HUB4700
2014年、姉妹ブランドのエルプリメロを骨格化した、ウブロの5Hzハイビート自動巻クロノグラフ
HUB4700は、ウブロが2014年に導入した自動巻クロノグラフ・キャリバーである。姉妹ブランドであるゼニスのエルプリメロ400を基盤とし、骨格化(スケルトン化)を施す。コラムホイール式のクロノグラフ機構を備える。振動数は36,000vph (5Hz)の高振動で、10分の1秒計測に対応する。パワーリザーブは50時間、石数31石、部品点数278個。脱進機にはシリコン素材を採り入れ、1969年由来の設計を現代化した。スピリット・オブ・ビッグバンを代表的な搭載先とする。
| Maker | Hublot |
|---|---|
| Reference | HUB4700 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 36,000 bph (5 Hz) |
| Jewels | 31 石 |
| Power reserve | 50 h |
| Movement ⌀ | 30 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Small Seconds |
| Date | Date |
| Chronograph | Chronograph, Column wheel |
系譜と歴史
エルプリメロという出自
HUB4700の素性を語るには、1969年のエルプリメロまで遡る必要がある。ゼニスが発表したこのキャリバーは、毎時36,000振動という当時例のない高振動を備えた自動巻クロノグラフであった。10分の1秒の計測を可能とし、クロノグラフ史の節目となった機械である。「最初」を意味するその名は、この野心を端的に示す。
1969年は自動巻クロノグラフが相次いで登場した年でもある。ホイヤーらの開発したキャリバー11、セイコーの6139など複数の陣営が前後して市場に現れた。エルプリメロは、なかでも一体型かつ高振動という二点で独自の位置を占めるとされる。
クォーツ危機を経てもなお、エルプリメロは生き延びた名機である。1988年からはロレックスがデイトナに改良版を採用するなど、他社の供給基盤としても重用された経緯を持つ。
グループ内での供給
ウブロとゼニスは、ともにLVMHグループに属する姉妹ブランドである。HUB4700は、このグループ内供給によって成立したキャリバーといえる。汎用エボーシュでも完全な自社開発でもなく、姉妹ブランドの基幹機械を譲り受け、ウブロが再構築するという中間的な出自を持つ。
ウブロは自社のウニコ(HUB1240系)という独自クロノグラフを擁する。そのなかであえてエルプリメロを採用した点に、同社の思想がうかがえる。未来的な外装に歴史ある名機を収めるという、「フュージョン」の発想である。導入当時、LVMH傘下の各ブランドが何らかの形でエルプリメロを用いる状況となった点も、しばしば指摘される。
2014年の登場とその後
HUB4700が初めて姿を見せたのは、2014年のスピリット・オブ・ビッグバンである。トノー型のケースに、骨格化したエルプリメロが据えられた。以後、本キャリバーは同コレクションの中核として、多彩な素材・色のバリエーションを得て展開している。近年もシリコン部品の採用など、漸進的な更新が続いている。
技術解説
基本構造とハイビート
HUB4700は、ゼニスのエルプリメロ400を基盤とする自動巻クロノグラフである。クロノグラフの起動・停止・復帰は、コラムホイール(柱歯車。複数の柱を立てた円盤で操作を切り替える部品)が制御する。クロノ秒針と輪列の断続には水平クラッチを用い、エルプリメロ以来の構造を受け継ぐ。コラムホイール式は、プッシャーの感触が滑らかで作動が確実とされる。カム式と並ぶ二方式の一方として、伝統的に上位機に用いられてきた。
振動数は36,000vph (5Hz)。テンプ(時間の基準を刻む振動体)が1秒間に10回振動するため、クロノグラフは10分の1秒単位の計測に対応する。一般的な28,800vph (4Hz)機に比して刻みが細かい。加えて振動が速いほど、姿勢差や外部からの衝撃が精度に与える影響を受けにくく、安定した運針につながる。
調速機構と現代化
調速はテンプとヒゲゼンマイ(渦巻状のばね)が担う。エルプリメロの設計を踏襲しつつ、HUB4700では脱進機のガンギ車にシリコン素材を採用したとされる。脱進機とは、エネルギーを一定量ずつ解き放つ機構である。シリコンは比重が小さく弾性に富み、温度変化にも安定する素材である。シリコン製のガンギ車は摩擦が小さく、注油を要さず、磁気の影響も受けにくい。1969年の原設計を現代の素材で更新した一点といえる。
香箱(ぜんまいを収める容器)から得られるパワーリザーブは50時間。高振動はエネルギー消費が大きいが、そのなかで実用的な持続時間を確保している。石数は31石、部品点数は278個、直径は30mm(13 1/4 リーニュ)である。精度の裏づけは、認定よりも高振動そのものの安定性に置かれている。
文字盤レイアウトと仕上げ
カウンターは3時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、9時位置にスモールセコンドを配する3-6-9構成をとる。日付窓は4時半位置に置かれる。いずれもエルプリメロの伝統的な配置を継承するレイアウトである。
HUB4700を特徴づけるのは、機械全体を骨格化(スケルトン化)した点である。地板やブリッジを大胆に肉抜きし、機構をケース表裏の双方から見せる。中央ローターはウブロのHモチーフで開口加工され、ブランド固有の意匠となる。ブルースチールのネジやルビーの受け石が、肉抜きされた地板の上で視覚的な要点をなす。仕上げの表情も、ゼニスの量産エルプリメロとは異なるウブロ独自のものへと与え直されている。