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CALIBER · Hamilton

H-30

自動巻 Automatic Analog デイデイト

ETAの2836-2系を再設計したPowermatic 80を母体に、80時間駆動とデイデイトを備える、ハミルトンの実用自動巻キャリバー

振動数
21,600 vph · 3 Hz
パワーリザーブ
80 時間
石数
25 石
ムーブメント径
25.6 mm
Cal. H-30
movement · H-30 図: ムーブメント — WatchBase
01 — OVERVIEW

概要

Cal. H-30は、スイス・ビールに本拠を置くハミルトンが、スウォッチグループのETA製ベースムーブメントPowermatic 80(C07.621)を母体に展開する自動巻キャリバーである。毎時21,600振動(3Hz)で駆動し、25石、約80時間のパワーリザーブを備える。デイデイト表示を持ち、現行世代ではチタンベースの耐磁ヒゲゼンマイNivachronを採用する。カーキ アビエーション パイロット デイデイトやパンユーロ デイデイト、カーキ フィールド デイデイトなどに搭載され、ハミルトンの実用自動巻ラインの中核を担う一基である。

02 — SPECIFICATIONS

仕様

MakerHamilton
ReferenceH-30
TypeAutomatic(自動巻)
DisplayAnalog
Frequency21,600 vph (3 Hz)
Jewels25 石
Power reserve80 h
Movement ⌀25.6 mm
HandsHours, Minutes, Seconds
DateDate, Day
03 — EDITORIAL

系譜と歴史

Genealogy & history

1. 母体となったPowermatic 80

Cal. H-30の出自を語るには、母体であるETAのPowermatic 80に遡る必要がある。Powermatic 80は、半世紀以上にわたり業界の標準機として用いられてきたETA 2824-2系を再設計した自動巻ムーブメントで、2012年のバーゼルワールドで発表された。曜日と日付を備える2836-2系を基盤とするのがC07.621であり、これがH-30の直接の母体にあたる。最大の特徴は、約80時間へ拡大されたパワーリザーブである。香箱とゼンマイの設計を見直し、毎時21,600振動(3Hz)へ振動数を抑えた構成によって、従来の2824-2が備えた約38時間から大幅な延長を果たした。

2. ハミルトンのHシリーズという文脈

ハミルトンは1892年、米国ペンシルベニア州ランカスターで創業した。鉄道時計や軍用時計の供給で知られた同社は、1969年に米国での製造を終える。その後スウォッチグループの一員となり、現在はスイス・ビールに拠点を置く。H-30が属する「Hシリーズ」は、グループ内のETA製ベースを母体とし、パワーリザーブの延長やローターの装飾を施してハミルトン名で展開するキャリバー群である。2011年のクロノグラフH-21・H-31に始まり、Powermatic 80世代では三針のH-10、デイデイトのH-30へと広がった。一から設計した完全自社製ではなく、市場で広く流通する汎用機でもない。グループ内に留め置かれたベースを土台とする中間的な性格こそ、Hシリーズの実像である。

3. ファミリーの中のデイデイト機

H-30は、Powermatic 80を母体とするハミルトン自動巻群の中で、デイデイトを担う一機である。日付のみの三針機H-10を兄弟機とし、クロノグラフはValjoux系を母体とするH-21・H-31・H-41が受け持つ。手巻のH-50や、これに動力表示を加えたH-23も、同じ80時間世代に連なる。Nivachronヒゲゼンマイは2018年にスウォッチグループが発表した素材であり、H-30の初期世代には搭載されず、現行世代で採り入れられた点には留意したい。搭載モデルは、視認性を高めた大型数字のカーキ アビエーション パイロット デイデイトや、1970年代の意匠を継ぐパンユーロ デイデイトなどに及ぶ。

4. 業界基盤としての性格

かつてETAの2824-2は、グループ外のブランドにも広く供給される業界の共通基盤であった。供給の絞り込みを背景に、セリタ(Sellita)のSW200といった代替機が育つ構図が生まれた。Powermatic 80はこの流れの先にあり、スウォッチグループ内のブランドへ用途を限る設計思想を採る。ミドーやセルチナにも同系統が搭載される事実は、グループ内で基盤を共有する現在の構図を映す。H-30を読み解く鍵は、こうした産業構造の中に置いて捉えることにある。

04 — MECHANISM

技術解説

Technical breakdown

H-30の機構を読み解く中心は、約80時間というパワーリザーブの成り立ちにある。この長時間駆動は、ETAが特許を取得した香箱まわりの再設計に負うところが大きい。ゼンマイの長さと香箱の効率を最適化し、限られた容積から長い駆動時間を引き出す構成である。毎時21,600振動(3Hz)という振動数の抑制も、単位時間あたりの消費エネルギーを下げる方向に働く。ただし、振動数の低下がリザーブ延長に占める寄与については、専門家の間でも見解が分かれる。香箱とゼンマイの設計を主因とし、振動数はこれを補助する、という理解が穏当であろう。なお80時間という数値は最小保証ではなく、満巻からの典型的な持続時間として示される。

動力を蓄える役割は、ボールベアリングで支持された自動巻ローターが担う。両方向の回転を巻き上げへ変換し、単一の香箱へ確実に動力を送り込む構造である。曜日と日付は早送り修正に対応し、長いリザーブと相まって日常の運用負担を軽くする。

振動数を4Hzから3Hzへ下げた選択は、秒針の運針の滑らかさにわずかな差として現れる。調速を担うヒゲゼンマイには、現行世代でチタンベースの合金Nivachronが採られている。Nivachronは2018年にスウォッチグループがオーデマ ピゲと共同開発した耐磁素材で、磁界の影響を従来比でおよそ10〜20分の1に抑えるとされる。シリコンではなく金属合金である点が特徴で、Powermatic 80系をめぐって語られがちなシリコンや合成樹脂部品の採用説は、C07.621には当てはまらない。脱進機は、エネルギーを断続的に伝える伝統的なスイスレバー式を踏襲する。

調速の方式には、量産時の精度の安定を狙い、工場での設定を重視した構成が採られている。手作業で緩急針を動かす従来の調整とは、異なる思想に基づくものである。個体差を抑え、量産規模で均質な精度を保つ狙いに沿う選択といえる。耐磁の要であるNivachronは、温度変化への安定性にも寄与するとされ、日差の管理においては、素材の安定とCOSCの許容範囲が精度の裏づけとなる。デイデイトの表示は配置に幅があり、曜日と日付を3時位置に並べる構成のほか、日付を6時・曜日を12時へ振り分ける構成、X-Windでは9時位置にまとめる構成も存在する。

直径は25.6mm(11.5リーニュ)、石数は25石で、ローターにはハミルトンの刻印が施される。COSCクロノメーターの認定を受けた個体も存在する。仕上げは搭載モデルによって異なり、コントラストを生かしたスネイル仕上げやペルラージュを施すものから、パイロット系のように簡素な面構成とするものまで幅がある。

05 — CARRIERS

このキャリバーを搭載する 2 本のリファレンス

This caliber appears in 2 references
06 — SOURCES

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

  1. 01 専門メディア The Military Watch That Forged a Living Collection 専門メディア · Gnomon Watches · 2026.08.15 閲覧 Gnomon Watches · 2026.08.15
  2. 02 専門メディア Hamilton H-Series Automatic Movement 専門メディア · WatchCrunch · 2026.08.15 閲覧 WatchCrunch · 2026.08.15