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A. LANGE & SöHNE · SERIES

Odysseus

オデュッセウス

ドレスウォッチを家風としてきたランゲが、再興25年の節目に初めて鋼に挑んだラグジュアリースポーツウォッチ

40.5 mm
01 — 概要 / SUMMARY

2019年、A. ランゲ&ゾーネが発表した初のラグジュアリースポーツウォッチ。再興から25年の節目に登場した第六のウォッチファミリーであり、ブランドにとって初の量産ステンレススチールケース、初の防水仕様、初の一体型ブレスレットを採用した。3時のアウトサイズデイトと9時の曜日表示が織りなす独特の文字盤構成と、新開発の自動巻きキャリバーL155.1 DATOMATICが核となる。現在はスチール、ホワイトゴールド、チタン、ハニーゴールドの素材バリエーションに加え、自動巻きクロノグラフ「オデュッセウス クロノグラフ」も展開している。

02 — STORY · 物語

Odysseus(オデュッセウス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

鋼の時計を持たない家

1994年の再興以降、A. ランゲ&ゾーネは貴金属とサファイアクリスタルで語られる時計の家であった。ランゲ1、ザクソニア、1815、リヒャルト・ランゲ、ツァイトヴェルク。五つのファミリーはいずれもプラチナ、ゴールド、ホワイトゴールドを基本とし、ステンレススチール製のシリーズは長らく存在しなかった。

もっとも「鋼のランゲ」という構想は古くから存在した。ブランド再興を主導したギュンター・ブリュムラインは、初期の段階から「いつかスポーツウォッチを」という着想を抱いていたと伝わる。製品開発ディレクターのアンソニー・ドゥ・ハース(2004年就任)は後年、複数のインタビューで「15本のランゲを所有しているが、休暇中に着けられる一本がない」という顧客からの声に幾度も触れたと語っている。

02

「休暇に着けられるランゲを」

開発が現実的に動き始めたのは2009年前後とされる。ドゥ・ハースは後にこのプロジェクトを「ランゲでの20年で最も難しい仕事」と表現している。

最初の難しさは、何を作らないかを決めることだった。1972年のロイヤル オーク以降確立されたジェラルド・ジェンタ流の語彙は、すでに他社が深く掘り進めた領域である。ランゲがそれを追えばコピーキャットになる。一方、ダトグラフの機構を強化してスチールケースに収めるだけでは、ドレスウォッチに無理矢理プロテクターを足した時計に終わる。

ドゥ・ハース率いるチームは三度設計を白紙に戻したと伝わる。ブレスレットだけで20種類以上の試作が行われたとされる。最終的な解は、丸形ケースにプッシャーを統合し、ブレスレットがケースから自然に流れ出る一体構造のなかに「ランゲらしさの中のスポーツ性」を内包させる設計に落ち着いた。

03

2019年10月24日 ― 再興25年の発表

オデュッセウスが公開されたのは2019年10月24日。これは1994年10月24日にヴァルター・ランゲとブリュムラインが現代ランゲ最初のコレクションを発表してから、ちょうど25年後である。ブランドにとって象徴的な日付に、第六のウォッチファミリーは産声を上げた。

最初のリファレンスはRef. 363.179、ステンレススチールケースに深いブルー文字盤を組み合わせた一本である。ケース径40.5mm、厚さ11.1mm、12気圧(120m)防水。心臓部にはこの時計のために新規開発された自動巻きキャリバーL155.1 DATOMATICが搭載された。

文字盤レイアウトは独自である。3時位置にランゲの象徴であるアウトサイズデイト、9時位置に同寸の曜日表示、6時位置にスモールセコンド。フランジには赤い「60」が控えめな差し色として置かれる。発表時、評価は二分されたものの注文は殺到し、生産能力を上回る需要が続いた。

04

白金、そして軽量素材へ ― 派生の展開

2020年、二本目のオデュッセウスとしてホワイトゴールドのRef. 363.038(レザーストラップ)とRef. 363.068(ラバーストラップ)が発表された。グレー文字盤と組み合わされ、ラバーストラップはランゲにとって初の採用となった。

2022年にはRef. 363.117が登場する。グレード5チタンを採用したブランド初のチタンケースで、アイスブルー文字盤と一体型チタンブレスレットを組み合わせ、ブティック限定の250本展開とされた。スチール版より約45g軽量である。

05

クロノグラフという挑戦

2023年、シリーズに大きな転機が訪れる。オデュッセウス クロノグラフRef. 463.178の発表である。100本限定で、新規開発の自動巻きクロノグラフキャリバーL156.1 DATOMATICを搭載した。手巻きクロノグラフを得意としてきたランゲにとって、自動巻きクロノグラフは初めての領域だった。

特筆すべきは文字盤レイアウトを変えなかった設計判断である。一般的なクロノグラフが3時・9時位置にトータライザーを置くなか、L156.1は二本のクロノ針を中央に集約することで、オデュッセウスのアウトサイズデイトと曜日表示の位置を維持した。

06

ハニーゴールドへ ― 第四のマテリアル

2025年のウォッチ・アンド・ワンダーズで、第四のマテリアルバリエーションとなるRef. 363.150が発表された。ランゲ独自のハニーゴールド(750)製ケースとブレスレットに、ブラウン文字盤を合わせた100本限定モデルである。これによりオデュッセウスは、ハニーゴールド展開を持つ六番目のファミリーとして、ランゲ1、ザクソニア、1815、リヒャルト・ランゲ、ツァイトヴェルクと並んだ。

発表から数年を経て、オデュッセウスは「ランゲの第六のファミリー」として確かな位置を獲得した。スポーツウォッチの語彙を借りながら、それをランゲの文法で書き直した一本である。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

オデュッセウスの設計思想は、「スポーツウォッチに転向する」のではなく、「ランゲの設計言語をスポーツの文脈に持ち込む」という方向で一貫している。

ドゥ・ハース率いる開発チームはまず、明確に避けるべきものを定義した。1972年のロイヤル オーク以降ジェラルド・ジェンタが切り開いた語彙 ― 八角形ベゼル、平らな統合ブレスレット、装飾的なケーススクリュー ― はすでに先行各社の領域である。ランゲは別の解を必要とした。

ケースは40.5mm径の丸形を基本としつつ、右側面のリュウズの上下に左右対称の細長いプッシャーを統合する独自の三次元的造形となった。サテン仕上げと、ポリッシュされたシャンファーが交互に走ることで、光の当たり方によって表情が変わる。

文字盤の構成はランゲのアウトサイズデイトを軸に据えている。3時位置のアウトサイズデイトに対し、9時位置に同寸の曜日表示を置くことで生まれる左右の重量感のバランス。中央には浮き彫りの溝で構成されたチャプターリング、6時にスモールセコンド。アプライドのインデックスとハンドはケース素材と同系の白金(あるいはハニーゴールド等)で、夜光が塗布される。フランジに印字された赤い「60」が、唯一の差し色として控えめに効いている。

ムーブメント側でもランゲ流の文法は維持された。サファイアクリスタルバックを通して見えるのは、グラスヒュッテリブで装飾されたジャーマンシルバープレート、ハンドエングレービングが施されたバランスブリッジ、ゴールドシャトン、ブルースクリュー、950プラチナのセンターローター。スポーツウォッチでありながら手仕上げの密度は他のランゲと変わらない。バランスブリッジに彫り込まれた波模様は、防水性能とスポーツ用途を示唆する数少ない意匠的アクセントである。

ブリックリンク状の一体型ブレスレットは、ケースから自然に流れ出るプロポーションを最優先に設計された。微調整機構付きの安全クラスプはダブルフォールディング式で、装着感と機能性の両立を意図している。

70年以上の歴史を持つロイヤル オークやノーチラスとは異なり、オデュッセウスは発表時点で前史を持たない。だがそれは弱みではなく、ランゲがゼロからスポーツウォッチの語彙を組み立てる自由を意味した。アウトサイズデイト、左右対称配置、波模様、赤い「60」 ― これらはすべてランゲの既存の意匠言語から導かれており、にもかかわらず全体として誰のものでもない顔を結んでいる。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2019-現在
Cal. L155.1 DATOMATIC
3針モデル専用、毎時28,800振動、PRは50時間。
2023-現在
Cal. L156.1 DATOMATIC
自社初の自動巻クロノ、針はすべて中央配置。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2019-現在

初代スチールモデル(ブルー)

363.179
40.5mm鋼ケース、青文字盤、Cal. L155.1搭載の最初の一本。
2020-現在

ホワイトゴールド初登場

363.038 363.068
灰文字盤と一体型レザーまたはラバーで第二のマテリアル。
2022

初のチタンケース採用

363.117
ブランド初のチタン素材、氷青文字盤、250本限定。
2023

オデュッセウス クロノグラフ

463.178
自社初の自動巻クロノキャリバーL156.1、100本限定。
2025

ハニーゴールドの新章

363.150
750ハニーゴールドケースとブレスレット、茶文字盤の100本限定。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive