本文へ
TUDOR · SERIES

Black Bay GMT

ブラックベイ GMT

ダイバーズの意匠に独立調整GMTを組み込み、2018年にチューダーが提示した旅する道具時計の系譜

41 mm
01 — 概要 / SUMMARY

Black Bay GMT(ブラックベイ ジーエムティー)は、チューダーが2018年に発表したGMT機能搭載モデルである。200m防水ケースとスノーフレーク針というBlack Bay系の意匠を継承しつつ、現地時間の時針を独立調整できる本格仕様のGMT機構を内蔵する。マット仕上げのアルミニウム製二色ベゼルが視覚的特徴である。現在は41mm径の標準モデル、固定ベゼルのBlack Bay Pro、スティール&イエローゴールドのS&G、そして2024年にMaster Chronometer認証を得て登場した39mm径のBlack Bay 58 GMTへと展開している。

02 — STORY · 物語

Black Bay GMT(ブラックベイ GMT)、これまでの軌跡

The story of this series
01

ジェット時代の遺産とチューダーの選択

旅客機の世界が一気に縮んだのは1950年代である。1955年、ロレックスはパンアメリカン航空のパイロットの要請に応じる形でGMTマスター(Ref. 6542)を世に問うた。第二時間帯を24時間針で示すこの機構は、その後旅する人々の腕の上にあり続けた。

姉妹会社であるチューダーは、長くダイバーズウォッチを軸に歴史を刻んできた。1954年のRef. 7922から始まる潜水時計の系譜、フランス海軍(Marine Nationale)との供給関係、1969年のRef. 7016で確立されたスノーフレーク針——これらが現代Black Bayの設計言語の源泉である。だが、GMT機構を備えたチューダーは長く存在しなかった。

2012年、Heritage Black Bayの登場でブランドは新しい局面に入る。続くBlack Bay Fifty-Eight、Black Bay Steelといった派生も成功を収めた。GMTが加わるのは、それから6年後のことになる。

02

2018年、Black Bay GMTの誕生

2018年のバーゼルワールド、奇妙な符合が起きた。同じ会場でロレックスは新型GMTマスターII(Ref. 126710BLRO)を発表していた。1990年代以降スティールのモデルからは姿を消していた、いわゆる「ペプシ」配色の復活である。そして同時に、チューダーは初のGMT搭載Black Bay(Ref. M79830RB)を発表した。

新作のベゼルは赤と青の二色だったが、マットなバーガンディとブルーの組み合わせで、ロレックスの鮮やかな彩度とは明確に区別される。競合ではなく地続きの関係を示す抑制された色調である。41mm径のスティールケース、クラウンガードを持たないリューズ、リベットブレスレット——これらはRef. 7924「ビッグクラウン」以来の意匠語彙だった。

ムーブメントには新開発のManufacture Calibre MT5652が搭載された。チューダー初のGMT機構を内蔵したマニュファクチュールキャリバーであり、毎時28,800振動 (4Hz)、約70時間のパワーリザーブを持つ。COSC認定クロノメーターで、シリコン製ヒゲゼンマイにより高い耐磁性も備える。登場時のスティールブレス仕様で3,900米ドル前後という価格は、ロレックスGMTマスターIIの半額以下にあたり、本作の受容に決定的な意味を持った。

03

ラインの拡張——Pro、S&G、Opaline

2022年のWatches and Wondersで、Black Bay GMTを母体とする新展開が二つ発表される。一つはBlack Bay Pro(Ref. M79470)である。39mm径のスティールケースに、固定された24時間ベゼル。黄色いスノーフレーク型の24時間針が回り、ベゼル目盛りとの組み合わせで第二時間帯を読む仕様だった。ローテーティングベゼルを持たないこの構成は、1971年のロレックス エクスプローラーII(Ref. 1655)を想起させる古典的な造形である。ムーブメントはMT5652を共有する。

もう一つはBlack Bay GMT S&G(Ref. M79833MN)。ステンレススティールとイエローゴールドのコンビケースに、ブラウンとブラックのベゼル。コレクター界隈で「ルートビア」と呼ばれる、ロレックスGMTマスターのコンビモデルに通じる色調である。

翌2023年には、標準のBlack Bay GMTにオパーリンダイヤルの新派生(Ref. M79830RB-0010)が加わった。白とも銀ともつかない繊細な色合いの文字盤に、従来のペプシベゼルが組み合わされる。1950年代に少数だけ存在したと伝わるロレックスGMTマスター(Ref. 6542)の白文字盤「パンナム」を連想させると指摘する向きもある。

04

2024年、Black Bay 58 GMTとMaster Chronometer

2024年のWatches and Wondersで発表されたBlack Bay 58 GMT(Ref. M7939G1A0NRU)は、シリーズの転換点となった。ケース径は39mm、厚さ12.8mm。1958年のRef. 7924の寸法感覚を意識した、より小ぶりなプロポーションのGMTである。

重要なのはムーブメントだった。新開発のManufacture Calibre MT5450-Uは、COSC認定に加えてMETASによるMaster Chronometer認証を受けている。15,000ガウスへの耐磁性、防水性、パワーリザーブを含めた厳格な検査により、日差は0/+5秒の許容範囲に収まる。パワーリザーブは65時間。

文字盤はマットブラックにギルト(金色)の植字インデックスとスノーフレーク針を組み合わせた、ヴィンテージらしい配色。ベゼルはバーガンディとブラックの二色で、これは1980年代のロレックスGMTマスターII(Ref. 16760)で知られる「コーク」配色の系譜である。秒針は従来のスノーフレーク型からロリポップ型に改められ、24時間針との視覚的な役割分担が整理された。

05

現在の到達点

2025年のWatches and Wondersでは、Black Bay Pro(Ref. M79470-0004)にオパーリンダイヤル仕様が追加された。黒の輪郭で縁取られたセラミックインデックスとスノーフレーク針、黄色の24時間針が、白系の文字盤上で強いコントラストを生む。

ブランド創業100周年にあたる2026年のWatches and Wondersでは、Black Bay 58 GMTに5連ブレスレット仕様が追加された。寸法やキャリバーは変わらず、選択肢の拡張に留まる慎ましい更新である。

GMT機構を持たないシリーズとして始まったBlack Bayが、登場から10年に満たない期間で複数のGMT派生を持つに至った。ダイバーズウォッチの意匠を出自に、旅という別の文脈を引き受けた——その判断の積み重ねが、現在のBlack Bay GMTの輪郭を作っている。

03 — DESIGN · 設計思想

意匠を貫く設計言語

What this series guards, and what it lets change

Black Bay GMTの設計を貫いているのは、シリーズが出発点としたダイバーズウォッチの語彙にGMT機構を「加える」のではなく「組み込む」という思想である。

ベゼルはアルミニウム製のマット仕上げを採用する。セラミックが視認性と耐傷性で優れるとされる時代にあえてこの選択をしたのは、ヴィンテージのGMTマスターと地続きの質感を保つためだろう。色合いも鮮やかな原色ではなく、バーガンディ、深いブルー、ブラウン、ブラックといった抑えた色調が選ばれる。ロレックスのGMTマスターIIが100m防水であるのに対し、Black Bay GMTは200m防水を確保している。この数値の差は、シリーズの母体がダイバーズウォッチであることを物語る。

針の構成にも明確な思想がある。1969年のRef. 7016に由来するスノーフレーク針が時針と分針を担い、第二時間帯を示す24時間針には赤あるいは黄色の差し色を与えて視認性の階層を作っている。ベゼル目盛りとの相互参照によって、二地域の時刻を瞬時に把握できる構造である。

クラウンガードを設けないケース形状は、1958年の「ビッグクラウン」Ref. 7924を意識した造形である。ねじ込み式リューズには立体的なチューダーローズが浮き出ている。サイクロップスレンズは持たず、ドーム型サファイアクリスタルがプレキシガラス時代の柔らかな歪みを連想させる。

機構面では、現地時間の時針が独立して時単位で前後に飛ぶ「フライヤー型」GMTを採用する。旅行先で日付線を跨ぐ場合でも、ホームタイムを動かさずに現地時刻だけを調整できる。これはGMTマスターIIと同系の操作論理であり、表面の意匠と内部の動作論理が一致している点が本シリーズの誠実さである。

2024年のBlack Bay 58 GMTでは秒針が従来のスノーフレーク型からロリポップ型へと改められた。これは24時間針との視覚的な役割分担を整理するための判断であり、シリーズが意匠を硬直化させずに更新を続けていることを示す例である。変えるべきものと残すべきものを慎重に切り分ける——この判断の積み重ねが、登場から数年でBlack Bay GMTの「顔」を確立させた要因だろう。

04 — MOVEMENT EVOLUTION

ムーブメントの変遷

Calibers across the decades
2018-現在
Cal. MT5652
MT5602派生のGMT機構、True GMT、70時間PR。
2024-現在
Cal. MT5450-U
BB58 GMT用、METAS Master Chrono機。
05 — REFERENCE EVOLUTION

Ref. 変遷

Reference generations
2018-現在

初代BB GMT誕生

79830RB
2018発表、Pepsiベゼル、Cal.MT5652、true GMT機構搭載。
2019-現在

S&G版追加

79833MN (S&G)
BB GMT S&G、steel & gold、rootbeer配色など派生展開。
2022-現在

Opaline白文字盤

M79830RB-0010 (Opaline)
白文字盤Opalineバリエーション、Pepsiベゼル維持、選択肢拡張。
2024-現在

BB58 GMT派生機

7939 (BB58 GMT)
39mm BB58 GMT登場、METAS Cal.MT5450-U、多様化進行。
06 — ALL REFERENCES

このシリーズの全 1 モデル

1 references in archive