設計思想
1. 初代Grand Lange 1の時代
115.046は、2003年に登場した初代Grand Lange 1の系譜に連なる派生Refである。1994年の再興とともに発表された38.5mmのLange 1は、その後10年弱のうちに大型化志向の市場と向き合うことになる。A. Lange & Söhneが2003年に応えとして示したのが、ケース径を41.9mmに拡大したGrand Lange 1である。ムーブメントは基幹のCal.L901.2を継承しつつ、ダイヤルレイアウトのバランスは大きく変えられた。サブダイヤル同士、そしてアウトサイズ・デイトと時分目盛りが部分的に重なる「重ね描き」の意匠が、初代世代を特徴づける造形となる。
2. イタリア市場専売という選択
115.046は、2007年から2009年にかけて、イタリアの正規販売店向けにのみ製作された。生産本数は100本に留められ、グローバル流通には乗せられていない。A. Lange & Söhneは、特定市場との関係への謝意を、節度のある本数の限定で示す傾向がある。一般市場に広く流通する派生ではなく、特定地域の販売網との長期的な関係を背景にした、量を伴わない仕草と読むのが妥当だろう。記念限定ではなく、市場向けの感謝として企画された本機の性格は、その後の中古市場でも公式モデル名としてではなく「Blue Italia」というコレクター発の通称で語られていることに表れている。
3. ブルードスチール針の系譜
ダイヤル上に配されたブルードスチールの針とインデックスは、115.046が突然変異として持ち込んだ意匠ではない。Lange 1家系自体に、ブルードスチール針と明色ダイヤルの組み合わせを採用するRefの系譜が存在する。1995年のRef. 101.022(イエローゴールド、ブルー針)、1997年のRef. 101.027(ホワイトゴールド、ブルー針)はその初期例にあたり、2019年の25周年記念Ref. 191.066も同じ意匠言語を継いでいる。115.046は、その間に位置する一本として読むこともできる。標準のGrand Lange 1がケース材に応じたゴールド調で統一感を出すのに対し、本機はLange 1家系の別の伝統に接続することで、配色の最小限の変数で個性を確立した。
4. 初代世代のなかでの位置
Grand Lange 1の初代世代は、2003年から2012年まで生産され、2012年には新ムーブメントCal.L095.1を搭載した第二世代に切り替わった。第二世代ではケース径も40.9mmへと縮小され、サブダイヤルの重なりも解消されている。したがって、115.046は初代世代固有の意匠言語が完成形に達していた末期に位置するRefと言える。第二世代への移行を目前にした時期に、ホワイトゴールドとブルードスチールの組み合わせで仕立てられた100本は、初代Grand Lange 1の歴史に静かな一頁を残した。
意匠分析
ケースは18Kホワイトゴールド、直径41.9mm、厚さ11mm。Grand Lange 1の初代世代に共通する寸法で、サテン仕上げのケースサイドにポリッシュのベゼルとラグ上面を組み合わせる、Langeの伝統的な仕上げの切り分けが踏襲されている。ホワイトゴールド特有の落ち着いた白さが、シルバーダイヤルと地続きの白いトーンを構成する。
ダイヤル面上では、左寄りに時分の大サブダイヤル、その右下に小秒のサブダイヤル、右上にパワーリザーブインジケーター、上部にアウトサイズ・デイトが配される。初代Grand Lange 1の特徴である、サブダイヤル同士が一部重なり、デイト窓が時分目盛りに踏み込むレイアウトはそのまま維持される。針と植字インデックスは熱処理によるブルードスチールで仕上げられ、シルバーの地に対して青の濃淡を浮かべる。標準仕様におけるケース材と同色のゴールド調インデックスと比較すると、彩度の方向性そのものが反転していると言ってよい。
パワーリザーブインジケーターのドイツ語表記「AUF」「AB」(巻き上げ/解放)も、Lange 1家系のドイツ的アイデンティティとして残る。ムーブメントはCal.L901.2、毎時21,600振動 (3Hz)、53石。サファイアクリスタルのケースバックを通じて、無処理の洋銀製3/4プレート、手彫りのテンプ受け、ゴールドシャトン、ブルードスクリューといったLangeの一連の伝統的仕上げが観察できる。
系譜と歴史
2003年、A. Lange & Söhneは基幹モデルLange 1の大型版としてGrand Lange 1を発表した。115.046が属する初代世代の始まりである。ケース径41.9mm、ケース厚11mm、Cal.L901.2を搭載する構成は、その後9年間にわたって初代Grand Lange 1の規格となった。
115.046そのものの生産は2007年に始まる。当初からイタリアの正規販売網にのみ供給され、グローバルな流通には乗せられなかった。生産は2009年までの3年間にわたり、計100本で完了した。一般市場での再生産は行われていない。1本ごとにケース番号が刻まれ、Phillipsの2024年香港オークションに登場した個体は82番、ドイツのJuwelier Oeding-Erdel発行による2008年9月22日付の保証書を伴った。
2012年、Grand Lange 1は第二世代に切り替わり、新ムーブメントCal.L095.1を搭載した40.9mm径の薄型ケースへと再設計される。これに伴い、115.046が属する初代世代の生産は終了した。本Refは2009年の時点で既に流通の役目を終えており、第二世代の登場を待たずに歴史的に閉じられた限定版となっている。