1315
2007年、直列3香箱で5日間のパワーリザーブを実現した、ブランパン フィフティ ファゾムスの基幹自動巻
Cal. 1315は、ブランパンが2007年に発表した自社製の自動巻きキャリバーである。振動数28,800vph (4Hz)、35石、パワーリザーブは120時間(5日間)に及ぶ。3つの香箱を直列に連結した動力系を核とし、緩急針を持たないグリュシデュール製のフリースプラングテンプで調速する。現行仕様はシリコン製ヒゲゼンマイを採用し、耐磁性を高めている。2007年に刷新されたフィフティ ファゾムス オートマティックの心臓部として登場し、バティスカーフをはじめ同コレクションの主力を支える基幹ムーブメントである。
| Maker | Blancpain |
|---|---|
| Reference | 1315 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Jewels | 35 石 |
| Power reserve | 120 h |
| Movement ⌀ | 30.6 mm |
| Hands | Hours, Minutes, Seconds |
| Date | Date |
系譜と歴史
1. フィフティ ファゾムスの再生とともに
Cal. 1315は、2007年に発表されたブランパンの自社製自動巻きキャリバーである。同年に刷新されたダイバーズウォッチ「フィフティ ファゾムス オートマティック」(Ref. 5015)の心臓部として登場した。
1953年に誕生したフィフティ ファゾムスは、クォーツ危機を経ていったん主力カタログから姿を消していた。2007年の常設復活は、ブランパンにとって象徴的な節目であった。CEOマルク・A・アイエックは、新世代のフィフティ ファゾムスに技術的妥協を許さなかったとされる。ケースからムーブメントまで、各部品が新規に設計されたと伝わる。
このキャリバーの土台となったのが、2006年に発表された手巻きの13R0である。13R0は、アイエックがCEOとして主導した最初の新型ムーブメントとされる。直列連結された3つの香箱(ぜんまいを収める部品)と、慣性調整式のテンプ(往復運動で時を刻む輪)を備え、8日間のパワーリザーブを実現していた。
2. 三香箱がもたらす5日間
Cal. 1315は、13R0の設計思想を自動巻きへと展開したキャリバーである。最大の特徴は、3つの香箱を直列に連結した動力系にある。これにより、フル巻き上げ時に120時間(5日間)のパワーリザーブを確保する。
13R0がチタン製のテンプを採用したのに対し、1315はより重いグリュシデュール(ベリリウム銅合金)製のテンプを選んだ。スポーツウォッチに求められる堅牢性を優先した選択である。テンプの慣性モーメントを金製の微調整ネジで整えるフリースプラング機構を採用し、緩急針を持たない。3本のぜんまいも、このテンプに合わせて再調整されたとされる。
3. シリコンへの移行と派生
初期の1315は、金属製のヒゲゼンマイ(テンプを共振させる渦巻きばね)を備え、ケースバックの下に軟鉄カバーを置いて磁気から守っていた。その後、ブランパンはヒゲゼンマイをシリコン製へと切り替えていく。2013年に登場したバティスカーフのムーブメントは、シリコン製ヒゲゼンマイを採用した世代とされる。
シリコン化により耐磁性が高まり、多くのモデルで軟鉄カバーが不要となった。現在では、サファイアケースバックから自社製ムーブメントを鑑賞できる仕様が一般的である。派生としては、デイデイト表示を加えた1315DD、ダイブタイム機構とヘリウムガス排出弁を備えるゴンベッサ・テック搭載の13P8などが知られる。
4. ロングパワーリザーブの潮流の中で
2000年代、機械式時計の世界では、長時間のパワーリザーブを競う動きが広がっていた。複数の香箱を連結する手法は、その有力な解のひとつである。ブランパンは13R0と1315によって、この領域で早くから存在感を示した。
1315は、フィフティ ファゾムスのスポーツ路線を支えながら、ヴィルレなどの複雑機構のベースにも応用できる汎用性を備える。1本の基幹キャリバーがダイバーズから複雑時計まで広がる設計は、現代ブランパンの製造哲学を映している。
技術解説
動力系:直列3香箱
Cal. 1315の機構を特徴づけるのは、直列に連結された3つの香箱である。香箱とは主ぜんまいを収める円筒部品で、通常の自動巻きは1つを備える。1315は3本のぜんまいを直列につなぎ、放出するトルクを安定させながら120時間(5日間)の駆動を可能にした。
香箱を並列ではなく直列に連結する方式は、トルクの平準化に寄与するとされる。ぜんまいがほどけきる前の安定した領域を長く使うことで、駆動末期まで精度を保ちやすい。
調速系:グリュシデュールのフリースプラングテンプ
調速を担うのは、グリュシデュール製のテンプである。グリュシデュールはベリリウム銅を主とする合金で、温度変化や衝撃に強い。1315はこのテンプを、緩急針を持たないフリースプラング方式で支える。
精度の微調整は、テンプのリムに配した金製のネジで行う。四角い頭を持つ微調整ネジを回し、テンプの慣性モーメントを変えることで歩度を整える。金は視認性が高く、調整作業の精度を支える素材とされる。
振動数は28,800vph (4Hz)である。テンプが1秒間に8回往復する速さで、外乱への復元力と精度のバランスに優れる。リフト角は51度とされる。
ヒゲゼンマイと耐磁
テンプを共振させるヒゲゼンマイは、世代によって素材が異なる。初期の1315は金属製ヒゲゼンマイを備え、ムーブメントを軟鉄製のインナーケースで覆って磁気の影響を抑えた。
その後採用されたシリコン製ヒゲゼンマイは、低密度で軽く、磁気の影響をほとんど受けない。温度変化にも強く、姿勢差の低減にも寄与する。シリコン化により軟鉄カバーを省けるため、多くの現行モデルはサファイアケースバックを備える。
自動巻き機構と仕上げ
巻き上げは単方向式で、重量のあるローターが効率よくぜんまいを巻く。現行仕様のローターは18K(レッド)ゴールド製で、白金系合金によるNAC処理を施す。ローターの軸はセラミック製の受けで支えられ、注油を要しない構造とされる。
直径30.60mm(13½リーニュ)、厚さ5.65mmと、ムーブメントは比較的大柄である。受け石は通常より径が大きく、安定した支持を狙う。総石数は35石。ブリッジにはスネイル状の研磨が施され、面取りは磨き上げられる。スポーツ用途ながら、相応に手の込んだ仕上げを備える。
なお、フィフティ ファゾムスの多くはクロノメーター認定(COSC)を受けていない。一方で、認定基準に迫る歩度を示す個体も報告されている。