本文へ
CALIBER · TAG HEUER

Calibre 5 Day Date

自動巻 Automatic Analog

ETA 2834-2もしくはSellita SW240-1を基盤とする、TAG Heuerの自動巻デイデイト

Calibre 5 Day Date
movement · Calibre 5 Day Date
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

TAG Heuer「キャリバー5・デイデイト」は、ETAのCal. 2834-2もしくはSellitaのCal. SW240-1をベースとする自動巻きムーブメントである。直径29mm、振動数28,800vph (4Hz)、石数25(ETA)/26(Sellita)、パワーリザーブ約38〜41時間。時・分・中央秒に加え、12時位置の大型曜日窓と3時位置の日付窓を備える「パノラミック・デイ」構成を採る。ローターには「TAG Heuer / Calibre 5 / Swiss Made」の刻印とコート・ド・ジュネーブ仕上げが施され、カレラ、アクアレーサー、リンクの主力3針モデルに広く搭載される。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerTAG Heuer
ReferenceCalibre 5 Day Date
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels25 石
Power reserve38 h
Movement ⌀29.4 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate, Day
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 「キャリバー」という呼び名の意味

TAG Heuerが用いる「Calibre 5」「Calibre 7」「Calibre 16」といった番号体系は、自社で一から設計したムーブメントを指すものではない。多くはETAおよびSellitaから供給される汎用ベースムーブメントに、自社装飾とローター刻印を施したものを、ブランドの商品ラインへ組み込みやすいよう体系化したものである。Calibre 5は時分秒+カレンダー機能のシンプル自動巻、Calibre 7はGMT、Calibre 16はクロノグラフ──といった具合に、機能区分でカテゴリ分けされている。

その中で「Calibre 5 Day Date」は、Calibre 5の派生枝に当たる。ベースとなるCal. 2824-2(日付のみ)に対し、12時位置に大型の曜日表示窓を追加した姉妹機構Cal. 2834-2/Sellita SW240-1をブランド名義で採用するものである。

2. ベース機構の系譜:ETA 2834-2

ETA 2834-2は、1970年代に登場したETA 2824ファミリーの派生機構である。2824はもともと1971年に発表され、その後改良を重ねながら、世界中の中級自動巻時計の業界標準として君臨してきた。2834はその基本構造を継承しつつ、ムーブメント外周にデイ・ホイールを配置することで、文字盤12時位置にフル・スペリングのパノラミック曜日窓を実現する。

そのため2824の直径25.6mmに対し、2834の直径は29mmへ拡大している。曜日窓を3時位置に置き、略号で表示する姉妹機構Cal. 2836-2と並列の関係にあり、こちらを採用したTAG Heuerの内部呼称が「Calibre 5 Day Date S」となる。

3. 並行系譜としてのSellita SW240-1

2002年、スウォッチグループはグループ外ブランドへのETAムーブメント供給を段階的に縮小する方針を発表した。これは長らくETAを汎用ムーブメント源としてきたスイス時計業界に再編をもたらし、Sellitaを始めとする代替供給元の重要性を高める結果となる。Sellitaは2003年以降、ETA特許の期限切れに伴い、自社製として同等仕様の機構を製造する立場へ転じる。

Cal. SW240-1はETA 2834-2に相当するSellita側のデイデイト機構として、2008年頃から本格的に流通する。直径29mm、振動数28,800vph (4Hz)、石数26石(ETA比+1石は香箱とラチェット間の追加軸受)、パワーリザーブ約41時間と仕様はおおむね一致する。Calibre 5 Day Date搭載のTAG Heuer製品は、近年SW240-1ベースの個体が中心とされ、裏蓋から見える石数(25または26)が見分けの目安となる。

4. グレードと業界での位置

ETA・Sellitaいずれの基幹も、複数の調整グレードを持つ。ETAは Standard / Élaboré / Top / Chronometer の4段階、Sellitaも Standard / Special / Premium / Chronometer の4段階で構成される。グレードに応じて調整位置数、ヒゲゼンマイ素材、テンプ種別、耐震装置が変わり、保証される精度範囲も段階的に絞り込まれる。

TAG HeuerはCalibre 5系列についてÉlaboré相当以上のグレードを採用するとされる。Calibre 5 Day Date自体はCOSC認定の対象外ながら、汎用機構としての成熟度と保守部品の流通安定性によって、ブランドのデイリーユース向けラインの基盤を長年支えてきた。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

自動巻機構と振動数

Cal. 2834-2 / SW240-1は、いずれもボールベアリング軸受の中央ローターによる両方向巻き上げを採る自動巻きムーブメントである。ローターは時計方向・反時計方向のどちらに振れても巻上げに寄与し、装着者の腕の自然な動きから効率的にエネルギーを取り出す設計となる。手巻きも併用でき、リューズの基本位置から時計回りに回すことで主ぜんまいを直接巻き上げられる。

振動数は28,800vph(毎時28,800振動、4Hz)。この振動数は1960〜70年代に業界で広く採用された「ハイビート」の標準値であり、秒針の動きが見た目に滑らかであること、衝撃や姿勢変化に対する精度の復元力が高いこと、毎振動0.125秒という細かな時間分解能を確保すること、などから現在も自動巻きの主流帯域として定着している。

香箱・輪列・脱進機

主ぜんまいを収める香箱はシングル構成で、巻上げ完了時のパワーリザーブは約38〜42時間(ETA 2834-2)、もしくは約41時間(Sellita SW240-1)とされる。これは2824ファミリー全体に共通する設計上の特徴で、薄型ハイビート機構との両立を図るうえで妥当な持続時間として、長く受け入れられてきた値である。

脱進機はスイス・レバー脱進機の伝統的な形式を踏襲する。テンプの素材はグレードによって異なり、Standard・Élaboréでは銅ニッケル合金、Top・ChronometerではグルシダーCu系合金が用いられる。耐震装置もグレード依存で、Incabloc(主にTop以上)あるいはNovodiac/Etachoc(主にStandard・Élaboré)が採用される。SW240-1版もこの構成に倣う。

ヒゲゼンマイと調整方式

ヒゲゼンマイはStandard・Élaboré仕様でNivarox(ニッケル鉄合金系)、Top・Chronometer仕様でAnachronが採用される。緩急針側の調整機構として、ETACHRON(エタクロン)系のレギュレーター・システムを備える。エタクロンはピンの間隔と外端緩急棒を独立に調整できる構造で、ヒゲゼンマイの呼吸を整えやすく、世代を問わず長期保守性に優れた方式とされる。

調整位置はグレードに応じ、2位置(Standard)、3位置(Élaboré)、5位置(Top・Chronometer)と段階を踏む。COSC基準を満たすChronometerグレードでは、-4/+6秒/日の日差規格に適合するよう、5姿勢で個別調整が施される。

機能と操作系

機能は、時・分・中央秒(ハッキング機能付き)、12時位置のパノラミック曜日表示、3時位置の日付表示。曜日と日付はリューズ操作によるクイック・チェンジに対応し、リューズを2段引きしたうえで時計方向に回すと日付、反時計方向に回すと曜日が変わる。秒針は2段引きで停止し、秒単位の時刻合わせを可能とする。

2824系統に共通する高い汎用性ゆえに、補修部品の流通が安定し、長期間にわたる時計のメンテナンス基盤が確保されている点も、TAG Heuerが本機構を基幹キャリバーとして採用し続ける合理性のひとつと考えられる。

仕上げとローターの装飾

TAG Heuer向け仕様のローターには、コート・ド・ジュネーブ装飾(波状の研磨模様)が施され、「TAG Heuer / Calibre 5 / Swiss Made」の刻印が刻まれる。個体によってはコリマソン(蝸牛紋)とコート・ド・ジュネーブを組み合わせた装飾、ならびに地板やブリッジへのペルラージュ(円形研磨)も観察される。シースルー・バックを採るモデルでは、これらの装飾が背面から鑑賞できる。

汎用ベースの域を超えた高度なアンギュラージュやブラックポリッシュは施されないものの、ブランド機種の価格帯と整合する範囲で適切な仕上げが行き渡っており、ベース機構の素性を活かす整え方となっている。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references