマニュエル・ゲイに、若い世代の手首を捉える新たなロイヤル オークの構想を委ねた。1972年にジェラルド・ジェンタが描いた原型は依然として象徴的でありながら、販売は伸び悩んでいた。女性が男性用時計を着用する時代の機運に対し、男性側はさらに大きな存在感を求めはじめていた。

ゲイが選んだ答えはケース径42mm。男性用腕時計の平均が36mm前後であった当時、これは桁違いの寸法である。8角形ベゼルと8本のビスというロイヤル オークの設計言語を保持したまま、ベゼルとケースミドルの間にラバーガスケットを露出させ、リューズとプッシャーをラバーで覆い、文字盤にはクロノグラフ機構を加えた。完成までには4年を要し、社内の反対も少なくなかった。後年ゲイが回想するところでは、ジョルジュ=アンリ・メイランは試作品を見て「悪いがきみはどうかしている」と述べたと伝わる。

02

1993年バーゼル — "ザ・ビースト"の登場

新作はRef. 25721STとして、1993年4月のバーゼル・フェアで発表された。"オフショア"の名はパワーボート競技と高級ヨットの世界から、"ザ・ビースト"の通称はその圧倒的な体格から、いずれもウルカートが名付けたと伝わる。最も知られた反応はジェンタ本人から出た。彼はオーデマ ピゲのブースに乗り込み、ゲイのデザインが自らの原作を損なったと公然と非難したとされる。

最初の100本のケースバックには「Offshore」の刻印がなかった。商業的に失敗した場合に商標を別プロジェクトへ転用できるようにするための措置と伝わる。ムーブメントはジャガー・ルクルトのキャリバー888をベースにデュボア・デプラのクロノグラフモジュールを組み合わせたキャリバー2126/2840。文字盤はブルーのプティ・タペストリーで、サブダイヤルは12時、6時、9時の縦配置、3時位置にデイトを備えた。100m防水を達成したクロノグラフは当時としては稀少な存在であり、機能と意匠の両面で前例の少ない構成だった。

03

受容の遅れと、イタリアからの後押し

販売は当初振るわなかった。1993年から1995年の3年間で世界販売は716本にとどまったと記録されている。風向きを変えたのはイタリア市場であった。若く豊かな顧客層がこの大型クロノグラフを支持し、需要が供給を上回るようになる。1995年にはイエローゴールドのRef. 25721BA(米国では重量から"ザ・パウンダー"と呼ばれた)、1996年にはレザーストラップ仕様で8色の文字盤を揃えたRef. 25770が登場し、コレクションは素材と色彩の両軸で拡張を始めた。同時期、イタリアのアルペンスキー選手アルベルト・トンバなど、文化圏の異なる愛用者が表舞台に登場しはじめる。

04

1999年、ハリウッドとの接続

決定的な転機となったのは1999年のRef. 25770SN.OO.0001KE.01、いわゆる"エンド・オブ・デイズ"である。アーノルド・シュワルツェネッガーが同名映画で着用し、市販モデルは500本限定で発表された。ステンレススチールに同社初のPVDコーティングを施し、ストラップは同じく同社初となるケブラー製。販売の一部はシュワルツェネッガーが運営するインナーシティ・ゲームズ財団に寄付された。これはオフショア初の限定エディションであり、そしてその後の多数のセレブリティ・コラボレーションの起点でもあった。2003年にはターミネーター3公開に合わせてチタンケースのRef. 25863TI「T3」、2011年には48mmブラックセラミックのRef. 26378IO「ザ・レガシー・クロノグラフ」と続いた。

05

ダイバーの分岐と素材実験

2005年から2009年にかけて、オーデマ ピゲは"スキューバ"を冠した限定モデルでダイバー仕様の感触を試した。2010年代に入るとRef. 15703STとして常設コレクション入りし、2015年のRef. 15710STではサファイアバックを採用、文字盤色は最終的に11色まで拡張される。日本市場向けには2018年にRef. 15711OIが投入され、ピンクゴールドとチタンの組み合わせで500本限定として発表された。並行してケース素材も拡張が進む。2004年に初のチタン仕様Ref. 25721TIが登場し、その後フォージドカーボン、ブラックセラミック、ホワイトセラミックなど、オフショアは素材実験の場としての性格を強めていった。

06

2021年、内製化と"原点回帰"

最大級の世代交代は2021年に訪れる。Ref. 26420シリーズ(ケース径43mm)に搭載されたキャリバー4401は、自社内製の一体型フライバッククロノグラフ。続いて発表されたRef. 26238シリーズ(ケース径42mm)のキャリバー4404は、4401をベースに、1993年の原型と同じ12-9-6の縦サブダイヤル配置を取り戻した派生機である。毎時28,800振動(4Hz)、70時間のパワーリザーブ、コラムホイールと垂直クラッチを組み合わせ、433個の部品から構成される。ダイバーも同年Ref. 15720STへ更新され、内製キャリバー4308と互換式ラバーストラップを得た。2023年には30周年を記念し、Ref. 26420CEとして"エンド・オブ・デイズ"の意匠を黒セラミックで再構築した500本限定モデルが発表されている。30年を経て、オフショアは外部モジュールから内製機械への完全な移行を遂げた。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

オフショアの設計思想は、ロイヤル オークを「再解釈」したのではなく「増幅」したものとして理解できる。ジェラルド・ジェンタによる1972年の原型から継承されたのは、8角形ベゼル、8本の露出したビス、タペストリーパターンの文字盤、そして一体型ブレスレットという基本言語である。エマニュエル・ゲイはこれらを保持しながら、寸法、厚み、質感を一段引き上げ、ベゼルとケースミドルの間に挟まれるラバーガスケットを意図的に露出させた。封じ込めるための部品を、あえて見せる。この一点が、ロイヤル オークとオフショアを分ける美学の核である。

機能設計の方針も、視覚的な力強さに対応している。クロノグラフプッシャーには金属製のプロテクター、リューズには大型のガード、文字盤には拡大されたメガ・タペストリー(原型はプティ・タペストリー)が与えられた。これらは単なる装飾の付加ではなく、ケースの体格に対して比例関係を維持するための調整である。42mm相当のケースに対して、針の太さ、インデックスの厚み、サブダイヤルの直径もすべて比例して拡大されている。見かけの派手さに反して、オフショアはダイバーズウォッチの読み取り原理を強く意識した時計でもある。

世代を越えて変えなかった要素もまた明確である。1993年のRef. 25721STから2021年のRef. 26238まで、サブダイヤルは12時、6時、9時の縦軸配置を保持する。2021年に発表されたキャリバー4404は、その配置を維持するためにベースキャリバー4401(3-6-9配置)から構造を改めて作り直した派生機だった。30年近くを経て機械を全面更新する際にも、原典の文字盤レイアウトを残す。この決断は、オフショアにおいて何が触れてよい要素で、何が触れてはならない要素かを、現代のオーデマ ピゲが自ら明示した出来事だった。素材面ではゴールド、チタン、フォージドカーボン、セラミックと実験を重ねながら、文字盤の配置とベゼルの幾何学は動かさない。可変な層と不可変な層が明確に区別されている点に、オフショアの設計言語が30年以上にわたり持続している根拠がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
1993-2007
Cal. 2126/2840
JLC 889 + デュボワ・デプラ製クロノモジュールの組合せ。
2007-2021
Cal. 3126/3840
自社製Cal.3120 + デュボワ・デプラ・モジュール構成。
2021-現在
Cal. 4401 / 4404
初の自社製インテグレーテッド・クロノ、コラムホイール採用。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
1993-2007

「ビースト」誕生

25721
42mmの巨大ケースと露出ガスケットで衝撃のデビュー、初代ROO。
2007-2014

自社製キャリバー化

26170
Cal.3126/3840投入。サファリ・ネイビー等の人気テーマが登場。
2014-2021

セラミック世代

26400 26470
クラウン・プッシャーをセラミック化、44mm/42mm並走の現代化。
2021-現在

統合型クロノ世代

26420 26238
Cal.4401/4404投入。完全自社製の統合型クロノグラフへ刷新。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive