設計思想
トノー型へ展開したビッグ・バン
ビッグ・バンは2005年に登場し、素材を組み合わせる「フュージョン」の思想と、ベゼルのH型ビスに代表される機械的な意匠でHublotを再起させた一本である。その丸型ケースをトノー(樽)型へ置き換えたのが、2014年登場のスピリット・オブ・ビッグ・バンだった。H型ビス、フュージョンの素材使い、スケルトン化したダイヤルといった語彙は丸型から引き継ぎ、変わったのはケースの幾何学と、縦に伸びることで生まれる手首の収まりと存在感である。
暖色と寒色の対比
601.OX.7180.LRは、その45mmモデルにおいてキングゴールドを地とし、ブルーを差し色とした一本である。キングゴールドの深い赤と、ケース側面・ダイヤルのフランジ・ストラップに配されたブルーが対比し、貴金属のモデルでありながら、華やかさよりも色彩の構成を前面に出す。落ち着いた装いの基幹仕様(601.OX.0183.LR)に対し、本機は色の操作で性格を変えている。スケルトン化したダイヤルは、ムーブメントそのものを意匠の一部として見せるフュージョンの考えを、色彩の文脈で組み直す舞台でもある。
内部のHUB4700は、同じLVMH傘下のZenithが擁するエル・プリメロを土台とする自動巻クロノグラフである。毎時36,000振動(5Hz)の高振動で、コラムホイール制御を採る。Hublotが自社開発のムーブメントを多く持つなかで、本機があえてエル・プリメロ系を積む点に、ブランドをまたいだ技術の融合が表れている。
兄弟への広がり
ブルーの差し色は本機固有ではない。チタンのブルー(601.NX.7170.LR)、セラミックのブルー(601.CI.7170.LR)という同系の兄弟Refが、素材違いとして並走する。601.OX.7180.LRはそのなかで唯一キングゴールドをまとう個体であり、同じ色彩計画を最も高価な素材で表現した位置にある。
意匠分析
ケースは、Hublot独自の18Kレッドゴールド合金「キングゴールド」で成形される。プラチナを加えることで、通常の5Nレッドゴールドより深く安定した赤みを得た素材である。トノー型ケースは複数の素材を積層した構造を採り、ゴールドの層の間にブルーのコンポジットレジンをセンターバンドとして挟む。これによりケース側面とラグに青が走り、暖色のゴールドと寒色のブルーが対比する。ケースは横45mm、縦およそ51mmと縦長で、丸型のビッグ・バンとは異なる手首の占有感を生む。ベゼルは6本のH型チタンビスで固定され、これはビッグ・バン以来のHublotの意匠的署名である。リューズとクロノグラフのプッシャーもキングゴールドで、ブルーのインサートを差す。仕上げはサテン、ポリッシュ、マイクロブラストを面ごとに切り分ける。
ダイヤルはサファイアクリスタル製のスケルトンで、内部のHUB4700を露出させる。外周のフランジはブルーで、白の分秒目盛と対をなす。アプライドのインデックスとソード型の針にはルミノバが充填され、スケルトン地での視認性を確保する。中央のクロノグラフ秒針は、Hublotの「H」ロゴをカウンターウェイトに据える。3時位置の30分積算計はブルーの縁取りを持つ。裏蓋もサファイアで、オープンワークされたローターを通じて機構が見える。ストラップはラバーの上にブルーのアリゲーターを重ねた構造で、バックルはキングゴールドとブラックコートのチタンによるデプロイヤント式である。
系譜と歴史
スピリット・オブ・ビッグ・バンは2014年に登場した。2005年発表のビッグ・バンを基点に、丸型ケースをトノー(樽)型へ置き換えたシリーズである。登場時の45mmは、チタンとキングゴールドを中心に展開した。601.OX.7180.LRは、その45mmモデルのうち、キングゴールドにブルーを差し色としたバリエーションにあたる。基幹のキングゴールド仕様(601.OX.0183.LR)に対し、ケースのセンターバンド、ダイヤルのフランジ、ストラップにブルーを配して差別化した一本で、限定生産ではない。搭載するムーブメントは、シリーズを通じてHUB4700で一貫する。チタンブルー(601.NX.7170.LR)、セラミックブルー(601.CI.7170.LR)という同系の兄弟Refも存在する。その後シリーズの主軸は42mmへ移り、本機の45mmキングゴールド・ブルーは現行のHublot公式カタログでは確認できず、現行ラインからは退いたとみられる。