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CALIBER · PANERAI

P.2003/10

自動巻 Automatic Analog

2015年、パネライ初のフル・スケルトン自動巻として登場した、P.2003系の意匠的到達点

P.2003/10
movement · P.2003/10
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. P.2003/10は、2015年にスイス・ヌーシャテルのパネライ・マニュファクチュールが発表した、同社初のフル・スケルトン仕様の自動巻ムーブメントである。基幹キャリバーP.2003と同じく、3つの香箱を直列に連結することで10日(240時間)のパワーリザーブを確保し、振動数は28,800vph(4Hz)、石数は25石を数える。地板・受け・ローターを含む主要部品を骨格状に肉抜きすることで、ムーブメント機構そのものを意匠の中心に据えている。初出はラジオミール1940 10デイズ GMT オートマチックオロロッソ(PAM00624/PAM00625)である。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerPanerai
ReferenceP.2003/10
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Jewels25 石
Power reserve240 h
Movement ⌀37.8 mm
HandsAdditional 12 Hour Hand (adjustable), Additional 24 Hour Hand (fixed), Hours, Minutes, Small Seconds
DateDate
AdditionalPower Reserve Indicator
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. P.2003を骨格へ作り直す

Cal. P.2003/10の出発点は、2006年頃にデビューしたパネライ初の自社製自動巻、Cal. P.2003にある。
P.2003は、ヌーシャテルのマニュファクチュールが手巻のCal. P.2002(2005年)に続いて投入した
キャリバーで、3つの香箱を直列に配し10日のパワーリザーブを実現した、当時のパネライにとって
画期的な作品である。

P.2003/10は、このP.2003を機構的にはほぼ踏襲しつつ、地板・受け・香箱・ローターに至るまで
徹底的に肉抜きを施し、機械の骨格そのものを鑑賞対象へと再設計したものである。
パネライにとって、ローターを備えた自動巻ムーブメントを本格的にスケルトナイズした例は
これが初であり、構造を変えずに「見せ方」を組み直すという、この種のキャリバーに特有の
設計思想がそのまま反映されている。

2. ヌーシャテル・マニュファクチュールと「ラボラトリオ・ディ・イデー」

パネライは、リシュモン傘下入り後の2002年にスイス・ヌーシャテルへマニュファクチュールを開設し、
2005年にCal. P.2002で自社製ムーブメントの時代を本格的に開いた。社内の研究開発部門は
「ラボラトリオ・ディ・イデー(アイデアの研究室)」と呼ばれ、機構・素材・耐久性を統合的に
扱う少数精鋭のチームとして、現在まで同社の技術プロジェクトを牽引している。

P.2003/10は、この体制のもとで磨かれた仕上げ技術と機構設計の蓄積が、装飾という形で外へ
表出した一例といえる。Cal. P.2003シリーズはもともと、Cal. P.2002の手巻設計を出発点として
自動巻化された系統であり、その派生として円形パワーリザーブを採るP.2003/5(2008年)、
円形リザーブと24時間表示を備えるP.2003/6(2010年代初頭)などが順次展開された。
P.2003/10はこの系譜の中で、機能拡張ではなく意匠的展開として位置付けられる派生である。

3. 派生としての/10と、その後の継承

P.2003/10が初めて搭載されたのは、2015年1月にウォッチズ&ワンダーズ・アジア(香港)で
発表されたラジオミール1940 10デイズ GMT オートマチック オロロッソである。
リファレンスPAM00624(ブラウン文字盤)とPAM00625(ブラック文字盤)はいずれも45mmの
5N系赤金合金(現行ラインアップでは「ゴールドテック™」名称で展開される)ケースを採用し、
サファイアバックを通じてスケルトナイズドされたムーブメントが一望できる構成となっていた。

翌2016年にはブルー文字盤の特別仕様PAM00659にも搭載され、以後、限定・特別仕様を中心に
ラジオミール1940系の上位モデルに供給されてきた。パネライにおいてスケルトン自動巻の領域は、
その後マイクロローター方式のP.4001/Sなどへも広がっていくが、P.2003/10は「10日パワーリザーブの
3バレル機構そのものをスケルトンとして見せる」という、機構的雄弁さをもった原型として今も
位置付けられる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

1. 基本構成

Cal. P.2003/10は、自動巻機構を備えたメカニカル・ムーブメントである。直径は13¾リーニュ
(およそ31mm)、厚みは8.10mm、石数は25石、振動数は28,800vph(4Hz)。耐震装置にはKIF
パレショック™、テンプにはグルシダー製の慣性可変式フリースプラング(緩急針を持たず、
テンプ自身の慣性モーメント調整で歩度を整える方式)を採用する。公式仕様では総部品点数は
299点とされる。

2. 10日パワーリザーブと3バレル機構

最大の機構的特徴は、直列に連結された3つの香箱で構成されるパワートレインである。
これによりフル巻き上げ時に約240時間(10日)のパワーリザーブが得られる。3バレル直列構造は
Cal. P.2002以降のP.2000系に共通する設計で、ゼンマイのトルク変動を抑え、10日間にわたって
比較的安定した駆動力をテンプに供給することを意図したものである。本構造はパネライが
特許を取得している。残量はダイヤル6時位置のリニア(直線)型パワーリザーブインジケーターで
示される。

巻き上げは、ボールベアリングで支持された両方向巻きのオシレーティングウェイトが担う。
ローターは肉抜きされたうえで外周に「Officine Panerai」のエングレービングが施され、
スケルトン地板の上に重ねて視認できる構成となっている。

3. スケルトナイゼーションと仕上げ

P.2003/10を特徴づけるのは、地板と受け、3つの香箱の側面、そしてローターに至るまで
施された徹底的な肉抜き加工である。機能上不要な金属部分を取り除き、輪列と香箱の動きを
表裏ともに見せる構成となっている。各部品の縁にはポリッシュ仕上げの面取り(アネグラージュ)
が施され、骨格化された橋(ブリッジ)の幾何学的な造形が浮かび上がる。

ローターは溝が刻まれた円弧状で、ブランドロゴ部分は艶出し仕上げとされる。これにより、
サファイアシースルーバックを通じて、ムーブメントの三次元的な構造そのものが鑑賞対象として
成立する。基幹のCal. P.2003が「機能を内側に収めた」設計であるのに対し、/10は同じ機構を
「外に開く」方向へ転調したものといえる。

4. GMTと秒戻し機構

機能面では、第二時間帯表示(GMT)、デイト、ストップセコンド、秒戻し装置を備える。
中央のアロー(矢印)型針が第二時間帯を24時間制で示し、9時位置のスモールセコンド内に
AM/PMインジケーターが組み込まれる。ローカルタイム側の時針は分針を止めることなく
前後双方向に1時間単位でジャンプ送りでき、これに連動して日付も自動で進退する。

秒戻し装置(セコンド・リセット)は、リューズを引いたときにテンプ停止と同時に秒針を
0位置へ機械的に戻す機構で、ハート形カムとレバーによって構成される。基準時刻との
正確な同期を可能にするための仕掛けで、Cal. P.2000系全体に共通するパネライらしい
実用的な解である。

5. 派生グレードと位置付け

仕様上の数値はP.2003とほぼ共通する一方、P.2003/10は装飾性と仕上げの工数が大きく
引き上げられたグレードに相当する。同じP.2003系列でも、P.2003/5・P.2003/6が表示方式の
バリエーション(円形パワーリザーブ等)として派生したのに対し、P.2003/10は機構ではなく
仕上げと造形を主軸に分岐したキャリバーであり、ラジオミール1940系の上位モデルを
中心に展開されてきた。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references