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CALIBER · PANERAI

P.5000

手巻 Handwound Analog

2013年に登場した手巻自社製、双香箱で8日間のパワーリザーブを実現するパネライの基幹キャリバー

P.5000
movement · P.5000
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. P.5000は、2013年にOfficine Paneraiが発表した自社製の手巻機械式キャリバーである。直径35.7mm、厚さ4.5mm、振動数21,600vph、石数21石、127部品で構成される。最大の特徴は、二つの香箱を直列連結することで実現した8日間(192時間)のパワーリザーブにある。1940年代のAngelus社製ムーブメントが担ったパネライ伝統の長時間動力を、自社製で再構築した位置にある。初搭載はLuminor Marina 8 Days(PAM510/PAM511)で、44mm系手巻ラインを長く支えてきた。2018年にはストップセコンド機構を加えた改良版が登場した。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerPanerai
ReferenceP.5000
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency21,600 bph (3 Hz)
Jewels21 石
Power reserve192 h
Movement ⌀35.7 mm
HandsHours, Minutes, Small Seconds
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

8日間という伝統 ── Angelusからの系譜

8日間のパワーリザーブは、Paneraiのアイデンティティに深く結びついた要素である。1940年代から50年代にかけて、イタリア海軍の特殊潜水部隊へ供給された初期のRadiomir・Luminorは、Angelus社製の16リーニュ手巻きキャリバー(SF240系)を搭載していた。高リスクな潜入任務において、頻繁にリューズを操作してゼンマイを巻く余裕はなく、長時間動き続けるムーブメントが軍事的要請として求められた経緯がある。1990年代の復活以降、長らくUnitas 6497ベースのモディファイ機(OP I、OP XI等)を主力としてきたPaneraiが、自社製で8日間という伝統的スペックに回帰したのが、2013年発表のCal. P.5000である。

Unitas 6497を置き換える ── 自社化の象徴

P.5000の登場は、Paneraiのマニュファクチュール化プロセスのなかで象徴的な意味を持つ。2002年の高級複雑機Cal. P.2002、2009年のCal. P.999、2010年のCal. P.3000へと続く自社製キャリバー群の系譜のなかで、P.5000はとりわけ「Unitas 6497の後継」として位置づけられた。それまでLuminor Historicsの44mm系などに広く用いられてきた汎用ムーブメントを、Panerai自身の設計で置き換え、エントリーレベルの自社製化を推し進めるという意味合いである。初搭載となったPAM510 Luminor Marina 8 DaysとPAM511(Oro Rosso)を皮切りに、PAM560番台、PAM590、PAM915、Radiomirの一部機種等、44mm系手巻ラインの広範な機種へ展開された。

2018年のリデザイン ── ストップセコンドの追加

初代P.5000には、ハック機構(リューズを引いて秒針を停止させる機構)が搭載されていなかった。これはヴィンテージ・ポケットウォッチ系の手巻きムーブメントに共通する仕様だが、現代の精度文化からは保守的にも映る部分であった。2018年、PaneraiはP.5000を改良し、ストップセコンド・レバーを追加。同時にブリッジ設計も見直されている。同年には派生機構として、ケースバック側にパワーリザーブ・インジケーターを備えるP.5001(PAM796 destro等)、文字盤側に同表示を配するP.5002(PAM795、PAM797等)が登場し、家族系統が広がった。

ポケットウォッチの構造を踏襲する

P.5000の設計思想の中核は、現代的なモジュール化への意図的な抵抗にある。地板と大判のブリッジの間に大半の輪列を隠し、テンプ受けと中間車のみを露出させる二枚プレート構造は、20世紀前半までの懐中時計ムーブメントを意識的に踏襲したものと伝わる。21石という比較的少ない宝石数、シンプルな手巻機構、緩急針を排した可変慣性テンプといった選択は、装飾の華やかさではなく、構造の堅牢性と保守の容易性を志向した結果と言える。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

寸法とプロポーション

Cal. P.5000は、直径35.7mm(15¾ lignes)、厚さ4.5mmの比較的大型のムーブメントである。15¾リーニュという寸法は、現代の自動巻ムーブメントの標準(11.5〜12リーニュ前後)を大きく超え、20世紀前半までの懐中時計用ムーブメントに近い規模感である。これは44mmのLuminor/Radiomirケースの内寸に対してムーブメントが小さすぎないよう設計された結果でもあり、ケースとのプロポーションを意識した寸法選択と言える。部品点数は127個で、複雑機構を持たない手巻きの基本構成としては標準的な範囲に収まる。

双香箱直列連結による8日間パワーリザーブ

P.5000最大の機構的特徴は、二つの香箱(Mainspring barrel)を歯車を介して直列に連結し、合計192時間(8日間)のパワーリザーブを実現する点にある。直列接続は、合計トルクを大きくするのではなく、ゼンマイの全長を実質的に倍にすることで動力供給時間を延ばす設計である。Paneraiの説明によれば、長く細いゼンマイを2本用いる方式は、単一の大型ゼンマイを用いる場合と比べてトルクの変動が小さく、エネルギー供給の均一性が高まるとされる。この均一性は、ゼンマイ放出に伴う等時性(振動周期の安定性)の崩れを抑えるうえで重要な要素となる。

可変慣性テンプとフリースプラング設計

テンプはGlucydur(グルシダー、ベリリウム銅合金)製で、慣性モーメントを調整するためのタイミングスクリュー(慣性錘)をテンプリム外周に複数備える、いわゆる可変慣性テンプである。これは、緩急針(レギュレーター)でヒゲゼンマイの有効長を変えて精度調整する古典的な方式を排し、テンプ側の慣性を変えて調整する設計を意味する。フリースプラング型と呼ばれるこの方式は、ヒゲゼンマイが緩急針との接触を持たないため、衝撃や姿勢差に対して安定性が高いとされる。

振動数は21,600vph(3Hz)。現代の高精度機の標準である28,800vph(4Hz)より低く設定されているのは、長いパワーリザーブとゼンマイトルクのバランスを取るための選択である。高振動化はゼンマイのエネルギー消費を増やし、8日間という設計目標を達成しにくくする側面がある。

耐震機構とテンプ受けの調整

耐震装置にはスイスKIF社のParechoc®が採用される。テンプ受けは2本のネジで固定され、その下には双方向に回転する調整リングが配されている。このリングは、テンプ天真のピボット(軸先)とテンプ受けの軸受との間のエンドシェイク(軸方向の遊び)を微調整するためのもので、衝撃を受けた際にも脱進機が稼働を維持できるよう設計されている。軍用時計の系譜を持つブランドの設計思想と整合する機構選択と言える。

仕上げと装飾

ムーブメントは、大判のブリッジ(地板側の半分以上を覆う)を中心に、ブラッシュ仕上げ(ストレートグレイン)と面取りで構成される。コートドジュネーブやペルラージュのような華やかな装飾仕上げは控えめで、20世紀前半のミリタリー・ポケットウォッチに通じる質実な意匠である。透明バックを持つモデルでは、テンプ、ガンギ車、中間車の一部が視認できる構造になっている。

2018年版と派生キャリバー

2018年の改良版では、ハック機構が追加された。リューズを時刻合わせ位置まで引くと、テコがテンプに作用して回転を止め、秒針が静止する。同時にブリッジ設計も見直され、輪列の見え方が変わったとされる。派生機構として、裏面パワーリザーブ・インジケーターを備えるP.5001、文字盤側に同インジケーターを配するP.5002が現れており、いずれも香箱2個・8日間PRという基本構成を共有している。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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