4131
2023年、クロナジー脱進機を得た、デイトナ自動巻クロノグラフの新世代基幹キャリバー
Cal. 4131は、ロレックスが2023年に発表したコスモグラフ・デイトナ専用の自動巻クロノグラフムーブメントである。先代Cal. 4130の基本設計を踏襲しつつ、クロナジー脱進機、ブルー・パラクロム・ヒゲゼンマイ、パラフレックス耐衝撃機構、再設計された肉抜きローターと最適化ボールベアリングを統合した。振動数28,800vph (4Hz)、47石、パワーリザーブ約72時間、コラムホイールと垂直クラッチによるクロノグラフ機構を備え、Superlative Chronometer認定により日差-2/+2秒の精度を保証する。
| Maker | Rolex |
|---|---|
| Reference | 4131 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 44 石 |
| Power reserve | 72 h |
| Movement ⌀ | 30.5 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Small Seconds |
| Chronograph | Chronograph, Column wheel |
| Additional | Chronometer |
系譜と歴史
1. デイトナ自動巻ムーブメントの系譜
コスモグラフ・デイトナは1963年の登場から長らく手巻きキャリバーを搭載してきたが、1988年のRef. 16520で初の自動巻となり、ゼニス製エル・プリメロをロレックスが大幅に改修したCal. 4030を採用した。約200箇所の変更を加え、振動数を36,000vphから28,800vphへ落とし、デート機能を廃し、フリースプラングのグルシダーテンプとマイクロステラ式調速、ブレゲひげぜんまいを組み込んだ構成である。Cal. 4030は1988年から2000年まで12年間生産され、デイトナを自動巻クロノグラフへと脱皮させた。
2. 完全自社製化 ― Cal. 4130の登場
2000年、Ref. 116520および116523の発表に合わせ、ロレックスはデイトナ用の自社製クロノグラフムーブメントCal. 4130を投入する。前世代の水平クラッチからコラムホイールと垂直クラッチの組み合わせへと再設計され、構成部品数は大幅に削減された。垂直クラッチは、クロノグラフ作動時の秒針の初動の飛びを排し、連続作動下でも精度を損ねにくい。2005年からはパラクロム・ヒゲゼンマイが順次搭載され、後にパラフレックス耐衝撃機構へと進化を遂げる。Cal. 4130は23年間にわたりデイトナの中核を担う長寿キャリバーとなった。
3. 進化としてのCal. 4131
2023年、ジュネーブで開催されたWatches and Wondersにて、ロレックスはデイトナ生誕60周年に合わせCal. 4131を発表した。革命ではなく進化と位置付けられるとおり、振動数とパワーリザーブの仕様は先代と同一である。一方で、内部にはCal. 3235系から段階的に展開されてきたクロナジー脱進機、最適化されたボールベアリング、肉抜き加工された新設計のローターが盛り込まれ、信頼性と効率を一段引き上げた構成となる。同時に、ブリッジには本機で初採用された「ロレックス・コート・ド・ジュネーヴ」装飾が施され、プラチナRef. 126506のサファイアバックを通じて初めて広く公開された。
4. 派生 ― Cal. 4132とル・マン100周年
同じく2023年に発表された派生機構が、ル・マン24時間レース100周年記念モデルRef. 126529LNに搭載されたCal. 4132である。基本構造はCal. 4131と共通だが、専用の遊星差動歯車を介在させることで、通常12時間積算のクロノグラフを24時間積算へと拡張した。基板やブリッジを変更せずに機能拡張を実現した点に、Cal. 4131のアーキテクチャの拡張性が表れている。
技術解説
基本仕様と機構構成
Cal. 4131は、振動数28,800vph (4Hz)、47石、パワーリザーブ約72時間の自動巻クロノグラフムーブメントである。クロノグラフ制御方式として、コラムホイールと垂直クラッチを採用する。コラムホイールは円柱状の制御部品で、操作の確実性と感触の良さに優れる。垂直クラッチは、計測秒針の駆動・停止に際してクラッチを上下に動かす方式で、水平クラッチに見られる秒針の初動の飛びを抑え、長時間の連続稼働でも精度を損なわない。これらは先代Cal. 4130から引き継がれた基本設計である。
クロナジー・エスケープメント
Cal. 4131の中核となる革新が、ロレックスが2015年に発表したクロナジー脱進機の搭載である。脱進機とは、ゼンマイの解放を一定間隔で制御する機構で、機械式時計の精度と効率を決定づける要となる。クロナジー脱進機では、ガンギ車とアンクルの幾何形状を非対称に再設計し、トルク伝達の効率を15%向上させたとされる。素材はニッケル-リン合金で、高い耐磁性を備える。Cal. 3255やCal. 3235から段階的に展開されてきたこの脱進機が、ロレックスのクロノグラフキャリバーに導入されたのはCal. 4131が初となる。
オシレーター ― パラクロム・ヒゲゼンマイとテンプ
調速機構には、ロレックス自社製のブルー・パラクロム・ヒゲゼンマイが採用される。ニオブ-ジルコニウム系の常磁性合金で、磁場の影響を受けにくく、温度変化への安定性に優れる。先端にはロレックス独自のオーバーコイル(終端巻き上げ)が形成され、姿勢差による精度のばらつきを抑える。テンプは可変慣性タイプのフリースプラング構造で、マイクロステラ式の調速ナットによって慣性モーメントを微調整する仕様である。
パラフレックスと自動巻機構
オシレーター部は、2005年にロレックスが導入したパラフレックス耐衝撃機構の上にマウントされる。変形と変位の双方を組み合わせ、衝撃エネルギーを吸収しつつテンプの位置を保持する設計である。自動巻機構は、ペルペチュアル・ローターによる両方向巻き上げ式で、ローターは肉抜き加工が施される。新設計のボールベアリングにより、巻き上げ効率と耐久性が高められた。プラチナ製Ref. 126506では、ローターは18Kイエローゴールド製となり、サファイアクリスタルのケースバックを通じて視認できる。
仕上げと認定
ブリッジには、本機で初導入された「ロレックス・コート・ド・ジュネーヴ」装飾が施される。従来のコート・ド・ジュネーヴに対し、各帯の間に細い研磨溝を加えることで陰影に独自性を持たせた仕上げである。本機はCOSC公認クロノメーター認定を取得した後、ケーシング後にロレックス独自の検査を経てSuperlative Chronometerとして認定され、日差-2/+2秒の精度が保証される。