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CALIBER · JAEGER-LECOULTRE

770

自動巻 Automatic Analog

2015年登場、Gyrolabテンプとデッドビート秒を備えるジャガー・ルクルトの自社製自動巻

770
movement · 770
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

ジャガー・ルクルトCal.770は、2015年にジオフィジック・トゥルーセコンドへ初搭載された自社製の自動巻キャリバーである。毎時28,800振動 (4Hz)、36石、パワーリザーブ40時間を備える。最大の特徴は、非円形の独自テンプ「Gyrolab」と、秒針が1秒ごとに刻むデッドビート秒(トゥルーセコンド)機構の二点にある。Gyrolabは2007年のコンセプトウォッチで初公開された機構を量産機へ初めて応用したもので、空気抵抗の低減を狙う。世界時モジュールを加えた派生がCal.772であり、両者はジオフィジック・コレクションの中核を担った。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerJaeger-LeCoultre
Reference770
TypeAutomatic
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels36 石
Power reserve40 h
HandsHours, Jumping Seconds
DateDate
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ジオフィジックの系譜と量産化への八年

Cal.770の出自は、1958年の初代ジオフィジックにさかのぼる。同機は国際地球観測年(IGY)に際し、科学者や探検家のための高精度な計器時計として開発された製品である。耐磁・耐衝撃構造を備えた実用機であり、ジャガー・ルクルトの「計器としての時計」という思想を象徴する存在であった。

2014年、ブランドはこの名を冠した復刻モデルを発表し、翌2015年にはジオフィジック・トゥルーセコンドとユニバーサルタイムを投入する。この二機種に新たに搭載されたのがCal.770系である。開発の主眼は、2007年のコンセプトウォッチ「マスターコンプレッサー・エクストリームラボ1」で初めて示された非円形テンプを、いかにして量産機構へ落とし込むかにあった。テンプの量産化には八年を要したと伝わる。

2. デッドビート秒の復権

Cal.770のもう一つの柱が、秒針が1秒ごとに静止しながら進むデッドビート秒(トゥルーセコンド、別称セコンド・モルト)である。機械式でありながらクォーツのように秒を刻むこの機構は、一見すると逆説的だが、ジャガー・ルクルトにとっては新奇な試みではない。同社は19世紀末、独立したデッドビート秒を備えた懐中時計用キャリバーをヌーシャテル天文台へ提出した記録を持つとされ、Cal.770はその伝統の現代的な再解釈と位置づけられる。

トゥルーセコンドという名称は、ブランドが「デッドビート」という素気ない語を避けて選んだ呼称である。秒を刻むという挙動を、計器時計としての正確さを示す視覚的な記号へと読み替えた点に、コレクションの性格がよく表れている。

3. 派生キャリバーと系譜

Cal.770を基盤として、世界時表示モジュールを組み込んだのがCal.772である。両者は振動数・石数・パワーリザーブを共有し、部品点数のみがわずかに異なる。さらに上位のジオフィジック・トゥルービヨン・ユニバーサルタイムには、Gyrolabテンプを回転キャリッジ内へ収めたCal.948が用いられた。

ジオフィジック・コレクション自体はその後生産を終えており、Cal.770を搭載するトゥルーセコンドも現行ラインからは姿を消している。短命なシリーズではあったが、コンセプト段階にとどまっていた機構を量産機へ橋渡しした点で、ブランドの技術史における一つの転換点として記憶される。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

Gyrolabテンプ — 非円形という選択

Cal.770を特徴づける最大の要素が、独自形状のテンプ「Gyrolab」である。一般的なテンプが円環状であるのに対し、Gyrolabは円の上下を切り欠いた、ジャガー・ルクルトの紋章である錨(いかり)を思わせる非対称形状をとる。テンプとは、ヒゲゼンマイと組んで一定周期で振動し、時計の歩度(精度)を司る調速機構の中核部品である。

非円形化の狙いは空気抵抗の低減にある。回転時に空気をかき分ける面積が減ることで、テンプはより自由に振動し、駆動に要するエネルギーが小さく済むとされる。慣性質量を外周の錘へ集中させることで、必要な慣性モーメントを保ちつつ外形を絞る設計である。この機構は2007年のマスターコンプレッサー・エクストリームラボ1で初公開され、Cal.770において初めて量産機に採用された。ヒゲゼンマイはマニュファクチュール内で手作業により仕上げられると伝わる。

トゥルーセコンド機構 — 機械式の刻む秒

デッドビート秒は、追加の専用輪列と、中心軸の近くに配置された微小なバネによって実現される。このバネは輪列から供給されるエネルギーを蓄え、1秒ごとに解放することで秒針を段階的に送り出す。バネを秒針の軸の至近に置いて輪列を短く保つことで、秒針の動作を安定させる設計がとられている。ローター下のブリッジには小窓が設けられ、この機構の一部を観察できる。

加えてCal.770は、時針を独立して1時間単位で前後に動かせる機構を備える。リューズ操作のみで時針を送れるため、分針の精度を乱さずに時差を調整でき、旅行者に適した実用性を持つ。秒針を止めて時刻を合わせるハック機能も併せ持つ。

ローターと仕上げ

自動巻のローターは18Kピンクゴールドの一塊から削り出され、JLCの錨モチーフをかたどって肉抜きされている。軸受にはセラミック製ボールベアリングが用いられる。サファイアクリスタルのケースバックを通して、この金無垢ローターとGyrolabテンプの動きを直接鑑賞できる点が、本キャリバーの見どころである。地板とブリッジにはコート・ド・ジュネーブ(ジュネーブ縞)が施され、ネジは焼き入れによるブルースクリューとなる。テンプ受けは両持ちのブリッジ形式を採り、片持ちの受けに比べて衝撃時の安定性を高めている。

数値の読み方

毎時28,800振動 (4Hz)は1秒あたり8回の振動に相当し、現代の実用自動巻では標準的な値である。高振動ほど外乱に強く精度を保ちやすい一方、消費エネルギーは増す。パワーリザーブ40時間という値には、デッドビート秒機構が秒針を毎秒押し出すために相応のエネルギーを要する事情も反映していると伝わる。石数は36石、総部品点数は275点である。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references