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CALIBER · Hamilton

H-50 ND

手巻 Handwound Analog

ETA 2801-2を基盤に、毎時21,600振動 (3Hz) と80時間駆動を両立させた、ハミルトン専用の手巻きキャリバー

振動数
21,600 vph · 3 Hz
パワーリザーブ
80 時間
石数
17 石
ムーブメント径
25.6 mm
NO IMAGE
movement · H-50 ND
01 — OVERVIEW

概要

H-50は、スイスのETA社がハミルトン専用に供給する手巻き機械式キャリバーである。汎用機ETA 2801-2の設計を基盤としながら、香箱まわりの再設計と毎時21,600振動 (3Hz) への減速によって、80時間のパワーリザーブを獲得した。石数は17石、直径25.6mm、厚さ3.35mmと薄型に収まる。2018年のカーキ フィールド メカニカル50mmで初登場し、翌2019年には38mmモデルへ本格展開された。現在はカーキ フィールド メカニカルやマーフ、カーキ アビエーション パイロット パイオニアなど、ハミルトンの手巻き機の中核を担う。日付の有無で仕様が分かれ、本機はND(日付なし)版を指す。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerHamilton
ReferenceH-50 ND
TypeHandwound(手巻)
DisplayAnalog
Frequency21,600 vph (3 Hz)
Jewels17 石
Power reserve80 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. ETA 2801-2という基盤

H-50の出自を語るには、まずその土台となったETA 2801-2に触れねばならない。2801-2は1980年代初頭に登場した手巻き機械式ムーブメントで、時・分・スモールセコンドではなく中央秒針を備えた三針仕様を持つ。毎時28,800振動 (4Hz)、17石、直径25.6mm、厚さ3.35mmという薄型の設計は、ラコやマイスタージンガーなど多くのブランドに採用された業界標準の一つである。ハミルトン自身も、初期のカーキ フィールド メカニカルにこの2801-2をそのまま搭載し、42時間のパワーリザーブで供給していた。

2. 80時間への転換

転機は、スワッチ グループ全体で進んだロングパワーリザーブ化の流れにある。自動巻ではETAの2824-2系を再設計したC07系(パワーマティック80)が80時間化を果たし、その手巻き版に相当するのがH-50である。ETA社内呼称はC07.701とされる。H-50は、香箱の再設計と振動数の引き下げという二つの手立てを束ね、42時間から80時間へとパワーリザーブをほぼ倍増させた。それぞれの機構的な作用は仕様の項に譲るが、いずれも個別の思いつきではない。スワッチ グループが自動巻のC07系で確立した方策を、手巻きの世界へ応用した一手であり、グループ全体のロングパワーリザーブ戦略の延長線上に位置づくものである。

3. 専用キャリバーとしての展開

H-50が初めて世に出たのは、2018年の大型モデル、カーキ フィールド メカニカル50mmとされる。翌2019年には主力の38mmへ採用が広がり、価格を大きく上げずに刷新が果たされた。手巻き機をこの規模で安定供給するブランドは少なく、その点でH-50の存在意義は大きい。後年にはチタン系のニヴァクロン製ヒゲゼンマイを採る個体も現れ、耐磁性が高められた。自動巻のH-10(C07.611)と兄弟関係にあり、現代的な「週末を越える」駆動時間を、手の届く価格帯にまで広げた一群として位置づけられる。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

H-50は11.5型(直径25.6mm)、厚さ3.35mm、17石の手巻き機械式キャリバーである。ローターを持たない手巻き専用構造ゆえに薄型に収まり、本機(ND)は日付を持たない三針仕様となる。リューズの手巻きでゼンマイを巻き上げ、その解放エネルギーが輪列を介して針へ伝わる。満巻からおよそ3日強を駆動するため、巻き上げの頻度は自動巻に比べて緩やかである。

機構上の核心は、ゼンマイを収める香箱にある。80時間という駆動時間は、香箱の巻芯を細く設計し、より長いゼンマイを巻き込めるようにした帰結である。ゼンマイが長いほど蓄積エネルギーは増し、ほどけ切るまでの時間も延びる。ただし長尺化はトルク特性の管理を難しくする側面もあり、香箱まわりの再設計はその両立を狙ったものである。

速度を司るのが脱進機とテンプの系である。脱進機(蓄えたエネルギーを一定間隔で解き放つ機構)はスイスレバー式を踏襲する。毎時21,600振動 (3Hz) とは、テンプが1秒間に6回の歩進を刻む速さを指す。21,600を3,600秒で割れば毎秒6回となり、これが秒針の運針の細かさを決める。基盤のETA 2801-2が刻んだ4Hzから減速した狙いは、単位時間あたりの消費エネルギーの抑制にある。一般に高振動ほど姿勢差に強い理論的傾向があり、減速はその利点を一部手放す選択でもある。H-50はこれを、ETA工場でのレーザー調整によって精度へ作り込む。この調整方式ゆえ、本機は使用者や時計師による日常的な再調整を前提としない設計思想を持つ。

テンプの周期を司るのがヒゲゼンマイ(渦巻き状の極細バネ)である。標準仕様では一般的な合金が用いられるが、一部の搭載モデルではチタンを基とするニヴァクロン製が採られる。ニヴァクロンは磁気の影響を受けにくく、温度変化に対する安定性も高い素材として知られる。さらに軟鉄製の耐磁インナーを機構上に重ねる個体も伝わり、ヒゲ素材と二重に耐磁性を支える構成となる。

なお本機がND(日付なし)版である意味は、文字盤側だけの違いに留まらない。日付車とその送り機構を省くことで、ムーブメントと文字盤の双方が簡素に保たれ、巻上げ位置のみのリューズ操作という一貫した使い心地が生まれる。

仕上げは装飾を競うものではなく、堅牢性と量産性を旨とする。コートドジュネーブのような華やかな装飾は施されず、無垢のスチール裏蓋の内に実用本位の構成が収まる。クロノメーター認定は標準では伴わないが、確立されたETA系の設計を土台とするため、スワッチ グループの保守網のなかで部品供給と整備性が確保されている点も、実務上の確かな長所である。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

This caliber appears in 1 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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