AP 5134
2015年、Cal. 2120の系譜を継ぎ、41mm時代のロイヤルオークに収められた自動巻パーペチュアルカレンダー
Cal. 5134は、2015年にAudemars Piguetが発表した自社製自動巻パーペチュアルカレンダーである。1978年に世界最薄自動巻QPとして登場したCal. 2120/2800を、41mm径ケース用に大型化・近代化した世代に当たる。直径29.00mm、厚み4.31mm、振動数19,800vph (2.75Hz)、38石、パワーリザーブ40時間。曜日、日付、月、閏年表示に加え、年週表示(週番号)を備える。Royal Oak Perpetual Calendar Ref. 26574を皮切りに、Code 11.59やセラミック仕様等、APの主要QPラインで2024年まで採用された。
| Maker | Audemars Piguet |
|---|---|
| Reference | AP 5134 |
| Type | Automatic |
| Display | Analog |
| Frequency | 20,160 bph (2.8 Hz) |
| Jewels | 38 石 |
| Power reserve | 40 h |
| Movement ⌀ | 29 mm |
| Hands | Hours, Minutes |
| Date | Date, Day, Leap Year, Month, Week Indicator |
| Astronomical | Moonphase |
系譜と歴史
1. Cal. 2120系譜の最終形
Cal. 5134の系譜を辿ると、1967年発表のCal. 2120に行き着く。Cal. 2120は、Audemars Piguet、Jaeger-LeCoultre、Vacheron Constantin、Patek Philippeの4社による共同プロジェクトで、JLCが主体となって開発した。厚みわずか2.45mm。中央ローター(フルローター)方式の自動巻ムーブメントとして当時の世界最薄であり、JLC側ではCal. 920と呼称された。1972年にロイヤルオークRef. 5402で歴史的役割を担ったのは、その日付付き派生Cal. 2121である。
2. パーペチュアルカレンダー化(1978年)
1978年、APはCal. 2120にDubois-Déprazが供給するパーペチュアルカレンダーモジュールを組み合わせ、Cal. 2120/2800を発表した。厚み3.95mm。当時の世界最薄自動巻パーペチュアルカレンダーとされる。クォーツショックの只中にあった時代背景の中、Georges Golay(当時のAP社長)は完成度の高さに即決し、初年度1,000本の量産を決断したと伝わる。本機はRef. 5548(36mm径のドレスウォッチ)で初登場し、1984年のRef. 5554で初めてロイヤルオークのケースに収められた。
3. 41mm時代への適応(2015年)
2015年、APは2120/2800モジュールを大幅に再設計し、Cal. 5134として発表する。最大の変更は径の拡大である。28mm径から29mm径へ拡張し、新たに年週表示(週番号)を加えた。厚みは4.31mmへ若干増加したが、ケース径41mmのRoyal Oak Perpetual Calendar Ref. 26574に搭載しても、全体厚9.5mmという、パーペチュアルカレンダーとしては極めて薄型の仕上がりを保った。以降、2017年のセラミック仕様Ref. 26579CE、2019年のCode 11.59 パーペチュアルカレンダーRef. 26394など、APの主要ラインで採用される。スケルトン化したCal. 5135も派生し、Royal Oak Perpetual Calendar Openworked「150周年」記念モデル等に搭載された。
4. 終焉と後継
Cal. 5134は、2024年のRoyal Oak Perpetual Calendar「John Mayer」Limited Edition (Ref. 26574BC)を最後の限定モデルとし、その役目を新世代キャリバーに譲った。後継Cal. 7138(クローズドダイヤル用)およびCal. 7139(オープンワーク用)は厚み4.1mm、振動数28,800vph (4Hz)、パワーリザーブ55時間と、現代的スペックへ刷新されている。
Cal. 2120系の終焉は、APにとって一つの時代の節目である。2022年に時刻表示用のCal. 2121がCal. 7121に置き換えられ、2025年にはパーペチュアル用2120派生もその役目を終えた。Cal. 5134は、JLC Cal. 920に始まる半世紀超の物語の、Audemars Piguet側における最終章を担うキャリバーであった。
技術解説
基本構造とディメンション
Cal. 5134は、直径29.00mm、厚み4.31mmの自動巻機械式キャリバーである。構成部品数374、石数38、振動数19,800vph (2.75Hz)、パワーリザーブ約40時間。現代の自社製キャリバーが28,800vph (4Hz)を標準とする中で、ロービートを維持する設計は、薄型を最優先したCal. 2120来の系譜を継承する。
機能はパーペチュアルカレンダー(曜日、日付、月、閏年指示、ムーンフェイズ)に、Cal. 2120/2800系から追加された年週表示(週番号)を加える。文字盤上の配置は、3時位置に週カウンター、6時位置にムーンフェイズ、9時位置に曜日と閏年、12時位置に月表示というレイアウトを取る。
中央ローターと懸架香箱
Cal. 5134の薄さの根拠は、ベースとなるCal. 2120から継承される二つの構造的工夫である。
一つは、メインプレートに4個のルビーローラーで支持される周辺リング構造の22Kゴールド製モノブロック・ローターである。中央に重錘を備えながら、軸受けを輪列の真上に配さず外周で支持することで、全体高さを抑えつつフルローター径と十分な慣性質量を確保する自動巻機構で、1965年取得のスイス特許(CH14338/65)に基づく。ローター外周には、ロイヤルオークの文字盤を想起させるタペストリー(Tapisserie)装飾が施され、ローター中央には「Audemars Piguet」の刻印が入る。
もう一つは、輪列の上に吊り下げる形で配置される懸架香箱(suspended barrel)である。香箱受け板を独立させる従来構造に比して機構の厚みを大幅に圧縮する設計で、Cal. 2120時代に確立されたこの構造はCal. 5134にもそのまま継承されている。
パーペチュアルカレンダー機構
パーペチュアルカレンダーは独立モジュール方式で、ベースキャリバー(Cal. 2120系)の地板上にDubois-Dépraz由来のモジュールを重ねる構造を取る。歴代Cal. 2120/2800系から継承される設計だが、5134では41mm径ケースに合わせてモジュールが大径化され、週番号表示用のホイールが追加されている。
カレンダー機構の中核は、月の長短と閏年を機械的に記憶する48カ月(4年)周期のプログラムホイールである。これにより2100年2月末まで自動補正される。グレゴリオ暦の例外規則により2100年は閏年とならないため、その時点で手動補正が必要となる。
仕上げ
裏蓋のサファイアクリスタル越しに視認できる仕上げは、Audemars Piguetの伝統に則った手作業による装飾である。地板はサーキュラーペルラージュ、各ブリッジには面取り(アンギャラージュ)に加えサーキュラー・コートドジュネーブが施される。輪列車はサテン仕上げ、香箱蓋にもサーキュラー・コートドジュネーブが入る。22Kゴールド製ローターのアウターセグメントには、前述のタペストリー装飾が刻まれる。
精度認定としてCOSCクロノメーター認証は受けていないが、これはAudemars Piguet全般の方針であり、自社の品質基準に基づく出荷検査により精度が担保される。