2455/2
2007年のCal.2455を基礎に、2022年「ヒストリーク 222」復刻のため再構成されたヴァシュロン・コンスタンタン自社製薄型自動巻
Cal. 2455/2 は、2022年のヒストリーク 222復刻モデルへの搭載を目的として再構成された、ヴァシュロン・コンスタンタンの自社製自動巻キャリバーである。2007年に登場した Cal. 2455 を基礎とし、スモールセコンドを廃して時・分・日付表示のみへ整理することで、ヒストリーク 222の凝縮された文字盤レイアウトに最適化した。直径26.2mm、厚さ3.6mmの薄型構成のまま、振動数28,800vph (4Hz)、27石、約40時間のパワーリザーブ、22Kゴールド製ローターを備え、ジュネーブ・シールの認定を受ける。
| Maker | Vacheron Constantin |
|---|---|
| Reference | 2455/2 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 27 石 |
| Power reserve | 40 h |
| Movement ⌀ | 26.2 mm |
| Hands | Hours, Minutes |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. Cal. 2450/2455 系列の誕生と背景
ヴァシュロン・コンスタンタンは、長らくジャガー・ルクルト製のエボーシュ(Cal. 920系を起源とするCal. 1120系)を自社の薄型自動巻として用いてきた。Cal. 1120 はパテック フィリップやオーデマ ピゲにも供給された薄型自動巻の代表格だが、2000年代に入って業界全体で「マニュファクチュール」=自社一貫製造能力の保持が再評価される潮流の中、同社も独自設計の自動巻基盤を必要としていた。
2005年、創業250周年を記念する限定モデル「ジュビレ 1755」に投入された Cal. 2475 が、その答えの第一弾となる。ポインターデイ/デイト、パワーリザーブ表示を備えた構成で、自社設計・自社製造の自動巻として発表された。翌2006年、より汎用性を持たせた基盤として Cal. 2450 が登場。「パトリモニー・コンテンポラリーヌ・オートマティック」に搭載されたこのムーブメントは、中央秒針と6時位置の日付を持ち、追加プレートを乗せることで複雑機構へ拡張可能な設計思想を持つと公式に説明された。2007年には、3時位置の日付・9時位置のスモールセコンドを備える派生として Cal. 2455 が発表される。トラディショナルやパトリモニーの基幹ムーブメントとなり、以後同社の薄型自動巻ラインの中核を担うこととなった。
2. ヒストリーク 222 復刻と Cal. 2455/2
Cal. 2455/2 は、この系列の中で2022年に登場した派生バリエーションである。同年、ヴァシュロン・コンスタンタンは1977年の創業222周年記念モデル「222」を、イエローゴールドケースの「ヒストリーク 222」として再解釈し市場に投入した。1970年代のラグジュアリースポーツウォッチが再評価される文脈での復刻だった。
オリジナルの 222 は、ジャガー・ルクルト Cal. 920系をベースとした Cal. 1120 を搭載していた。一方、復刻にあたって同社が選択したのは、より新しいアーキテクチャを持つ Cal. 2455 派生だった。Cal. 1120 は2.75Hzで運針するのに対し、Cal. 2455系は28,800vph (4Hz) という現代的な高振動と、ハック機能(秒針停止機構)を備える。文字盤側のレイアウトに合わせるため、Cal. 2455 のスモールセコンドを撤廃し、時・分・日付の表示構成へ再構成したのが Cal. 2455/2 である。2025年にはステンレススチールケースのヒストリーク 222 にも、同じく Cal. 2455/2 が搭載された。
3. 系列の派生と展開
2450/2455 ファミリーは、当初の構想通り多くの派生を生み出している。中央秒針版の Cal. 2450 系(Q6/2、Q6/3 等)はパトリモニー・セルフワインディングの基幹となる。スモールセコンド版の Cal. 2455 系は、トラディショナル・セルフワインディング(Cal. 2455/1 等)、そしてヒストリーク 222(Cal. 2455/2)へと展開された。Cal. 2475 系もまた現役で、フィフティシックス・デイデイトへ Cal. 2475 SC/2 として搭載されている。
すべての派生は、26.2mm(11 1/4 リーニュ)径、3.6mm厚という基本寸法と、ジュネーブ・シール(ポワンソン・ド・ジュネーブ)認定を共通基盤とする。複雑機構への拡張余地を残しつつ、現代の高仕上げ仕様に応える基盤として、ヴァシュロン・コンスタンタンの現行ラインを下支えする中核キャリバー群となっている。
技術解説
基本構成
Cal. 2455/2 は、直径26.2mm(11 1/4 リーニュ)、厚さ3.6mmの自動巻ムーブメントである。基板上には27石を配し、振動数は28,800vph (4Hz) で運転される。1秒間に8振動するため、秒針の運針が滑らかに見え、平均的な姿勢差を抑制しやすい特性を持つ。構成部品数は、ベースである Cal. 2455 が公式に194点と公表されており、Cal. 2455/2 もこれと同水準と推定される。
香箱とパワーリザーブ
香箱は単一構成で、ゼンマイ巻き上げ完了状態から約40時間の駆動を確保する。3.6mmという厚さの制約の中で、駆動時間とローター機構の領域を両立させたバランス設計である。現代の自動巻に多い60〜70時間級のパワーリザーブと比較すると控えめだが、薄型・高振動・ジュネーブ・シール仕上げを優先した結果として整合性のある仕様といえる。
自動巻機構とローター
ローターは22Kゴールド製の中央回転式で、ヒストリーク 222 仕様では1970年代のオリジナルモデルを意識した「222」ロゴと、ベゼル意匠に呼応するヘアラインと面取りが施されている。22K金ローターは慣性質量を稼ぎ、低振動条件下でも巻き上げ効率を確保するための定石的選択である。輪列との干渉を避けるため、自動巻機構の配置は左右対称ではなく、独立したブリッジで支持される構造を採る。
脱進機とテンプ
脱進機は標準的なスイス式レバー脱進機で、独自プロファイルを持つ機構(ロレックスのクロナジー脱進機等)とは異なる伝統的構成である。ヒゲゼンマイは平形・終端カーブ付きの構成で、テンプは慣性微調整式と推定される。秒針停止機構(ハック機構)を備え、リューズを引き出すと細身のレバーがテンプを物理的に停止させる。SJX Watches はこのハックレバーの形状を「ゴルフクラブのような」と形容しており、ムーブメントの視覚的特徴の一つとなっている。
仕上げと認定
仕上げは、ヴァシュロン・コンスタンタンの薄型自動巻に共通する高水準のものである。地板にはペルラージュ(円形粒状仕上げ)、ブリッジ上面にはコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ波紋)、ブリッジのエッジには面取り(アングラージュ)が施される。ネジ頭は鏡面研磨され、歯車にはサーキュラーグレインが入る。香箱とギア・トレインのブリッジが個別に分割されている点は、同系列ムーブメントの構造的特徴である。
このキャリバーは「ポワンソン・ド・ジュネーブ」(ジュネーブ・シール)の認定を受けている。ジュネーブ州が定める認定で、仕上げ・組立・素材の基準を満たした上で、ジュネーブ州内で組み立てられたキャリバーにのみ刻印が許される。Cal. 2455/2 のメインプレートにもこの刻印が打たれ、サファイアクリスタルケースバック越しに確認できる。
文字盤側の構成
Cal. 2455/2 は、ベースの Cal. 2455 が持つ9時位置のスモールセコンドを廃し、時・分・日付のみを表示する構成へ整理されている。これは機構的な簡略化というより、デザイン要請に応える編集的な改修である。ヒストリーク 222 では文字盤に「222」のアプライドインデックスとバトンハンドのみが配置されるため、スモールセコンドの小針を残すと密度過多となる。Cal. 2455/2 は、このレイアウト要請に対し、ベースムーブメントの輪列を保ちつつ、文字盤側の表示要素のみを再構成するという選択を採った派生である。