03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. ユニタス系からの置き換え
Cal. P.6000は、2018年1月のSIHHで発表されたルミノール・ベース・ロゴなどとともに登場したパネライの手巻キャリバーである。それまで同社のエントリーモデルは、ETAユニタス6497を基にした機械を使っていた。ラジオミール・ロゴの前身にあたるモデルでは、ユニタス系のOP XIが載っている。P.6000の投入によって、パネライはETAの機械を使う時計を作らなくなった。同社が初めて自社製ムーブメントを作ったのは2005年で、それ以前はすべての時計に外部の機械を使っていた。
P.6000は自社製の機械と説明される一方、SJXは、同じユニタスの設計を緩やかに下敷きにしながら、機能と構造を改めた機械と見ている。とりわけパワーリザーブは、前の世代の56時間から72時間へ延びた。2018年7月には、ラジオミール・ロゴ(PAM00753)と、9時位置に小秒針を加えたラジオミール・ブラックシール・ロゴ(PAM00754)にも載り、同社でもっとも手の届きやすいモデルの心臓となった。
2. 「NS」という区別
P.6000には、小秒針を表示するモデルと表示しないモデルがある。パネライはどちらの機械もP.6000と呼んでおり、小秒針を持たないモデルの公式の機能表示は時・分だけである。WatchBaseは、小秒針を使わないモデルの搭載機を「P.6000 NS」として別に整理しており、ルミノール・ベース・ロゴ(PAM00773、PAM01086/01087など)、ラジオミール・ロゴ(PAM00753)、ラジオミール・オフィチーネ(PAM01382/01383)などがこの扱いになる。機構の違いではなく、表示の違いによる便宜的な区別である。
3. 現行の基幹機として
P.6000はその後も同社の手巻の基幹として使われ続け、2026年のウォッチズ・アンド・ワンダーズでは、1960年代のRef. 6152/1に着想を得たルミノールPAM01731とルミノール・デストロPAM01732にも載った。いずれも小秒針付きで、300m防水のケースに収められている。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
基本仕様
Cal. P.6000 NSは、手巻機構の機械式キャリバーである。直径15½リーニュ、厚さ4.5mm、19石、110部品、振動数21,600vph(3Hz)で、1つの香箱で72時間(3日間)のパワーリザーブを備える。耐震装置はインカブロックである。機械そのものはP.6000と同じで、文字盤に小秒針を出さないモデルに使われる点だけが異なる。MonochromeはP.6000を大型で信頼性を重視した機械と評しており、44mmや45mmのケースにも収まる寸法を持つ。
テンプと脱進機
テンプの振動数は21,600vph(3Hz)である。現代の機械式時計で一般的な28,800vph(4Hz)より控えめだが、消耗が少なく、信頼性を重視する機械で使われることの多い値といえる。テンプは両側で支える受けで固定されており、片持ちの受けに比べて衝撃に対する安定性が高い。Monochromeは、この受けの構造と比較的ゆっくりした3Hzの振動数を、信頼性を意識した設計の要点として挙げている。脱進機はスイスレバー式で、テンプ・アンクル・ガンギ車という伝統的な構成を踏襲する。
秒針停止機構
P.6000は、リューズを引き出すとテンプを止める機構を備える。素のユニタス6497にはこの機構がなく、手巻の機械で秒を合わせにくい点は以前から指摘されてきた。P.6000では、時刻をより正確に合わせるためにこの装置が組み込まれている。もっとも、小秒針を持たないNS仕様のモデルでは秒を表示しないため、この機構の恩恵は小さい。Time Transformedも、秒針のない時計ではそれほど役立たないと書いている。
単一香箱と72時間
香箱は1つで、主ゼンマイの容量と輪列の効率によって72時間を確保する。同社上位の手巻キャリバーであるP.3000系が2つの香箱で3日駆動を実現するのに対し、P.6000はより簡素な構成で同じ日数に届かせている。前の世代のユニタス系の機械が56時間だったことを考えると、エントリーモデルの実用性を大きく高めた変更である。
外観
NS仕様の搭載モデルの多くは、ロゴを刻んだソリッドの裏蓋を採用しており、ムーブメントを外から見ることはできない。2018年のラジオミール・ロゴとブラックシール・ロゴも、ねじ込み式のソリッドの裏蓋を持つ。小秒針付きのP.6000を積むルミノール・ロゴ(PAM01084)も同様で、SJXは機械が見えないことを惜しんでいる。