設計思想
45mmオートマティック世代の到達点
フィフティ ファゾムスは、2003年にマルク・A・アイェック体制のもとで再興が始まった。その流れの中で、2007年に45mmのオートマティックが登場する。自社開発のCal.1315を初めて積んだこのモデルは、現代フィフティ ファゾムスの基幹世代となった。
2013年にはより日常的なバチスカフが派生し、道具としての領域はそちらが担うようになる。結果として45mmのオートマティックは、素材や仕上げで表情を変える余地を得た。5015-3603C-63Bは、その余地の中から生まれた一本である。
セラミックダイヤルという選択
2019年、ブランパンはこの45mmにサテン仕上げの18Kレッドゴールドケースを与えた。レッドゴールド自体は2016年の5015A-3630-63Bに先例があるが、今回はダイヤルにブルーセラミックを採用した。セラミックダイヤルは、フィフティ ファゾムス コレクションとして初の試みである。
セラミックはバチスカフのベゼルで実績があった素材だが、文字盤への応用は容易ではない。硬度の高さは加工の難しさと表裏一体であり、それでも選ばれたのは深い発色が得られるためとされる。中央のサンバーストとマットなチャプターリングの対比が、コバルトを思わせる青を生む。
道具から装いへ
このRefは、ダイバーズウォッチとしての性能を捨ててはいない。防水は300mを保ち、一方向回転ベゼルもサファイアの風防も従来通りである。一方でレッドゴールドとブルーの取り合わせは、潜水よりも装うことを意識させる。暖色と寒色を同居させた配色が、同世代の鋼やチタンの個体とは異なる性格を与えている。
45mmという寸法は、2000年代に進んだ大型化の嗜好を映したものだった。その後コレクションは2023年の70周年を境に42.3mm世代へと舵を切る。5015-3603C-63Bは、45mm世代の終盤に置かれた装飾性の強い到達点と言える。
意匠分析
5015-3603C-63Bの設計は、ブルーセラミックのダイヤルを中心に組み立てられている。セラミックは鋼のおよそ6倍とされる硬度を持ち、傷や経年変化に強い。一方で焼成と研磨に手間がかかる素材でもある。それでも採用されたのは、塗装では出しにくい色の深みのためである。中央はサンバースト、外周のチャプターリングはマットに仕上げられ、光の受け方で表情が変わる。
ケースは45mm径、厚さ15.5mmの18Kレッドゴールド製で、全面をサテンブラッシュで仕上げている。ポリッシュを抑えた表面は、レッドゴールドの華やかさをいくらか落ち着かせる。ラグが短いため、数値ほどには大きく見えない作りである。インデックスと針はレッドゴールド製で、夜光を充填し、青い地に対して視認性を確保する。
ベゼルは一方向回転式で、リングはレッドゴールド。その上にサファイアクリスタルのインサートが載り、ダイビングスケールに夜光が施される。日付はフィフティ ファゾムスらしく4時と5時の間に置かれ、対称性を大きく崩さない。ストラップはブルーのカーフレザーで、レッドゴールド製のフォールディングクラスプが組み合わされる。
裏側はサファイアのシースルーバックで、Cal.1315が見える。ローターは18Kレッドゴールド製で、NACコートが施され、肉抜きされた形状を持つ。この造形は1953年の初代ローターに着想を得たものとされ、装飾と歴史的参照を兼ねている。レッドゴールドとブルーという暖寒の対比は、文字盤から裏面まで一貫している。
系譜と歴史
5015-3603C-63Bは、2019年にブランパンが発表したフィフティ ファゾムス オートマティックのレッドゴールドモデルである。同年5月にプレス向けの資料が出され、その後正規取扱店を通じて流通した。属するのは2007年に始まった45mm径のオートマティック世代であり、本機はその系譜の中の一個体にあたる。
レッドゴールドケースをサテン仕上げとする方向性には、2016年の5015A-3630-63Bという先例がある。本機はそこにブルーセラミックのダイヤルを加えた点で異なり、コレクションとして初のセラミックダイヤルを備えた個体となった。生産期間中に大きな仕様変更が公表された記録は確認できない。ブルーのカーフレザーストラップとレッドゴールド製フォールディングクラスプの組み合わせは、発表時から一貫している。
45mm世代は、2023年のコレクション70周年を境に転機を迎える。同年に42.3mmケースの70周年記念Act 1が限定で発表され、2024年には42.3mmのオートマティック(Ref. 5010系)が定番に加わった。主軸の寸法が45mmから42.3mmへ移ったことで、5015-3603C-63Bは45mm世代の後期に位置づく一本となった。本稿執筆時点で、後継世代は42.3mm径へと移行している。