03 — EDITORIAL
系譜と歴史
Genealogy & history
1. フィフティ ファゾムスの再生とともに
Cal. 1315は、2007年に発表されたブランパンの自社製自動巻きキャリバーである。同年に登場した45mmのダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス オートマティック」の心臓部として生まれた。
1953年に誕生したフィフティ ファゾムスは、2003年に社長兼CEOとなったマルク・A・アイエックのもとで再び表舞台に戻された。Europa Starによれば、その4年後の2007年、21世紀に向けて専用に開発された自動巻を積む45mmのモデルとして、フィフティ ファゾムスは本格的に復活した。同誌は、このとき1315を積んだモデルが新しい世代のフィフティ ファゾムスの始まりになったと書いている。SJXは2024年、45mmのモデル(Ref.5015)を、2007年から続くカタログの中でも最も息の長いモデルの一つと呼んでいる。
このキャリバーの土台となったのが、2006年10月に発表された手巻きの13R0である。直列に連結した3つの香箱(ぜんまいを収める部品)と、チタン製のフリースプラングのテンプを備え、8日間のパワーリザーブを実現していた。2007年の発表資料は、1315が初めからスポーツウォッチに載せることを前提に構想されたと説明している。
2. 三香箱がもたらす長いパワーリザーブ
Cal. 1315は、13R0の設計を自動巻きへと展開したキャリバーである。最大の特徴は、3つの香箱を直列に連結した動力系にある。現在の公式の説明では、これにより120時間(5日間)のパワーリザーブを確保する。なお2007年の発表資料は、パワーリザーブを約6日としており、当初の公表値と現在の値には差がある。
13R0がチタン製のテンプを採用したのに対し、1315はより重いグリュシデュール(ベリリウム銅合金)製のテンプを選んだ。堅牢性を重んじた選択で、テンプが変わったため、3本のぜんまいもこの機械に合わせて調整し直されている。
3. シリコンへの移行と派生
現行の1315はシリコン製のヒゲゼンマイを備える。Monochromeは、シリコンのヒゲゼンマイが潤滑を不要にし、耐磁性も加えると説明している。多くの現行モデルはサファイアの裏蓋を持ち、2024年に加わった42mmのフィフティ ファゾムス オートマティック(Ref.5010)では、45mmのモデルでは見えなかった1315を裏蓋越しに眺められるようになった。派生としては、2023年のフィフティ ファゾムス テック ゴンベッサに載る13P8が知られる。3香箱で120時間の自動巻で、1315の変種である。
04 — MECHANISM
技術解説
Technical breakdown
動力系:直列3香箱
Cal. 1315の機構を特徴づけるのは、直列に連結された3つの香箱である。香箱とは主ぜんまいを収める円筒部品で、通常の自動巻きは1つを備える。1315は3本のぜんまいを直列につなぎ、120時間(5日間)の駆動を可能にした。
香箱を直列に連結する方式は、トルクの平準化に寄与するとされる。Europa Starは、直列の3つの香箱が十分で信頼できる5日間のパワーリザーブを生むと説明している。ぜんまいがほどけきる前の安定した領域を長く使うことで、駆動の終わりまで精度を保ちやすい。
調速系:グリュシデュールのフリースプラングテンプ
調速を担うのは、グリュシデュール製のテンプである。グリュシデュールはベリリウム銅を主とする合金で、温度変化や衝撃に強い。1315はこのテンプを、緩急針も白鳥の首形の微調整装置も持たないフリースプラング方式とし、テンプのリムに配したネジで調整する。
2007年の発表資料によれば、調整用のネジは金製で、頭が四角く作られている。時計師が加えた修正を目で確かめやすくするための工夫である。テンプの慣性モーメントを変えることで歩度を整える方式で、緩急針を持つ機械に比べて衝撃で歩度がずれにくい。
振動数は28,800vph (4Hz)である。テンプが1秒間に8回往復する速さで、外乱への復元力と精度のバランスに優れる。
ヒゲゼンマイと耐磁
テンプを共振させるヒゲゼンマイは、現行仕様ではシリコン製である。シリコンは低密度で軽く、磁気の影響をほとんど受けない。温度変化にも強く、潤滑を必要としない。Monochromeは、この素材の採用で潤滑が不要になり、耐磁性も加わったと説明している。
自動巻き機構と仕上げ
巻き上げは中央ローターで行う。現行仕様のローターは18金のレッドゴールド製で、NAC処理と呼ぶ灰色の被膜を施し、1953年の初代フィフティ ファゾムスの重錘に想を得た形をとる。2023年のテック ゴンベッサの13P8では、ローターの中央にゴンベッサ・エクスペディションの紋章を置いた。
直径30.60mm、厚さ5.65mmと、ムーブメントは比較的大柄である。総石数は35石、部品は227点で、時・分・秒と日付を表示する。秒針停止機構を備え、時刻を秒まで合わせられる。2007年の発表資料によれば、日付は前後どちらの方向にも早送りできる。Monochromeは、仕上げが一見簡素に見えるのは、ジュネーブ縞のような伝統的な装飾をあえて使わないブランドの選択だと説明している。