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CALIBER · JAEGER-LECOULTRE

176

手巻 Handwound Analog

2013年、創業180周年に登場した、浮遊式の多軸トゥールビヨンとデジタルクロノを束ねるJLCの手巻

OVERVIEW · 概要

Cal.176は、ジャガー・ルクルトが2013年に創業180周年を記念して発表した手巻キャリバーである。グランドコンプリケーション群「イブリス・メカニカ」の10作目にあたる。最大の特徴は、上部ブリッジを廃した浮遊式の多軸トゥールビヨンと、新開発の球状ヒゲゼンマイにある。瞬時に切り替わるデジタル式の分積算計を備えたモノプッシャー・クロノグラフも同居する。振動数21,600vph (3Hz)、2つの香箱でパワーリザーブ約45時間、石数82。Master Grande Tradition Gyrotourbillon 3のJubilee(2013年)やMeteorite(2019年)に搭載された。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerJaeger-LeCoultre
Reference176
TypeHandwound
DisplayAnalog
Frequency28,800 bph (4 Hz)
Jewels58 石
Power reserve50 h
HandsAdditional 24 Hour Hand (fixed), Hours, Minutes
ChronographChronograph, Column wheel
AdditionalTourbillon Escapement
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ジャイロトゥールビヨン、三代目

ジャガー・ルクルトの多軸トゥールビヨンは、2004年のMaster Gyrotourbillon 1に始まる。2008年にはReverso Gyrotourbillon 2が続き、回転するカゴの中で時間を刻む立体的な調速機構は、同社の技術的象徴となっていった。Cal.176を積むMaster Grande Tradition Gyrotourbillon 3は、この系譜の三代目にあたる。

2013年、ジャガー・ルクルトは創業180周年を迎えた。Cal.176は、同社のグランドコンプリケーションを束ねる「イブリス・メカニカ」コレクションの10作目として、この節目に発表されている。19世紀の懐中時計を思わせる古典的な構えのなかに、最新の調速機構を収めた一本であった。

2. 「浮遊」への到達

三代目が先代と一線を画したのは、トゥールビヨンを支える上部ブリッジを取り払った点にある。カゴは下方から片持ちで支えられ、文字盤上に浮かぶように回転する。ジャガー・ルクルトの多軸トゥールビヨンとして、この浮遊式(フライング)構造は初の試みであった。

調速機の心臓部にも変化があった。先代では円筒形のヒゲゼンマイが用いられたが、三代目では球状のヒゲゼンマイが新たに開発された。2本の末端カーブを持つこの形状は、姿勢差による偏りを抑え、等時性を高めることを狙ったものとされる。さらに、多軸トゥールビヨンと、瞬時に分を表示するデジタル式クロノグラフという、異質な二つの機構を一つのムーブメントに同居させた構成も新しかった。

3. つくるという仕事

Cal.176の核心は、手仕事の集積でもある。アルミニウム製のカゴは5軸CNC加工機で削り出され、テンプとヒゲゼンマイを含めた回転機構の総重量はわずか0.43gに抑えられた。軽さは調速機が消費する力を減らし、限られた動力を有効に使うための条件である。

球状ヒゲゼンマイの末端カーブの成形は、マニュファクチュールでも限られた職人だけが担う工程と伝わる。Cal.176は、ル・サンティエのグランドコンプリケーション工房で開発・組立・調整が行われた。2019年には、隕石をダイヤルに配したMeteoriteが同じCal.176を載せて登場し、機構が長く生かされていることを示している。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

1. 二つのカゴが描く多軸トゥールビヨン

Cal.176のトゥールビヨンは、入れ子状に組まれた二つのカゴ(カゴ=調速機を収める回転枠)から成る。内側のカゴは24秒で1回転(毎分2.5回転)し、外側のカゴは1分で1回転する。両者は異なる速度で、互いに逆向きに回る。単軸のトゥールビヨンが一つの平面内で回転を均すのに対し、二軸式は複数の平面にまたがって回ることで、腕の上でとる多様な姿勢に対応し、重力が精度に及ぼす偏りを平均化する狙いがある。

このカゴはアルミニウムから削り出され、テンプやヒゲゼンマイを含む回転部の総重量は0.43gにとどまる。トゥールビヨン部だけで112点の部品が用いられる。上部ブリッジを持たない浮遊式のため、機構は宙に浮いて見える。

2. 球状ヒゲゼンマイとテンプ

調速機には、14カラットの青焼きゴールド製テンプ(テンプ=往復運動で時を刻む振り子に相当する部品)が据えられる。これと組む球状のヒゲゼンマイは2本の末端カーブを備え、伸縮の中心を保ちやすい形状とされる。平ヒゲや円筒ヒゲに対し、球状ヒゲは三次元的に膨張・収縮するため、姿勢差の影響を抑えやすいと説明される。振動数は21,600vph (3Hz)で、毎時21,600回の振動が時間の基準を刻む。

3. デジタル式モノプッシャー・クロノグラフ

Cal.176は、トゥールビヨンと一体化したクロノグラフを併せ持つ。経過秒は通常の針で示し、経過分は窓のなかで数字が瞬時に切り替わるデジタル式の積算計(0から59分)で表示する。始動・停止・帰零は2時位置の単一のボタンで行うモノプッシャー方式である。分が連続的に這うのではなく瞬時に飛ぶ「インスタンタネス(瞬時送り)」機構が、視認性を高めている。文字盤には24時間制の昼夜表示も組み込まれる。

4. 動力と仕上げ

動力は2つの香箱から供給される。香箱を二段に備えることで、調速機とクロノグラフ機構の双方へ余裕をもって動力を送る構成である。公称パワーリザーブは約45時間である(資料により48時間とする記載もある)。部品点数は592、石数は82、ムーブメント厚は11.15mm。地板やブリッジには洋銀(ジャーマンシルバー)が用いられ、青焼きのネジ、手作業の面取り、研磨された石座などの仕上げが見られる。表裏のサファイアクリスタルを通して、回転するトゥールビヨンとデジタル表示、そして手仕事の細部を両面から鑑賞できる構成となっている。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references