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TUDOR · SERIES

Pelagos

ペラゴス

ヴィンテージを引用せず、現代のダイビング工学からゼロベースで設計された、チューダーのチタン製プロフェッショナルダイバー。

39 mm – 42 mm
01 — 概要 / SUMMARY

ペラゴス (Pelagos) は、チューダーが2012年にバーゼルワールドで発表したプロフェッショナルダイバーズウォッチである。同年に登場したブラックベイがヴィンテージサブマリーナーへの郷愁を語るのに対し、ペラゴスは現代の潜水道具としての機能性を起点に設計された対照的な存在として位置づけられる。グレード2チタンによる軽量ケース、サテン仕上げのマットな表情、500m防水とヘリウムエスケープバルブを備える本流のペラゴス42を軸に、近年では薄型で軍用仕様のペラゴスFXD、39mm径のペラゴス39、1000m防水のペラゴス・ウルトラへと派生し、現代ツールウォッチの一つの基準を形成している。

02 — STORY · 物語

Pelagos(ペラゴス)、これまでの軌跡

The story of this series
01

マリン・ナショナルから受け継いだもの

ペラゴスを理解するには、チューダーがフランス海軍 (Marine Nationale) に潜水時計を供給していた時代まで遡る必要がある。1956年、トゥーロンに置かれた海中研究班 (G.E.R.S.) がチューダー・サブマリーナーRef. 7922および7923を試験的に受領、その評価を経て、チューダーは1961年に正式な「フランス海軍御用達」となった。以後30年以上にわたり、ブランドはRef. 7928、7016、9401などを海軍に納入し続ける。

特筆すべきは1969年のRef. 7016である。暗い水中で時針と分針を瞬時に区別したいという海軍ダイバーの要望に応えて、菱形のユニークな時針と角形インデックスが導入されたと伝わる。後に「スノーフレーク」と呼ばれるこの意匠は、装飾ではなく可視性のための機能設計だった。1974年からはケースバックに「M.N.」と発行年を組み合わせた刻印が施され、現代コレクターの聖杯となっていく。

しかし1999年、チューダーはサブマリーナーの生産を終了する。海軍納入も終わり、ブランドのダイバーズウォッチの系譜はいったん途絶える。

02

2012年、二つの解答

復活の機は2012年バーゼルワールドだった。チューダーはこの年、二本のダイバーズウォッチを並行して発表する。一本はブラックベイ、1950年代のオイスター・プリンス・サブマリーナーの意匠を継ぐヴィンテージ志向の一本。もう一本がペラゴス、Ref. 25500TNだった。

両者は同じETAキャリバー2824ベースのムーブメントとスノーフレーク針を共有していたが、設計の方向性は対照的であった。ブラックベイが過去を引用するのに対し、ペラゴスは現代のダイバーが必要とするものをゼロから構築する。直径42mmのケースはグレード2チタン製で、ロレックス/チューダー両ブランドを通じて初のチタンケース採用となった。サテン仕上げ、500m防水、9時位置のヘリウムエスケープバルブ、そしてチューダーが特許を取得したスプリング式オートアジャスト・クラスプ——潜水スーツの圧縮に応じてブレスレットが微細に伸縮する機構を備えていた。

03

2015年、自社製ムーブメントの到来

発表から3年後の2015年、Ref. 25600TN(ブラック)と25600TB(ブルー)が発表され、ETAキャリバーに代わって自社製マニュファクチュールキャリバーMT5612が搭載される。

MT5612は毎時28,800振動 (4Hz)、約70時間のパワーリザーブ、可変慣性テンプとシリコン製ヒゲゼンマイを備え、COSCクロノメーター認定を受ける。同時に登場したマットなブルー文字盤は、1970年代にマリン・ナショナルへ納入された青文字盤のスノーフレーク・サブマリーナーへの遠い参照でもある。チューダーは価格を大きく上げることなく「自社ムーブメント搭載のフルチタン500m防水ダイバー」というポジションを確立した。

04

2016年、LHDが呼び戻した過去

2016年、ペラゴスは思いがけない方向に展開する。Ref. 25610TNL、通称「LHD」(Left Hand Drive) の登場である。リューズを9時位置に移し、左利きあるいは右腕装着者向けのバリエーションとして設計された。

LHDが参照しているのは、1970年代から1980年代初頭にかけてマリン・ナショナルに納入された、左利き仕様のRef. 9401である。ベージュ色の夜光、赤い「Pelagos」の文字、偶数日を赤・奇数日を黒で表示する「ルーレット」デイトホイール——これは1969年のRef. 7021に見られた仕様への意図的な参照だった。ケースバックには個体番号が刻まれ、限定生産ではないものの、シリアル管理された一本一本として供給される。

05

2021年、FXD — 道具としての完全形

ペラゴスが「ツールウォッチ」という言葉の本来の意味を取り戻したのは、2021年のペラゴスFXDの発表によってである。フランス海軍特殊部隊コマンドー・ユベール (Commando Hubert) の戦闘ダイバーと共同開発された、文字通りの軍用支給品仕様であった。

FXD(FiXeDの略)の最大の特徴は、ケースと一体で削り出された固定ラグである。防水性能は500mから200mへと下げられ、厚みも14.2mmから12.75mmへと薄くなった。飽和潜水を行わない戦闘ダイバーにとっては不要なスペックを削ぎ落とした結果である。日付とヘリウムエスケープバルブも廃止、120ノッチ・双方向回転ベゼルは水中ナビゲーションのために逆方向(60から0)の目盛を持つ。ケースバックには「M.N.21」の刻印——1970年代のM.N.シリーズと同じ命名規則であり、生産年ごとに数字が変わる。これは引用ではなく、伝統の継続である。

06

拡張と深化 — 2022年以降

FXDの成功以降、ペラゴスは複数の系統へと広がっていく。2022年のペラゴス39 (Ref. M25407N) は、ケース径を39mm、防水を200mに調整し、日付を省いた「都市と海をつなぐ」ペラゴスとして提案された。サンレイ仕上げの文字盤、モノブロックのセラミック複合インデックス、新型「T-fit」クラスプなど、現代的なディテールが盛り込まれている。

2023年にはFXD派生のアリンギ・レッドブル・レーシング・エディションが発表され、チューダー初のカーボンコンポジット・ケースとペラゴス初のクロノグラフ仕様が登場した。2024年にはマリン・ナショナル海軍航空隊と協働したペラゴスFXD GMT「ズールータイム」が加わる。

そして2025年、Watches and Wonders Geneveで発表されたペラゴス・ウルトラ (Ref. M2543C1A7NU) は、防水を1000mに倍増させ、ペラゴス系で初のMETAS認定マスター・クロノメーターとなった。発表から13年、ペラゴスはチューダーの技術的到達点を示すコレクションへ成長している。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

ペラゴスの設計言語は、装飾を加えるのではなく、引き算によって形を成している。同時期に発表されたブラックベイが意図的にヴィンテージのコードを引用するのに対し、ペラゴスは過去の機能要素のみを抽出し、現代の素材と工学で再構築するという姿勢を取る。

中心にあるのは「視認性」と「潜水時の信頼性」である。1969年のRef. 7016が確立したスノーフレーク針と角形インデックスは、装飾ではなく潜水時に時針と分針を瞬時に判別するための機能設計であった。ペラゴスはこれを継承するが、面で発光する大型の角形インデックスや、フランジ部に沈み込むレイアウトとして再解釈することにより、視認性をさらに押し上げている。マットなセラミックベゼルにも夜光が施され、文字盤とベゼルが連続した発光面として機能する。

素材選定にも一貫した思想がある。グレード2チタンはステンレススチールより軽く耐食性も高い、ダイバーが長時間装着するための合理的選択である。仕上げはサテン/マットで統一され、光を散乱させる艶のなさが、深海という低光量環境に最適化されている。同時代のブランパン「フィフティ・ファゾムス」が伝統的なフォルムを保ち、オメガ「シーマスター・プラネット・オーシャン」が比較的洗練された都市的な意匠を持つなかで、ペラゴスはあえて装飾を排した工業的な顔立ちを選択している。

ケース側面の角張ったリューズガード、面取りされたラグエッジ、文字盤フランジに沈み込むインデックス、ヘリウムエスケープバルブを示す「GAS ESCAPE VALVE」の側面刻印——これらはすべて、装飾ではなく機能の可視化として配置されている。特許取得済みのオートアジャスト・クラスプ、固定ラグ(FXD)、文字盤色のミニマリズム(赤一文字の「Pelagos」をアクセントに残す程度)。70余年にわたるチューダーのダイバーズウォッチの中で、ペラゴスは「装飾を持たないこと」を最も体系的に貫いたシリーズだといえる。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2012-2015
ETA Cal. 2824-2
初代Pelagos用、38時間PR、ETAベース。
2015-現在
Cal. MT5612
Pelagos主力、70時間PR、Date搭載自社機。
2021-現在
Cal. MT5602
FXD用、無Date、シリコンひげぜんまい。
2022-現在
Cal. MT5400
Pelagos 39用、無Date、39mmケース最適化。
2024-現在
Cal. MT5612-U
Pelagos Ultra用、METAS認定機。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2012-2015

初代Pelagos誕生

25500TN
titaniumケース、Cal.2824-2、500m防水、HE valve初代。
2015-現在

自社製キャリバー化

25600TN 25600TB
Cal.MT5612投入、COSC、70時間PR、blue文字盤も追加。
2018-2022

LHD左巻芯版

25610TNL (LHD)
LHD版投入、巻芯9時、赤Date wheel、Pelagosの新軸として確立。
2021-現在

FXD Marine Nationale

25707B N (FXD)
フランス海軍コラボ、固定bar、HE valveなし、Cal.MT5602派生。
2022-現在

Pelagos 39登場

25407N (Pelagos 39)
39mmコンパクト版、200m防水、Cal.MT5400搭載、サイズ多様化点。
2024-現在

Pelagos Ultra

25803TB (Ultra)
1000m防水のPelagos最上位、Cal.MT5612-U、METAS認定。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 2 モデル

2 references in archive