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CALIBER · GRAND SEIKO

9R66

スプリングドライブ Spring Drive Analog

2006年登場、24時針を独立調整できるグランドセイコー初のGMT付スプリングドライブ自動巻

9R66
movement · 9R66
図: ムーブメント — WatchBase
OVERVIEW · 概要

Cal. 9R66 は、2006年にグランドセイコーが発表した、GMT機構付きの自動巻スプリングドライブである。基幹ムーブメント9R65をベースに、独立調整可能な24時針を第4の針として追加し、デュアルタイム表示を実現した。水晶振動子(32,768Hz)と機械式の主ぜんまいを統合したトライシンクロ・レギュレーターによって、月差±15秒・日差±1秒の高精度を担保する。30石、約72時間のパワーリザーブ。SBGE001を皮切りに、スポーツコレクションやエボリューション9コレクションのGMTモデル群に搭載される、現行ラインの主力GMTキャリバーである。

SPECIFICATIONS · 仕様
MakerGrand Seiko
Reference9R66
TypeSpring Drive
DisplayAnalog
Jewels30 石
Power reserve72 h
HandsHours, Minutes, Seconds, Additional 24 Hour Hand (adjustable)
DateDate
AdditionalPower Reserve Indicator
EDITORIAL · 編纂

系譜と歴史

Genealogy & history

1. スプリングドライブ構想と9R系の確立

1977年、諏訪精工舎(現セイコーエプソン)の若き技術者・赤羽好和は、機械式時計の主ぜんまいを動力源としながら、水晶振動子による電子制御で精度を確保する新型ムーブメントを構想した。脱進機を持たず針を滑らかに進めるという発想は、当時の業界常識から大きく外れていた。1982年に最初の試作機が完成するものの、実用化に必要な省電力IC技術の成熟には長い年月を要した。赤羽は1998年に52歳で他界するが、彼の構想は遺された開発チームに引き継がれ、翌1999年、初の市販スプリングドライブとなる手巻きキャリバー7R68が結実した。グランドセイコーへの搭載は2004年、自動巻と約72時間パワーリザーブを備えた Cal. 9R65 から始まる。脱進機に代わる新たな調速機構「トライシンクロ・レギュレーター」を中核とし、機械式・電気・電磁の三種類のエネルギーを統合的に制御する独自設計である。

2. 9R66の登場と設計思想

Cal. 9R66 は2006年、9R65の発表からわずか2年後に投入された、グランドセイコーで最初のスプリングドライブ式GMTムーブメントである。第4の針として24時針を加え、時針のみを独立して調整できる「フライヤー・タイプ」のGMT機構を備える。海外渡航時にはリューズ操作で時針のみを1時間単位で前後にジャンプさせ、分針・秒針・歩度を一切乱すことなく到着地時刻に合わせられる。地域時差の調整に時針が日付変更線を跨ぐと、4時位置の日付窓も自動的に切り替わる「カレンダー連動時差修正機能」を備える点も特徴で、設計思想は航空旅行の実用に貫かれている。基本構造は9R65を踏襲するが、GMT機構の追加により部品配置は再構築されている。

3. 9R系GMT派生と精度向上

9R66の投入後、グランドセイコーはGMT機構を内包する派生キャリバーを段階的に展開していった。2007年発表の Cal. 9R86 は9R66をベースに、コラムホイール式の縦クラッチ・クロノグラフを追加した上位機構で、約72時間のパワーリザーブを維持しつつ24時針も搭載する複雑機構となった。さらに精度を引き上げた Cal. 9R16 は、スポーツコレクションの上位機種に投入され、月差±10秒という、9R66より一段厳しい規格を実現している。Cal. 9R02 は手巻き専用の約8日巻きハイエンドキャリバーとして別系統で展開され、9R系は機構の幅と用途の幅を着実に広げてきた。

4. 業界における位置

スプリングドライブは、機械式と水晶式という対立的に語られてきた二つの方式を融合させた独自方式として、業界に明確な選択肢を提示した。スイスを中心とする伝統的な機械式GMTがテンプとヒゲゼンマイによる調速機構の精度向上を追求してきたのに対し、9R66は水晶振動子の参照信号を電磁ブレーキで機械系へ反映するという、まったく異なる設計思想を採る。両者を優劣で語ることはできないが、ティック音を伴わず連続的に流れるスイープ運針と、月差±15秒という精度水準は、スプリングドライブにしか実現し得ない時計体験である。

MECHANISM · 機構と仕様

技術解説

Technical breakdown

トライシンクロ・レギュレーター

Cal. 9R66 の精度を支える中核は、グランドセイコー固有の調速機構「トライシンクロ・レギュレーター」である。一般的な機械式時計が用いる脱進機(アンクル+ガンギ車)とテンプ・ヒゲゼンマイを完全に排し、機械・電気・電磁という三種類のエネルギーを並列的に制御する。動力は主ぜんまいから輪列を介して「グライドホイール」と呼ばれる回転子へ伝わる。グライドホイールはステーター(コイル巻きの固定子)と相対回転することで微弱な電力を発電し、IC回路と水晶振動子を駆動する。振動数32,768Hzの水晶振動子が基準信号を発し、IC回路はその信号とグライドホイールの実回転を比較して、過回転時には電磁ブレーキを作動させる。結果としてグライドホイールは常に毎秒8回転に保たれ、その回転は輪列を介して針へと伝達される。脱進機の往復運動を介さないため、秒針はティック音を伴わず連続的に流れるスイープ運針となる。

数値仕様と精度の根拠

振動数を比較すると、機械式時計の代表的な28,800vph (4Hz) に対し、Cal. 9R66 の参照信号は32,768Hzで桁が異なる。これは水晶式時計と同一の規格であり、月差±15秒・日差±1秒という公称精度の物理的根拠となっている。同時に動力源はあくまで機械式の主ぜんまいであり、グライドホイールに加わる電磁ブレーキは「制動」のみに作用するため、主ぜんまいの解放エネルギーの大半は針の駆動へ使われる。これがパワーリザーブ約72時間(3日間)の実現に寄与している。

主ぜんまいと巻き上げ機構

主ぜんまいには高弾性合金「スプロン510」を採用し、ばね定数の安定性と耐衝撃性を確保している。香箱内に巻き取られたぜんまいは、長時間にわたって安定したトルクを輪列に供給する。自動巻機構には、セイコーが1959年に開発した独自の双方向巻き上げ機構「マジックレバー」を採用する。回転ローターのわずかな振れでも、レバー先端のフックが効率的に巻き上げ角車を駆動するため、軽い装着者の動きでも巻き上げ効率を確保できる。総石数は30石で、輪列・自動巻機構・GMT駆動系などの摩擦低減に配される。

GMT機構とカレンダー連動

GMT機能は、4本目の針となる24時針を独立した駆動系で動かす設計である。リューズの中段位置で時針のみを1時間単位で前後にジャンプさせる「フライヤー・タイプ」を採り、24時針をホームタイム(出発地時刻)に固定したまま、時針だけを到着地時刻に合わせられる。さらに、時針を進めて日付変更線を跨ぐ際には、4時位置の日付窓も連動して切り替わる「カレンダー連動時差修正機能」を備え、海外渡航時の操作を最小限の手数で完結できる。9時位置には、機械式キャリバーには珍しい円弧型のパワーリザーブインジケーターを配し、残量を視認できる。

仕上げと観察性

主要部品にはグランドセイコーの仕上げ基準が適用され、地板にはストライプ模様、角穴車や小鉄車にはサーキュラーグレインが施される。ローターは派生モデルごとに意匠が異なり、スケルトン構造にGSライオン・エンブレムを配したもの、無垢のサテン仕上げを採るものなどのバリエーションが存在する。シースルーバックを採用する一部モデルでは、回転するグライドホイールとそれを取り囲むコイル構造を直接観察でき、機械式とも水晶式とも異なる視覚体験を提供する。

04 — CARRIERS · 搭載モデル一覧

このキャリバーを搭載する 1 本のリファレンス

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