計器としての時計
ジン・ゾーン(Sinn Spezialuhren)は、1961年に元軍用パイロットで盲目飛行教官でもあったヘルムート・ジンがフランクフルトで創業した。狙いは明快であった。広告や流通に費用をかけず、操縦士や計器を必要とする職業人へ、高精度で堅牢な実用時計を直販で届けること。装飾よりも機能、知名度よりも信頼性を選ぶこの姿勢は、後年まで一貫する。
インストゥルメント・クロノグラフは、その思想がもっとも純粋に表れた領域である。航空機のコックピットに収まる搭載計器(ボードウォッチ)の発想を、腕時計の寸法へ移す。文字盤は黒を基調に、白い針とインデックスで高いコントラストを確保する。読み取りやすさが、何よりも優先された。