系譜と歴史
1. 「キャリバー」という呼び名の意味
TAG Heuerが用いる「Calibre 5」「Calibre 7」「Calibre 16」といった番号体系は、自社で一から設計したムーブメントを指すものではない。多くはETAおよびSellitaから供給される汎用ベースムーブメントに、自社装飾とローター刻印を施したものを、ブランドの商品ラインへ組み込みやすいよう体系化したものである。Calibre 5は時分秒+カレンダー機能のシンプル自動巻、Calibre 7はGMT、Calibre 16はクロノグラフ──といった具合に、機能区分でカテゴリ分けされている。
その中で「Calibre 5 Day Date」は、Calibre 5の派生枝に当たる。ベースとなるCal. 2824-2(日付のみ)に対し、曜日表示を加えた姉妹機構Cal. 2834-2/Sellita SW240をブランド名義で採用するのが長く続いた形で、12時位置に大型の曜日窓を置く構成とされる。2021年のカレラ デイデイトでは、SW200系のCalibre 5に曜日円盤用の石を1つ加え、曜日と日付の窓を3時位置にまとめる構成へ変わった。
2. ベース機構の系譜:ETA 2834-2
ETA 2834-2は、1970年代に登場したETA 2824ファミリーの派生機構である。2824は1970年代初めに登場したとされ、その後改良を重ねながら、世界中の中級自動巻時計の業界標準として君臨してきた。2834はその基本構造を継承しつつ、ムーブメント外周にデイ・ホイールを配置することで、文字盤12時位置に大きな曜日窓を置けるようにしたとされる。
そのため2824の直径25.6mmに対し、2834の直径は29mmへ拡大している。曜日窓を3時位置に置く姉妹機構Cal. 2836-2と並列の関係にある。
3. 並行系譜としてのSellita SW240-1
2000年代初め、スウォッチグループはグループ外ブランドへのETAムーブメント供給を段階的に縮小する方針を打ち出したとされる。これは長らくETAを汎用ムーブメント源としてきたスイス時計業界に再編をもたらし、Sellitaを始めとする代替供給元の重要性を高める結果となった。
SW240はETA 2834-2に相当するSellita側のデイデイト機構とされ、石数は26石である。Calibre 5 Day DateはETA版(25石)とSellita版(26石)のいずれかを基盤とし、裏蓋から見える石数が見分けの目安となる。2021年のカレラ デイデイトはSW200系を基盤とし、こちらも26石とされる。
4. グレードと業界での位置
ETA・Sellitaいずれの基幹も、複数の調整グレードを持つ。ETAは Standard / Élaboré / Top / Chronometer の4段階、Sellitaも Standard / Special / Premium / Chronometer の4段階で構成される。グレードに応じて調整位置数、ヒゲゼンマイ素材、テンプ種別、耐震装置が変わり、保証される精度範囲も段階的に絞り込まれる。
TAG HeuerがCalibre 5系列でどのグレードを採用するかは、資料によって記述が異なる。Calibre 5 Day Date自体はCOSC認定の対象外ながら、汎用機構としての成熟度と保守部品の流通安定性によって、ブランドのデイリーユース向けラインの基盤を長年支えてきた。