HUB4428
2009年のキングパワー世代を支えた、ETA 7753を基盤とするウブロのモディファイ・クロノグラフ
| Maker | Hublot |
|---|---|
| Reference | HUB4428 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 28,800 bph (4 Hz) |
| Jewels | 25 石 |
| Power reserve | 42 h |
| Movement ⌀ | 30 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Small Seconds |
| Date | Date |
| Chronograph | Chronograph |
系譜と歴史
1. ビッグバンと「フュージョン」の量産戦略
2004年、ジャン-クロード・ビバーがウブロの経営を握り、翌2005年に発表されたビッグバンは、ゴムと貴金属を融合する「フュージョン」の思想を太い造形へ翻訳し、市場を大きく動かした。販売量が急速に拡大するなかで、ウブロが量産クロノグラフの心臓に選んだのが、ETA(ヴァルジュー)7753系である。堅牢で部品供給が安定し、整備網も広いこの基盤に独自の仕上げを施したのが、初代の量産クロノグラフHUB4100であった。HUB4428も、この7753を母体とする一群に属する。
2. キングパワー世代という文脈
2009年、ウブロはビッグバンの上位概念としてキングパワーを投入する。48mm級へ拡大したケース、より重厚な素材構成、そしてスケルトン化された多層文字盤が、この世代の語法であった。HUB4428は、こうしたキングパワー世代の文脈、とりわけ機械を露出させる開放的な設計のなかで用いられたキャリバーとされる。基盤は7753でありながら、ローターの肉抜きや受けの装飾によって、機械そのものを意匠の一部として見せる方向へ寄せられている。なお同時期には、番号の近いHUB4248(スプリットセコンド・フードロワイヤント系)も存在し、両者は資料上しばしば混同される。
3. 「自社製」をめぐる論争と転換点
ビッグバン以降、ウブロの価格設定と汎用ベースのムーブメントとの間には、しばしば緊張があった。供給キャリバーに独自の装飾を施す手法は当時の業界で広く見られたものだが、ウブロの注目度の高さゆえ議論の的にもなった。これに対するウブロの答えが、2010年バーゼルワールドで披露された自社製クロノグラフ、ユニコ(HUB1240)である。コラムホイールとダブルクラッチを文字盤側に配し、フライバックと72時間のパワーリザーブを備えたこの機械は、ブランドの「機械的独立」を象徴した。HUB4428を含む7753系は、このユニコへの移行期を支えた世代であり、ウブロが内製化へ舵を切る前夜の量産クロノグラフ層として、その歴史的な位置を占めている。
技術解説
基盤としてのETA 7753
HUB4428の母体であるETA 7753は、ヴァルジュー7750系から派生した自動巻クロノグラフである。7750が1970年代に確立した堅牢な設計を継ぎつつ、2002年に追加された7753は、クロノグラフ30分積算計を3時位置へ移し、3時・6時・9時の三つ目(トリコンパックス)配置を採る点に特徴がある。スモールセコンドは9時、12時間積算計は6時に置かれ、3時・6時・9時で対称をなす視認性の高い盤面を構成する。日付は10時位置のプッシャーで補正する方式で、リューズ補正の7750とは外見・操作の両面で区別される。日送りは半瞬間式で、深夜にかけて段階的に切り替わる。脱進機(エネルギーを一定間隔で解放する調速機構)はレバー式であり、調速にはコラムホイールではなくカム(操作板)を用いる。カム式は構造が頑健で整備性に優れ、量産クロノグラフの基盤として長く支持されてきた方式である。
振動数と調速
テンプ(往復運動でリズムを刻む輪)は28,800vph (4Hz)で振動する。1秒あたり8振動という刻みは、秒針の運針を滑らかにし、外乱に対する安定性を高める。香箱(ゼンマイを収める部屋)からの動力で、約42時間のパワーリザーブを確保する。自動巻はローターが一方向にのみ巻き上げを行う方式を採り、ポウル(爪)を介して効率的にゼンマイを巻き上げる。テンプの耐衝撃にはインカブロック系の緩衝機構が備わり、調整は緩急針を介して行われる。石数は基盤の7753では27石とされるが、ウブロのモディファイ版はカタログ上25石と記載される例が多く、改修ムーブメントの諸元表記にしばしば見られる差異として留意したい。
ウブロによる改修と仕上げ
HUB4428におけるウブロの介入は、機構の根幹よりも、見せ方と仕上げに重心がある。最も象徴的なのは、肉抜きされた専用ローターである。これにより、サファイアケースバックやキングパワー世代のスケルトン文字盤を通して、動く機械の表情が引き出される。受けや地板にはコートドジュネーブ(筋目状の装飾)やペルラージュ(円状の研磨)に類する加飾が施され、汎用基盤を「フュージョン」の美学へ統合している。総部品点数は250点を超えるとされ、量産機ながら視覚的な密度は高い。一方で基盤がETA系であることは、部品供給や整備の容易さという実利にも直結する。コラムホイールやフライバックといった機構は後年のユニコが担うことになるが、HUB4428はそれ以前の、堅実な量産クロノグラフの設計思想を体現するキャリバーである。