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TUDOR · SERIES

Black Bay One

ブラックベイ ワン

Tudorが固定ベゼルBlack Bayに与えた、ドレッシースポーツとしての独自の系譜

01 — 概要 / SUMMARY

Black Bay One(ブラックベイ ワン)は、Tudorの主力ラインBlack Bayから派生した、固定ベゼルのドレッシースポーツコレクションである。2016年の固定ベゼル版Black Bay 36を起点とし、2022年から2023年にかけてマニュファクチュールキャリバーへ全面移行、その後現名称に改められた。31mm、36mm、39mm、41mmの4サイズ展開、スチール基本モデルとスチール&ゴールド(S&G)派生、ダイヤモンドセット仕様までを含み、ユニセックスでの着用を前提とする。100m防水、5リンクブレスレット、T-fitラピッドアジャストクラスプを共通装備する。

02 — STORY · 物語

Black Bay One(ブラックベイ ワン)、これまでの軌跡

The story of this series
01

Black Bayという広い水脈

Black Bay Oneを理解するためには、Black Bayという系譜の幅を確認する必要がある。2012年、Tudorはバーガンディベゼルの41mmダイバー、リファレンスM79220Rを発表した。1950年代から60年代にかけてのTudor Submarinerを参照したこのモデルは、回転ベゼル、ノンプロテクションリューズ、丸みのあるケースを備え、ヴィンテージ感覚を現代的に翻訳することに成功した。それから10年あまりの間に、Black Bayは深海仕様のPelagos、軍用色のBlack Bay Pro、小径のBlack Bay 54、クロノグラフ、GMTへと枝分かれしていった。

そのなかで、回転ベゼルを持たない静かな派生が一群として存在し続けてきた。Black Bay Oneは、その系統に新たな名前を与えた現代の到達点である。

02

起点としての固定ベゼルBlack Bay 36

固定ベゼルBlack Bayの原型は、2016年のBlack Bay 36に求められる。バーガンディベゼルを外し、シンプルな円形のスチールベゼルへ置き換えたこのモデルは、ダイバーズの記号を脱いだBlack Bayがどのような顔をするのかを最初に示した試みだった。当初の搭載キャリバーはETA 2824系で、現在のマニュファクチュール時代から見ればまだ過渡期の構成であった。

まもなく32mmと41mmが加わり、ケース径の選択肢が広がる。いずれも当初はETAのムーブメントを積んでいた。サンレイダイヤルと固定ベゼルの組み合わせはTudorのドレッシースポーツという立ち位置を徐々に形作っていく。とはいえ、この時期のラインナップは「Black Bayの派生」という位置づけにとどまり、独立したコレクション名を与えられてはいなかった。

03

2022年、スチール&ゴールドからの再出発

転機は2022年に訪れた。2022年から2023年にかけて、Tudorは固定ベゼル系を全面的にリフレッシュした。32mmは31mmへ置き換えられ、新たに39mmが加わって4サイズ構成となる。同時に、すべてのモデルがマニュファクチュールキャリバーへ移行した。特筆すべきは、小径ケース用に新規開発されたキャリバーMT5201の導入である。これによりTudorは大型のMT56系、中型のMT54系、小型のMT52系という3つのキャリバーファミリーを持つに至った。

S&G版の発表は、固定ベゼルBlack Bayが簡素な基本モデルから、Tudorの中核に位置するドレッシースポーツへと位置づけを改めた瞬間でもある。

04

2023年、本コレクションの実質的なデビュー

翌2023年のWatches and Wondersにおいて、Tudorはスチール版のBlack Bay 31/36/39/41を発表した。リファレンスはM79600、M79640、M79660、M79680の4系列。搭載キャリバーは31mmがMT5201、36mmがMT5400、39mmがMT5602、41mmがMT5601で、いずれもCOSC認定のクロノメーターである。シリコンヒゲゼンマイを備え、パワーリザーブはMT5201のみ約50時間、他は約70時間。

文字盤はブルー、アンスラサイト、ライトシャンパンの3色サンレイサテン仕上げ。31mm、36mm、39mmにはダイヤモンドインデックスやダイヤモンドベゼルのオプションが用意された。ブレスレットは新設計の5リンクで、T-fitラピッドアジャストクラスプを標準装備する。クラスプは工具を使わずに5段階、最大8mmの微調整が可能で、一日のうちに変わる手首の太さにも対応する。

このリリースをもって、固定ベゼルBlack Bayは技術的にも意匠的にも独立した一群として完成した。

05

「Black Bay One」への改名

Tudorはその後、2025年ごろからこのコレクションを「Black Bay One」と呼ぶようになる。公式には当初「Black Bay 31/36/39/41」の名で発表されており、公式が改名の意図を詳しく説明した文書は限定的だが、ブランドコミュニケーションは「ソフィスティケート、ヴァーサタイル、ユニセックス・シック」というキーワードでこのシリーズを位置づけている。

「One」という名称は、Tudorが2015年のチャリティオークション「Only Watch」のために制作した一点もののBlack Bay Oneを想起させる。当該モデルは1950年代のTudor Submariner Ref. 7923に着想を得た手巻きダイバーとされ、本コレクションとは技術的・意匠的に直接の系譜関係を持たない。両者の間に明示的な接続はTudorから語られていないが、「One」というネーミングには、Tudorの過去のアーカイブを参照する姿勢が反映されているとも考えられる。

06

現在のラインナップ

現行のBlack Bay Oneは、31mm、36mm、39mm、41mmの4サイズに、スチール、スチール&ゴールド(S&G)、ダイヤモンドセット仕様を組み合わせた多数のリファレンスで構成される。

すべてのモデルが100m防水、サファイアクリスタル、5リンクスチールブレスレットを共通仕様とし、ケース側面のドーム形状とポリッシュ仕上げのベゼルによってコレクション固有のシルエットを保つ。Black Bayの他のサブファミリー──54、58、GMT、Pro、Chrono、Ceramic──がそれぞれ過去のTudorダイバーズに具体的な参照を持つのに対し、Black Bay Oneだけは、特定の歴史モデルへの直接的な引用を持たない現代のシリーズである。「神話を背負わないBlack Bay」という独立した立ち位置こそが、本コレクションのアイデンティティでもある。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Black Bay Oneの設計言語は、Black Bayという大きな系譜から「ツールウォッチである」という前提を取り除いたところに成立する。回転ベゼルを持たず、200m防水を100mに譲り、ダイバーズとしての装備を一段下げる代わりに、ケースの輪郭そのものを再設計した。それが「カーブを描いた、ソフトな佇まい」と表現される、このシリーズ固有の身体性である。

ケースは研磨された側面がドーム状にふくらみ、ラグの先端へ向かってなだらかに落ちていく。新たに湾曲させたねじ込み式リューズと研磨されたベゼルが、その柔らかなシルエットを強調する。リューズガードを持たないことは、現代のBlack Bay 58やBlack Bay 41が持つ「保護された道具らしさ」とは異なる方向を示している。リューズが露出していることは、潜水現場での実用性ではなく、視覚的な親しみやすさのために選ばれた判断とみられる。

文字盤はサンレイサテン仕上げのアンスラサイト、ライトシャンパン、ブルーの3色を基本とし、光の角度によって表情を変える。ダイヤモンドインデックスやダイヤモンドベゼルといった装飾オプションも31mm・36mm・39mmに用意される。これは2010年代までのBlack Bayが拒んできた領域であり、シリーズの方向転換を最も雄弁に物語る。

針はBlack Bay全体を貫く「スノーフレーク」をそのまま継承する。1969年のTudor軍用ダイバーズに端を発するこの角ばった意匠は、ダイバーズでない本シリーズにおいてもなお採用された。ここに、ブランドが本シリーズを「Black Bayの離反者」ではなく「Black Bayという広い言語の中の一つの方言」と位置づけている意志が読み取れる。

31mm、36mm、39mm、41mmの4サイズ展開は、本シリーズを明確にユニセックスとして設計したことを示す。同一の意匠言語のままケース径だけが変化し、最小サイズには小型ムーブメント用に新規開発されたキャリバーMT5201が搭載される。サイズによる派生ではなく、サイズそのものを選択肢として並列に提示する設計である。同時代の競合、たとえばロレックスのオイスター・パーペチュアルやオメガのアクアテラが踏襲する「サイズ違いの同一モデル」という思想に近いが、Black Bay Oneはそこにスノーフレーク針とノンプロテクションリューズという固有のアイデンティティを足している。

ベゼルは固定式で、ポリッシュ仕上げ。回転機構を持たない判断は、本シリーズが「測る道具」ではなく「身につける時計」であるという宣言に等しい。Black Bayが60年以上のダイバーズ史を背景に持つことを思えば、回転ベゼルを外すという選択は決して軽くはない。それでもブランドがこの判断に踏み切ったところに、Black Bay Oneがファミリーの中で果たす役割がある。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2022-現在
Cal. MT5201
31mm用に新設計、約50時間、COSC。
2022-現在
Cal. MT5400 / MT5602 / MT5601
36/39/41mm用、約70時間、COSC。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2016-2022

固定ベゼルBlack Bayの誕生

Black Bay 36 32 41
2016年の36mmに始まり32mm・41mmへ。当初はETA機。
2022-2023

自社製キャリバーへの移行

Black Bay 31 36 39 41 (S&G・スティール)
31mm・39mmを加えた4サイズ、5連ブレスとT-fit。
2025-現在

Black Bay Oneへの改称

Black Bay One 31 36 39 41
湾曲ケースのユニセックス・シックとして独立。
Sources

出典

本文の執筆にあたって参照した資料。閲覧日は内容を確認した日を示す。

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06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive