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CALIBER · LONGINES

L888.5 ND

自動巻 Automatic Analog

ETA 2892系を専用化し、シリコンヒゲで耐磁性を高めたLonginesの自動巻、その日付なし構成

OVERVIEW · 概要

L888.5 NDは、Swatch Group傘下のETAがLongines専用に供給する自動巻きキャリバーL888.5の、日付を持たないノンデイト構成である。母体はETA 2892-A2系の派生A31.L11で、振動数25,200vph (3.5Hz)、21石、パワーリザーブは公称64〜72時間。調速にはシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、ISO 764規格の約10倍に及ぶ耐磁性を確保する。COSC認定を持つ姉妹機L888.4に対し、本機は非認定版にあたる。Legend DiverやHydroConquestのノンデイト系などに搭載される。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerLongines
ReferenceL888.5 ND
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency25,200 bph (3.5 Hz)
Jewels21 石
Power reserve64 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
AdditionalChronometer
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

ETAの土台と「専用キャリバー」という立場

Longinesは現在、自社で一からムーブメントを設計・製造する体制を持たない。同社の機械式キャリバーは、いずれもSwatch Group傘下のETAが供給する汎用機を母体とする。ただしL888系は、市場で広く流通する2824-2のような開放型ではない。ETAが2892-A2を改修し、Longinesにのみ供給する専用キャリバーである。自社製と汎用の中間にある、グループ内製ならではの立ち位置といえる。

母体の2892-A2は、1960年代にエテルナが開発した薄型自動巻きを源流とする。ETAがその設計資産を引き継ぎ、薄く堅牢な定番機として長く供給してきた。改修の自由度が高く、Omegaなどグループ各社も派生機を用いてきた経緯がある。

L888という系譜の進化

L888系は2015年頃に登場し、それまでLonginesが用いていたETAベースの旧世代キャリバーを置き換えていった。同系統は世代を重ねるごとに改良されている。初期のL888.2はNivaroxヒゲと約65時間のパワーリザーブを備え、続くL888.3ではNivachronヒゲで耐磁性を高めた。

シリコンヒゲを採用したのが、L888.4とL888.5である。両者の違いはCOSC認定の有無にあり、認定を受けるのが.4、受けないのが.5となる。L888.5 NDは、この.5を日付なし構成に割り当てた識別子であり、ノンデイト文字盤のLegend DiverやHydroConquest系などに供給される。より新しいL888.6も派生として登場している。

低振動という設計選択

L888系を性格づけるのが、25,200vph (3.5Hz) という控えめな振動数である。Swatch Group内では、2892系を基にするOmega Cal.2500も同様の低振動を採ってきた。振動数を下げる選択は、運針の滑らかさをわずかに損なう一方、ゼンマイの消費を抑えて長時間駆動を引き出す。

Longinesはこの設計を、シリコンヒゲによる耐磁性と、72時間級の駆動という二つの実利へ振り向けている。華やかな高振動ではなく、日常の堅牢さを優先した選択といえる。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

L888.5 NDの基盤となるのは、ETAの自動巻きA31.L11である。これはETA 2892-A2を母体とする派生で、2892-A2自体は1960年代にエテルナが手がけた薄型自動巻きを源流に持つ。厚みのある2824系とは別系統の、薄型かつ改修の自由度が高い土台として知られる。Longinesはこの2892系をシリコンヒゲなど自社仕様に改めたうえで、ETAから供給を受けて搭載する。

機構面で最も特徴的なのは、振動数を25,200vph (3.5Hz) に抑えた設計である。一般的な2892系の28,800vph (4Hz) に対し、L888系は毎時振動数を意図的に下げている。テンプ(調速を司る回転振り子)が刻む回数が減るため、香箱(ゼンマイを収める部品)のエネルギー消費が緩やかになる。この低振動が、長時間のパワーリザーブを成立させる土台となる。

なおパワーリザーブの公称値は、時期やモデルによって60〜64時間と記載された例もあり、現行世代では72時間とされる。低振動に加え、効率を高めたゼンマイと輪列の組み合わせが、この駆動時間を支えている。

調速機構の核は、シリコン製ヒゲゼンマイ(テンプの往復運動を司る渦巻きバネ)である。シリコンは非磁性で、温度変化や気圧の影響を受けにくく、潤滑も要さないとされる。Longinesはこのヒゲにより、ISO 764規格が定める耐磁基準の約10倍、おおよそ600ガウスまでの磁場に耐える性能を公称する。2020年9月以降、シリコンヒゲ搭載モデルには5年保証が付与されている。

巻き上げローターはボールベアリング式で、両方向に巻き上げる。耐衝撃機構にはNivashockを採用し、直径は25.6mm、厚さは3.85mm、石数は21石である。

「ND」はノンデイト(No Date)を指す識別子である。L888.5そのものは日付表示を備えるが、ND版は日付機構を表示に用いない時分秒の三針構成に割り当てられる。機構の中身はL888.5と共通で、文字盤に日付窓を持たないモデルへ供給される位置づけである。

認定の面では、COSC(スイス公認クロノメーター検定協会)認定を受けるのが姉妹機L888.4であり、L888.5はその非認定版にあたる。両者の機構差はほぼなく、認定の有無が主たる区別となる。仕上げは量産機らしい実用本位で、装飾よりも、耐磁性と長時間駆動という機能面に設計の主眼が置かれている。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references