系譜と歴史
1. 1983年に始まる系譜
ブランパンのコンプリートカレンダーは、1983年に復活した同社が最初に送り出した複雑機構である。SJXは、ジャン-クロード・ビバーがブランドを立て直す計画の一環として、1980年代に打ち出した「六つの傑作」の一つだったと書く。曜日・日付・月とムーンフェイズを一枚の文字盤にまとめたこの複雑時計は、他社にもある機構ながら、ブランパンの代名詞となった。Cal. 6654は、その伝統を現代の自動巻として担うムーブメントである。
土台となるのは、フレデリック・ピゲの薄型自動巻、Cal. 1150と日付付きの1151である。SJXは2017年、1150と1151がすでに30年近い設計であるとしつつ、6654はそこから何世代も手を加えられた機械だと説明している。とりわけ2010年にフレデリック・ピゲがブランパンに統合されてから、すべてのピゲ系の機械が大きく改良された。6654は、2つの香箱による72時間のパワーリザーブ、フリースプラングのテンプ、シリコン製のヒゲゼンマイという、ブランパンの上位の機械に標準の仕様を備える。
2. アンダーラグ・コレクターという回答
コンプリートカレンダーは、31日に満たない月の翌月初に手で補正する必要がある。従来はケース側面に埋め込んだ補正ボタンを、細い棒で押す方式が一般的であった。ブランパンはこれを、ラグの裏に設けた小さなタブに置き換えた。ケースの側面の線が途切れず、なにより楊枝や専用の棒を使わずに指先で補正できる。SJXは2025年の記事で、この特許のアンダーラグ・コレクターを、設定を容易にし、ケースの輪郭をすっきりさせる革新的な工夫と評している。
あわせて、深夜の日付切り替えの前後に補正しても機構を傷めない安全装置を備える。SJXによれば、この時間帯には補正そのものができないようになっている。Monochromeも、日付が切り替わる深夜に操作しても繊細な機構が壊れないと説明している。
3. 派生と現行世代
Cal. 6654には、搭載シリーズに応じた仕様がある。ヴィルレ系では6654.4、フィフティ ファゾムス バチスカーフ系では6654.Pと呼ばれ、機能は同じで装飾が異なる。2019年のバチスカーフ・カンティエーム・コンプレ・フェイズ・ドゥ・リュヌに載る6654.Pについて、Monochromeは工業的な印象の仕上げと書いている。2025年のヴィルレ・カンティエーム・コンプレの意匠変更では、機構は変えずに、ローターを透かし彫りの金無垢に改めた。SJXは、何年も前の機械を変えずに使えること自体が、設計の土台の確かさを示すと述べている。