03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
エル・プリメロという出自
HUB4700の素性を語るには、1969年のエル・プリメロまで遡る必要がある。ゼニスが発表したこのキャリバーは、毎時36,000振動という当時例のない高振動を備えた自動巻クロノグラフであった。10分の1秒の計測を可能とし、クロノグラフ史の節目となった機械である。
1969年は自動巻クロノグラフが相次いで登場した年でもある。ホイヤーらの開発したキャリバー 11、セイコーの6139など複数の陣営が前後して現れた。エル・プリメロは、なかでも一体型かつ高振動という二点で独自の位置を占める。
グループ内での供給
ウブロとゼニスは、ともにLVMHグループに属する姉妹ブランドである。HUB4700は、このグループ内の供給によって成立したキャリバーといえる。汎用のエボーシュでも完全な自社開発でもなく、姉妹ブランドの基幹の機械をウブロ向けに仕立て直した、中間的な出自を持つ。Monochromeは2015年の記事で、HUB4700がエル・プリメロを基にしていることを、両ブランドがLVMHに属し、当時ともにジャン-クロード・ビバーが率いていたことと結びつけて説明している。
2014年の登場とその後
HUB4700を代表的な搭載機とするのが、2014年に誕生したスピリット・オブ・ビッグバンである。Monochromeによれば、このコレクションは人気のビッグバン・シリーズを発展させたもので、ビッグバンのおなじみの要素を保ちながら、それまでウブロが避けていたトノー(樽)形のケースをまとった。以後、このトノー形のシリーズは10年にわたって広がり、多彩な素材と色の版を得てきた。2015年にはブルース・リーの生誕75周年を記念した黒いセラミックの版が、2025年には砂色、濃緑、空色のセラミックをまとった各200本の限定版が加わっている。Monochromeは2025年の記事で、HUB4700を、強化され現代化されたエル・プリメロのウブロ版と紹介している。
05 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
HUB4700は、ゼニスのエル・プリメロを基にする自動巻クロノグラフである。母体のエル・プリメロは、クロノグラフの起動・停止・帰零をコラムホイール(複数の柱を立てた円盤で操作を切り替える部品)で制御し、水平クラッチで動力を伝える一体型の機械として知られる。コラムホイール式は、プッシャーの感触が滑らかで作動が確実とされ、伝統的に上位の機械に用いられてきた。
振動数は36,000vph (5Hz)。テンプ(時間の基準を刻む振動体)が1秒間に10回振動するため、計測の刻みが一般的な28,800vph (4Hz)の機械より細かい。振動が速いほど、姿勢差や外部からの衝撃が精度に与える影響を受けにくいとされる。
調速機構と現代化
調速はテンプとヒゲゼンマイ(渦巻状のばね)が担う。Monochromeによれば、HUB4700は摩擦の小さいシリコン製のガンギ車を備える。脱進機とは、エネルギーを一定量ずつ解き放つ機構であり、ガンギ車はその要の部品である。シリコンは軽く、潤滑への依存も小さく、磁気の影響を受けにくい素材で、1969年に始まる設計を現代の素材で更新した一点といえる。
香箱(ぜんまいを収める容器)から得られるパワーリザーブは50時間。高振動はエネルギーの消費が大きいが、そのなかで実用的な持続時間を確保している。石数は31石、部品点数は278個である。この部品点数と石数は、ゼニスが2019年のA384リバイバルに載せたエル・プリメロ400についてMonochromeが伝える値(278部品・31石・50時間)と一致しており、HUB4700が母体の基本構成をそのまま受け継いでいることを示している。違いは、シリコン製のガンギ車と、骨格化による見せ方にある。
文字盤のレイアウトと見せ方
文字盤には、3時位置と6時位置にクロノグラフの積算計、9時位置に常時運針の小秒を置き、日付は4時半位置の窓に示す。中央のクロノグラフ秒針は、先端を開き、ウブロの「H」をかたどった釣り合いの重りを持つ。
HUB4700を特徴づけるのは、機械を多層に骨格化した点である。地板や受けを大胆に肉抜きし、サファイアクリスタルの文字盤を通して、重なり合う機構を正面から見せる。針も骨格化され、機械の眺めを遮らないよう配慮されている。トノー形のスピリット・オブ・ビッグバンのケースのなかで、高振動のクロノグラフの構造そのものが文字盤の役割を果たしている。